12月12日

 いつものように市場へ。市場のおっちゃんとマニアックな車談義を軽く交わした後、恵んでもらえる食券で9階の市場食堂でメシを喰らう。毎週食べさせてもらっているから、これこそ食券乱用だろう。

 さすがに市場。社員食堂に相当する場所なのだが、ほかの社員食堂よりは良いものが食べられる。それでも市場の人々は「こんなものしか出ないのか!」といつも怒っている。が、150円のラーメンや得体の知れない野菜いためなどを仕事場で食べている僕にとっては、感動の連続だ。何てったって、刺し身やいくら丼が食べられる。

 期待で胸を躍らせつつ、今日は何があるのくぁ! と9階にたどり着くと、おお、この季節らしく牡蠣フライがあるではないですか。フライに決定。

 タルタルソース付きの牡蠣フライ。普通社員食堂のようなところで揚げ物を食べても、数時間前に揚げてそのまま置いてあったりするので、衣はぐちゃぐちゃ、冷たく、風味もへったくれもない代物で、仕方がないからソースをぐちゃぐちゃにかけて飲み込む、ということになりがちだが、ここのフライは揚げてから20分ぐらいの感じ。衣はまだパリパリで、温かくてうまかった。

 で、何を食べてきたのか、市場のおっちゃんに報告するわけだが、僕がうれしそうに「今日は牡蠣フライでしたヨ!」と言うと、おっちゃん曰く「食堂にあるようなものは、春あたりに冷凍した奴だわさ!」と冷たくあしらわれた。「パン粉付けて、揚げるだけの状態でカッチンカッチン」。がーん。市場特選の牡蠣を使っていると思いきや、やっぱり加工品だったのね。このおっちゃんが市場に入ってくる牡蠣を扱っているのだから、間違いない。

 「今はそんなもんばっかだわ」とおっちゃんは嘆く。「10人いて、そのうち何人が卵付けてパン粉付けて揚げられる? できせんって」

 何が言いたいか、と言えば、ここ数年は魚介類はだんだんと売り上げが減っている、ということだ。加工品などで便利にはなったけれど、自分で手間を掛けて料理する、ということをしなくなった。食はすなわち文化だから、その衰退を憂いているわけだ。おっちゃんの場合は、昔から食材を扱ってきたから、肌で感じるんだろう。

 牡蠣フライからとんでもない方向に話が飛んでしまった。

12月11日

 スピードパス、というものを薦められたので、無料だし、しばらくは値引きがあるので作ってみた。こんなやつ。

 エッソ、モービル、ゼネラルのセルフ給油のガソリンスタンドで使える。セルフ給油は支払いがけっこう手間だ。これまで、給油してからお店の中のレジで精算するタイプと、事前に給油機にお金を入れておいて、給油後おつりを受け取るという2つの方式があった。いつも入れていた家の近くのエッソでは、給油後にお店で精算する方式。これだと、入れてそのままお金を払わず逃げてしまえるな、と思っていた。実際、逃げてしまう人もいるらしい。ガソリン泥棒が多発したからどうかは分からないが、最近、給油機ごと事前にお金を入れるタイプに切り替わっていた。そこで、薦められたのが、スピードパス。

 クレジットカードの番号を登録しておいて、給油前に機械の所定の位置にスピードパスをタッチするだけで給油ができる。支払いは、クレジット会社を通じて。

 クレジットカードの番号が漏れるのでは? と思ったのだが、それはできない仕組みになっているという。たぶん、センターで番号を管理していて、スピードパス自体にはカード情報が入っていないんだろう。落として悪い人が拾ったら、これで入れ放題になってしまうが、そのケースだと保険が下りるのだそうだ。悪用防止のためかしらないが、1回1万以下、1日2回まで使える。

 初めて使ってみた。ガソリンスタンドに入り、給油機に横付け。車を降りて、タイガーのマーク(エッソなので)の位置にこいつをタッチする。ぴかっと光って、しばらく通信してから給油が可能に。油種を選んで、給油し、あとは立ち去るだけ。楽だけれど、何となく後ろめたいのは万引きしているみたいだからか。

 向こう何ヶ月かは、こいつを使って給油するとリッター当たり2円安くなる。すると、ハイオク1リットル103円、ということか。松本で120円で入れていたころが懐かしい。

 日本列島横断が日常の僕にとっては持ち歩く現金を少なくできるのがメリット。が、もっとも使いたいと思われる富山県にはまだ取り扱うスタンドがない…。岐阜県や三重県もまだ少ない。使えるスタンドが増えずに消えたりして。

12月10日

 全容が明らかになるにつれ、ホッとした部分とどきどきする部分とが入り交じって、反省することしきりだ。今日もメールが来て、失われた過去を改めて知るという何とも奇妙な経験をした。これも、周りが阿鼻叫喚の飲み会の中、一人、ウーロン茶を飲んで冷静に居てくれたベーシストのおかげである。

 「○○ちゃんは服を汚されたって怒ってたよ。今度見かけたらぶっとばしてやる!ってさ。ははは(^^)」

……。吐いて服を汚したのではないことは確かなのだが、気になる。

 「○△氏のセクハラみたいに、人に迷惑を掛ける類の酔っ払い方じゃないから。愉快!愉快!の楽しい酔っ払いであったぞよ。 人に害を与えない陽気な酔っ払い君でありました」

 良かったのか、悪かったのか判然としない。

 「帰る寸前に□○ちゃん(雅の注:人妻である)が来たのを覚えてるかな?君は□○ちゃんの足を持って放さなかったんだよ。愉快!愉快!わははははは〜(^▽^)」

 笑ってすむんだろうか。さらに引用。

 「あの焼酎はデンジャラスなのさ。 来日公演の際、ジョンがあの焼酎を飲み過ぎて翌日二日酔いで苦しんだそうだ。その体験からジョンが作ったのがDOCTOR
ROBERTらしい。

 ちなみに、その時ベッドで苦しんでるジョンを横目に、ポールが作った歌がGOOD DAY SUNSHINEらしい。そんな名曲を生み出した伝説の焼酎で二日酔いできるなんてCOOLじゃん!」

 おお、なんだかカッコイイじゃないですか(勘違い)。

12月9日

 ひどく気分が悪く、午前中ベッドから起きあがることができなかった。どんなひどい状態だったのか、思いだそうにも思い出せない。途中までは覚えているが、その後は断片しか残っていない。なぜかパジャマを重ね着して、しかも前後が逆だ。

 うう、とのろのろ起き出して、考える。どうやって帰ってきたのか。タクシーを降りた記憶はあるが、乗った記憶はない。久々にひどい酔い方をしてしまった。

 こんなとき心配になるのが、乱暴狼藉を犯していないかである。女の人とかに抱きついちゃったりしてたら大変じゃないですか。どうも、過去の経験からは、記憶がなくなるほど酔っぱらってもけっこう普通らしい。でも、心配だ。

 こんなときは、自分の失った記憶(いや、記録されなかったのか)を取り戻すため、おそるおそる情報を集める。パソコンを開いてみると、「大丈夫でしたか、無事帰りましたか。心配になって携帯に電話したけれど繋がらなくて」とメールが入っていた。心配してもらっている、ということはたぶん、乱暴狼藉はしていないだろう。一安心か。が、最後の一文。「カメラ大丈夫ですか?」。へ?

 のろのろと玄関にたどり着くと、ブラケットから脱落し、中身の電池をぶちまけたフラッシュを発見した。根本が折れている。直さなければ。

 もう一通メールが届いていた。「やっぱりあの焼酎はヤバいんだよ。たぶん君は2本分ぐらい飲んでるはずだよ」。そんなに飲んだんですか。2時間ぐらいの時間に焼酎1リットル以上飲めば、ちょっと中毒気味でやばいよなあ。文字で書いていると人ごとみたいだけれど、今にも出そうな吐き気を感じながら読んでいるのである。最後の一文。

 「ふふふ…楽しませてもらったよ( ̄ー ̄)」

 そうか、面白かっただけか。たぶん、乱暴狼藉はしていなさそうだ。返信メールを打つとしばらくして返信があった。

 「○○ちゃんの巧妙な『調子こいて飲んでんじゃね〜よ!二日酔いにしたろか大作戦』の罠にはまったね。△△ちゃんも手強いな。彼女にトドメを刺されたって感じだな」

 どうやら、おねえさま方のおもちゃになっていたらしい。がーん。

12月8日

 ライブがあるので一人勝手に興奮し、仕事が手に付かないでボケッとしていた。仕事が手に付かないのは、ほかの理由もあるのだが。

 7時半すぎにアンティーク・ノエルへ。「Give Peace a Chance(平和を我らに)」というポール・マッカートニーの曲の名を冠したイベント。日本が戦争を仕掛けた日にジョンレノンを追悼するとともに、暴走するアメリカに反対するというのが趣旨だ。

 店について驚いた。たくさん来る、とは聞いていたが、すでに超満員。立ち見も出始めているぐらい。いやいや、すごい。超満員なので、写真を撮るにもスペースが不自由。仕方がないからステージと客のテーブルの間に潜り込んだ。

 「Don’t let me Down」「Help!」「Stand by Me」「Helter Skelter」「Let it be」などなど。そして最後に、ジョン・レノンの「Happy
XMAS」。

 War is over if you want it (みなが望めば戦争は終わる)

と、観客とともに大合唱。けっこう、決まったライブだった。自衛隊が派遣されようとしているが、アメリカのエゴ丸出しの戦争に荷担する、という自覚をもっと持たなければならない。つい最近の選挙で首相を選んだのは僕たちなのだから、軍隊を送ることになったのも僕らの責任なのだ。

 そんな深刻な思いはケロリと忘れて、東京の満員電車みたいになってしまった店内からそそくさと抜け出し、飲みに行ったことは伏せておこう。

12月7日

 昨夜は知り合いに会いに行って飲ませてもらって、家に転がり込んで泊まらせてもらった。悩んでいることを相談したが、「やりたいのならやっておくが良い」との答えだった。人生の中の、本当にピンポイントのこの時期だからこそ、できることがある。

 10時すぎまでぐっすり寝させてもらい、何をすることもなく、のんびりすごす。人に家に上がり込んで、よくもまあ、図々しい。

 午後は、東区泉のアンティーク・ノエルというライブカフェで、ビートルズバンドのリハーサルを聞きに行く。僕の出番はないから、ただ聞くだけ。明日、8日にジョン・レノン追悼と反戦のライブが開かれるのだ。やたら人が集まっているらしく、席に座りきれないから立ち見になるんだって。すごい盛況ぶり。

 明日も仕事に身が入りそうにない。いつクビになるんだろ。

12月6日

 夕方に仕事場にいると、なんだか外が騒がしい。何だろう、と思ったら、うよく屋さんが街宣車で騒いでいるらしい。大音響で何かを叫んでいるのだが、何を叫ぼうが音が大きすぎて音が割れ、おまけに周りのビルにこだまするので何を訴えているのか分からない(笑)。

 用事があったので、その街宣活動のさなかに外に出ることに。5時すぎだったが、すでに外は暗い。表に出ると、想像以上の大音響だ。大迷惑。

 やかましいんじゃ、ボケェ!

やかましいんじゃ、ボケェ!

と、叫ぼうが、そんなささやかな叫びは大音響にかき消されてしまう。騒音には騒音で対抗するしかない。ロードスターに乗り込み、エンジンを始動する。のろのろと走ってくる街宣車。おもむろに、車を走らせて、ちゃんと車間距離があることを確認する。信号が青になったころを見計らい、

 ぶおん、ぶおん、ぶおん、ぶおん

ぶおん、ぶおん、ぶおん、ぶおん

と、暴走族まがいのレーシング。2寸管が付いているのがザンネンだ。直管だったらうよく屋さんもびびったんだろうけれど。

 信号が黄色になったら、急発進して逃げたことは言うまでもない。

12月5日

 部屋を片づけていたら、床に散らばった本やゴミの地層の奥から、一冊の本が見つかった。いや、9月号だからつい最近出た本なのだが、行方不明なってから久しぶりに発見されたので、感慨深かっただけなのだ。ああ、こんな本も買ったな、と。

 ある車いじり雑誌の増刊号。プロのメカニックの方がエンジンを元気にするために何が効果があるのかを解説している本だ。何が効いて、何が効かないか、が具体的にばっさりとした口調で書かれている。例えば「インターネット情報の落とし穴」という項目では「誰もが即座に情報を配信できるため根拠がない情報も多い」と、実に正しいことが書いてある。その通り! こんなサイトに書いてある情報など信頼しちゃあ、いけないのだ。

 チューニング業界で真実として流通している情報について「ちょっと待った!」という感じで反論しているところは面白いかもしれない。が、中には「反論のための反論じゃないか」と思ってしまう部分もある。例えば、「チューニングを始める人は『必ずポート研磨が効く』と信じて疑わない。『規則の厳しいノーマルカーレースはポート研磨などできないのだよ』と言いたくなる」と書いてあり、「無駄な作業はやめておきな」と締めくくっているのだが、それはポート研磨の効果云々の話ではなく、レギュレーションだろ!と突っ込みたくなる。が、まあいい。参考になることも書いてあるから。

 が、「アースチューニングこそ燃焼改善に大きく貢献するチューニングアイテム」「トルマリンはかなり効果が得られる」「最近注目すべきは波動処理製品!」とか書いてあると、本に載っていることのすべてが信じられなくなってくる。ま、それらのグッズに何らかの効果がある可能性は否定しないのだが、きちんと根拠を示してもらいたい。自らインターネット上にあふれる情報について正しく批判しているのだから。

 プロで責任持って書いている本であるのなら、「『何でこんなに変わるの?』と驚く製品もある」といった抽象的な表現ではなく、データで示さなくては駄目だと思う。はっきり言って人の体感はまったく当てにならない指標だ。思いこみで、ころころと人の「感じ方」は変わってしまう。「特効薬デス」と医者から勧められて、うどん粉を丸めたものを飲んだって、効果が出るのだから。さらに、費用対効果の検証もまったくない。オイルや燃料添加剤は効くのかもしれないが、トータルでいくらかかるかを検証してみたら、素直にシリンダーヘッドを面研して圧縮比アップした方が安くより高い効果を得られるかもしれない。

 ま、出版にあたってはさまざまな利害関係もあるだろうから、仕方がないところがあるのだろう。それでも、5月にエンジンを組んだときに、油圧が上がらなかった現象について、ばっちり言い当てた部分があった。「セルモーターを長時間、キュルキュルと回してもオイルが吹き出さないというトラブルも結構発生し、アマはパニック状態に陥る。この場合の多くの原因はオイルポンプにある。オイルポンプは分解して組み立てる際は、当然ながらオイルを塗布して組み立てるが、最後のカバーと付ける前とかに呼び水になるように少し多めにオイルを入れておかなくてはいけない。これを怠るとオイルポンプは空回りし、オイルは圧送されなくなるのだ」と実に的確に紹介されていた。エンジンをいじったことがなければ絶対得られない情報がきっちり書いてある半面、おや?っと思うことも書いてある。

 大切なのは、なにが本物なのかを見分ける目なんだろう。

12月4日

 スキャナーとプリンターをパソコンにつないで動くようにした。最近はUSBにつないでしまえば良いだけだから、設定がとっても楽。さっそく、9月に富山で開かれた走行会の写真をがしがしと入力する…、と思ったら、けっこうスキャンに時間がかかる。ま、一回セットすれば12枚まで自動で読み込んでくれるので、楽ではある。

 27枚撮りフィルム8本ぐらい撮ったので枚数が半端じゃない。スキャンしている間、ネットサーフィンでもしていればよいのだが、それも飽きたのでどろどろに汚れた部屋を片づける。スキャナーの導入で、これまであったフラットベッドスキャナ(EPSON
GT-5000WINS)とフィルムスキャナ(CANON FS2700)が余ってしまった。欲しい人がいればあげるのだけれど、こんな古いものだと誰もいらないか。オークションにでも出してみようかしら。

 とにかく、松本から持ってきてそのまま置いてある段ボール箱を何とかしなくてはならない。ぐちゃぐちゃになっていた中身を整理して、多くを捨てる。が、微妙に捨てられない仕事がらみの書類がけっこうあって、大変。こっちに入っていたガラクタをこちらの箱に移し替えただけ、という感じで不毛な作業だ。

 夜に始めてビールを飲みながらやっていたらいつの間にか意識を失い、朝起きても出勤もせず、スキャンと片づけを続けていた。そのうちに、ピンポーンと呼び鈴が鳴って、クロネコさんがやってきた。届けられた品物を見て絶句したのである。

 なんじゃこりゃ!

なんじゃこりゃ!

12月2日

 栄にて仕事をした後、丸善、マナハウスに寄って本をあさりまくる。頭の中がレーシング一色になっているので、関連書籍を探してみたが、これといったものはなかった。仕事をする気もないので、新書などを買い込んで、マナハウス内のカフェでさぼって遅い昼メシのカレーライスを食べながら、本を読み、仕事場に上がる。頭がレーシングなのでインターネットで関連情報をあさる。

 夜に「魚を食べに行こう」と誘われた。新栄にあるお店に向かう。旬のブリを食べてみた。大きめに切られてきて期待が高まったが、歯ごたえもなく、ちょっと残念。カワハギの刺身を頼んだら、肝がたくさん付いてきた。カワハギなんて身自体はそんなに味がしない。一番の食べどころはやはり肝だ。しょう油をつけてそのまま食べても良し、しょう油にといて、いろいろな刺身を絡めて食べても良し。たっぷり食べて堪能した。ぺらぺらにケチ臭く切られてくるフグの刺身をありがたがって食べるぐらいなら、カワハギを食べた方が安いし、楽しめると思うのだが。いや、高いフグを食べたことがないだけかもしれない。