1月13日

 午後に高蔵公園近くの病院で仕事だったので向かう。簡単に仕事を片づけて、大津通り沿いの場所だったので、北に向かって歩き出した。しばらく歩けば、パソコン街、大須がある。

 風が強くてかなり寒かったが、ちょっとペースを上げて歩けばぽかぽかしてくる。しばらく歩くと金山。手羽先が売り物らしい居酒屋「山ちゃん」が何軒もあって閉口する。ここ1年でかなり増えたようだが、そんなに儲かって居るんだろうか。創業者なのだか知らないが、同じ人物のイラストはなかなかうまくできていて、一度見たら忘れないから、まちのあちこちにあると、かえって逆効果だと思うのだが。

 東別院を通り越して、名古屋高速をくぐり、大須へ。パソコンショップに寄って、無線LANのPCカードを購入。3000円弱。安くなったものだ。

1月12日

 朝から鈴鹿サーキットへ。9番ゲートから入場したら、1800円も取られた。入るだけなのに異常に高い。

 知り合いの練習走行だったので、見学に出かけた。フォーミュラEnjoyなのだが、FJ1600やF4、フォーミュラトヨタも一緒に走っていて、メインストレートの壁越しに見ていると、迫力がある。デジカメで走っているところを撮影していたのだが、シャッターを押してからのタイムラグがありすぎて、なかなか難しい。オートフォーカスは殺してマニュアルにしないとまず撮影は不可能だ。ストレートを立ち上がってくる車をファインダーでのぞき、車の動きとともに体を回転させて、勘でシャッターを切って3枚に1枚が成功するぐらい。

 車でサーキット内を移動して、S字や逆バンクあたりにも行く。なにしろ、ここからあと倍以上コースがあるのだから、改めてサーキットの広さを感じる。

1月10日

 新しくWEBページを立ち上げるので、最近は仕事も手に付かず(あ、いつものことか)、もんもんと考え込んでいた。文章だったらいくらでも書けるのだが、デザイン面で苦労する。ずっと公開し続けるものだけあって、少しぐらいは凝ったものにしなければ、という強迫観念があるのだ。何を隠そう、この「ガレージ雅」は、トップページのデザインは始まった当初から変えていない。途中、Freedomを始めたときに一部手直ししたぐらい。あまり、ころころ変えるのが好きじゃない性格なのだ。移り変わっていく興奮より、いつまでも変わらない安心感が好きなのかも知れない。

 で、デザインなのだが、センスがあるわけじゃないから、本当に苦労する。うんうんうなって手直し、手直し。それでも、やっぱり基本になるのはこのサイトだからあまり代わり映えがしないかもしれない。ま、別のページである、ということが瞬時に分かれば良いのだけれど。いや、別ページとはいえ、同一人物がやっているのだから、運営はここと一体となってやることになる。

 新しいテーマで書くのだけれど、気が付いたら、新しいテーマのことにまつわる写真や資料がまったくないことに気が付いた。行き当たりばったりで決断したわけじゃないのだけれど、結果そうなってしまったということは、一度決めたらあとは実現に向けて突っ走ってしまう僕の性格の現れなのかも知れない。

1月9日

 今年に入ってはじめの市場に足を運ぶ。1週間行かなかっただけなのだが、ずいぶん久しぶりな気がする。

 いつも通り仕事を終えて、魚屋さんとともに昼ご飯。市場ビル9階の食堂に行ったのだが、魚屋さんは「こんなものしかないのか」と納得行かない様子。いくら丼が並んでいたりするのだが、食のプロだからやっぱり妥協はできないらしい。外部の人間と食べるのに、下手な物は食べさせられない、ということか。

 で、市場ビルわきにある食堂に入る。正午ということもあって、店内は満員。がやがやがちゃがちゃ騒々しい。「これが市場の食堂。ごめんね」と魚屋さん。上品な育ちじゃないから、まったく問題ない。

 ウナギ丼に刺し身に出汁巻き卵。市場の食堂だけあって、丼にはウナギたっぷり。刺し身はマグロ、イカ、サザエ、赤貝、太刀魚、甘エビ、ホタテ、サーモンなどなど品数がすごい。普通の定食屋なら、マグロにイカ、甘エビ、サーモンぐらいが盛り合わせてあるのが相場だろう。さすが市場。

 ウナギに付いてきた貝汁もうまい。出汁巻きもうまい。魚屋さんとマニアックな話題に興じながら、いつもより多めの昼メシを平らげてしまった。

1月8日

 昼メシを外に食べに行くことになり、栄へと繰り出した。うまいラーメン、ということでラーメン激戦区である本町通りに。白水(しろうず)という店がうまい、と連れて行ってもらったのだが、残念ながら午後2時をすぎており、「準備中」の看板になっていた。

 仕方がないから、超話題店である一風堂へ。あまりにも有名なところは敬遠してなかなかいかないので、話の種には良い機会だ。

 2時すぎにもかかわらず、店内は満員だったので、寒風吹きすさぶ屋外で待つことに。10分ほど待たされてようやく店内に入れてもらい、さらに10分ほど待たされた。店内は、今時のお店らしいデザイン。内装専門のコンサルタントでもいるのだろうけれど、最近のおしゃれ系のお店や居酒屋はみんな似たり寄ったりになってきた。こうなってくると、古い蔵や合掌造りの店は強みを発揮する。

 カウンターに座ってメニューを見る。博多ラーメンといえば、豚骨で白いイメージがあるので、白丸元味を肉入りで注文(800円)。それに100円を足してランチセットとして注文した。机には壺がおいてあって、高菜と辛しもやしと紅ショウガ。さっそくもやしと高菜を小皿に取って食べていたら、ご飯と餃子が出てきて、餃子を1個口に入れたときにはラーメンが出てきた。出てくるのが早いのは良い感じ。餃子は小ぶりで、まあ、普通の味だ。

 さっぱりとした口当たりが自慢のラーメンらしいが、チャーシューを増量してしまったので、2、3枚食べていたら脂がくどくて、ラーメン全体もくどく感じるようになってしまった。失敗したかも。豚骨スープは、まあ普通の味だ。クセになってまたすぐにでも来たい、とまでは思わなかった。行列が出来ていて、数十分まちなら入らないでしょう。

 何となくすごして夜は福井料理の居酒屋へ。3000円で飲み放題食べ放題のお得のお店だった。新年ということで升酒をがぶ飲み。ふと気が付いたのだが、アルコールは元日以来だった。

1月7日

 僕にとってはこれまでの人生最大の買い物をしたのだが、札束にぎるわけでもなく、ちょっとした書類を書いたこととATMの操作で完結してしまったので、別に感動もなく、淡々と終わってしまった。1万円札の束を手渡したのであるなら、緊張したのかも知れないけれど。札束は演出としては面白いが、数えるのがめんどくさい。

1月6日

 なぜか愛知芸術文化センターに用事があったので出かけてきた。伏見方面から徒歩。栄交差点を過ぎると見えてくるのが、「オアシス21」だ。バスターミナルの地上部分を公園にしてあるのだが、訳の分からないオブジェが上に載っかっている。愛知芸術文化センターとドッキングしていて、一体となって栄の街角を箱もの行政の象徴のような一角にしてしまった。

 オアシスというからには潤いを与えてくれる場所をということで作ったはずなのだが、何度見ても人工物ばかりで殺伐としていて、息苦しさを感じる。なぜ、床がガラス張りの空中庭園を造って、水まで流さなければならないのか。なにより、一角が回りの街並みとまったく連続性がない唐突な場所となってしまっている。

 これを作った人間は名古屋の街にまったく愛着なんてなかったに違いない。設計士は自らの職業的野心をそのまま形にし、コンペでこのデザインを選んだ人は、ただ形が面白いから選んだんだろう。地域への誇りだとか、愛情がまったく感じられない。ちゃんちゃらおかしい。

 芸術文化センターの中でそんなことを考えていたら、地震が起きた。

1月5日

 駆け出しの頃から正月なんてまったく関係ない仕事をしていたばかりか、大晦日の夜は仕事場で先輩とともに寂しい年越しソバ(カップめん)を食べていたのはまだマシな方で、仕事先で年越しを迎えるなんてざらであった。2000年なんて病院で年を越した。

 昨年から環境が変わって自宅で年越しができるようになってしまった。えらく恵まれた環境になってちょっと戸惑いつつも、やっぱり年越しは家で家族とともに過ごすことにした。さらに、正月前後に5連休ぐらいがあるのも新鮮な体験であった。昨年は元日にヘッド交換し、今年は足回りとマフラーの交換ができた。

 名古屋に来るまで、最高3連休ぐらいが年に1、2回ぐらいが当たり前だったので、長期間仕事をしない、というのに体が慣れていない。だから、今日出勤しても何となく休みボケしてしまい、文字通り朝10時から夜10時まで仕事場でぼう然として過ごして終わってしまった。まったく仕事する気にならなかったので、上司が隣で難しい顔で仕事に没頭するすぐ隣で、僕は難しい顔してホームページの更新をしていた。

1月4日

 年賀状ではかなり不義理ばかりやってきた。数年前まではまったく出さなかったし、2年前、ようやく思い立って出したものの、昨年は祖父が死んだこともあって、再び出さなくなってしまった。松本からこちらに越してきたときも、異動のあいさつすら出していない。書いたのだが、一言自筆で添えようと思っていたら数カ月が経過してしまい、出すタイミングを逸してしまったのだ。むなしく宛名まで書いてあるハガキが部屋にたくさん転がっている状態。

 これではいかん、とことしこそ年賀状を書くつもりだったのだが、年の瀬まで年賀状すら手に入れていなかった。コンビニを駆け回ってかき集め、ようやく書き始めたのが大晦日。仕事関係のものを先に書いて仕事場前のポストから投函したのが大晦日の夕方だから、早いものでも今日届いたぐらいだろう。それでもまだまだ書きたい人全部の分は書いていなかったので、大晦日の夜にしこしこ作って1月1日の午前4時に投函したから、まさしく元旦の挨拶となってしまった。相手に届くのが3、4日後なのだからあまり意味がないのだが。

 で、元日にふたを開けてみたら、僕宛の年賀状は長野マツダから届いたダイレクトメール1通だけであった。自分で招いたこととはいえ、その悲惨さにしばらくぼう然としたのである。3日には1通も配達されなかった。それでも、と思い直して、親しい友人の分をこの日に投函した。

 で、今日になってようやくまとめて届いた。だいたい僕と同じように年末にばたばたと書いたに違いない。みんな同じなんだと、ちょっとホッとした。で、書き忘れていたり、住所が分からなかったりした人の分を今日作って投函した。だいたい、満足行くだけの分は出したと思う。来年分こそは早めに出そう。

 年賀状を処理して、手持ちぶさたになったから、ロードスターのオイルを交換した。RSファクトリーSTAGEから買ったりもらったりしたハボリンを入れてやる。手持ち分がなくなったからまた購入しなくては。

1月3日

 ファミレスで食事をしていたら、後ろの席からGT-Rやシビック、レジェンド、ムルシエラゴなどと車の名前がぽんぽんと聞こえてきたので、思わず聞き耳を立ててしまった。「うちは良くボルボとか入ってくる」などと話していることからすると、一人は車工場で働いている兄ちゃんか? 隣の席には女の人。その迎えには、べらべらしゃべりまくる男が座り、どうやら話の主導権をにぎっているようである。友だち同士にしてはちょっと話し方が変だ。

 車の話題がけっこうマニアックだったので、なんとなく耳に入っていたのだが、そのうちまじめな話になった。いや、まじめな話というよりは、演説口調。不景気な世の中に政府の無策、云々。おしゃべり男曰く「将来年寄り3人を1人が支えるんだよ。年金なんてもらえるわけがない。たとえもらえたとしても、月6万とかなんだよ」。ここら辺でピンと来るものがあった。どう考えても何かを契約させようという勧誘トークである。

将来年寄り3人を1人が支えるんだよ。年金なんてもらえるわけがない。たとえもらえたとしても、月6万とかなんだよ

 気になったので、ドリンクバーでコーヒーをお代わりした帰りに後ろの席を観察する。おしゃべり男は茶髪のどこかおかまっぽい男。若作りしているがたぶん40ぐらいだ。熱心に話を聞いているのは20前後の若い男女。カップルだと思っていたが、違うかも知れない。女の人は茶髪男と前から面識があった感じなので、同年代の女に誘われた、哀れな男、といったところか。

 茶髪男のトークが、年金の話から、環境問題に切り替わった。水環境のことについて、真偽が定かでないことをずっとべらべらしゃべっている。茶髪男曰く「これを使っていれば、川がものすごく綺麗になる。工業廃水よりも家庭排水の方が汚染が桁外れなんだよ。家庭の水を綺麗にすることが大切なんだ。工場なんかよりも、集合団地が一番最悪。けれども、俺がセミナーを開いた団地では、そこの水がどんどん透明度がどんどん上がっている」。なんだか、雲をつかむような話でよく分からないが怪しさ満点なことは確かだ。なにやら、水関係の製品を買うように勧めているらしい。たぶん、びっくりパワーを秘めた水とか、歯磨き粉などの水回り製品、健康食品といったところだろう。

これを使っていれば、川がものすごく綺麗になる。工業廃水よりも家庭排水の方が汚染が桁外れなんだよ。家庭の水を綺麗にすることが大切なんだ。工場なんかよりも、集合団地が一番最悪。けれども、俺がセミナーを開いた団地では、そこの水がどんどん透明度がどんどん上がっている

 「俺の知り合いの中にこれでがんが治った人間がいる。胃がんだったのが、三ヶ月できれいに収まった。喉頭がんの人も治った。放射線で治療をしていて、ご飯も食べられず、飲むこともできなかった。飲めないから、まずは喉に塗ったの(びっくりパワー水を塗ったのか)。超微粒子で皮膚から入っちゃう。そうしたら声が出始めてね。いま、3日に1本の割合で飲んでるけど、元気になったよ」。まともな判断能力を備えた人間ならば、ここら辺で気が付くはずなのだが、若い男女2人は、「すごい」とうなるばかり。たぶん正面からみたら、キラキラと目を輝かせているに違いない。ああ、だまされているよ、と2人をかわいそうに思うのだが、後ろの席から突然「あんたらだまされているよ」と言うわけにも行かず、聞き耳を続ける。そのうち、話がお金のことに切り替わった。

俺の知り合いの中にこれでがんが治った人間がいる。胃がんだったのが、三ヶ月できれいに収まった。喉頭がんの人も治った。放射線で治療をしていて、ご飯も食べられず、飲むこともできなかった。飲めないから、まずは喉に塗ったの(びっくりパワー水を塗ったのか)。超微粒子で皮膚から入っちゃう。そうしたら声が出始めてね。いま、3日に1本の割合で飲んでるけど、元気になったよ(びっくりパワー水を塗ったのか)

 「ただ説得できるようになればいいんだ」と茶髪男。「我々を利用して欲しい。セミナーがある。友人をセミナーに連れてきてもらえないか。絶対、損させない」。おお、本性を現し始めた。だが、若い男は「二人三人なら話したいな、と思う人がいる」と本気に受け止めている様子。「説明は俺がやるから熱は自分たちで伝えて。無理やりっちゅうのもけっこう熱なんだ。納得してもらえればいい。とにかく呼んできて欲しい」。セミナーと称する集会に人を集めて物を売りつける行為は催眠商法と呼ばれるのだが、若い男女はそんな知識はないらしい。

ただ説得できるようになればいいんだ我々を利用して欲しい。セミナーがある。友人をセミナーに連れてきてもらえないか。絶対、損させない説明は俺がやるから熱は自分たちで伝えて。無理やりっちゅうのもけっこう熱なんだ。納得してもらえればいい。とにかく呼んできて欲しい催眠商法

 「たったこの3〜5カ月で基盤が出来る」と茶髪男は続ける。ついに来た。ひきつづき「1年に1人勧誘すればいいんだ」。おお、マルチ商法じゃないですか。

たったこの3〜5カ月で基盤が出来る1年に1人勧誘すればいいんだ

 「この先10年で考えてよ。1年に1人を開発すればいい。その1人も増えていくから、2年目になると1人ずつ増えていく」。茶髪男は資料か何かを見せながら説明している。言葉の中にエグゼクティブだとか、フレッツだとか意味不明のヨコモジの言葉が頻繁に出てくるあたりが、人をだますレトリックなんだろう。

この先10年で考えてよ。1年に1人を開発すればいい。その1人も増えていくから、2年目になると1人ずつ増えていく

 「8、16、32と、倍数になっていくんだよ。それぞれが1人ずつメンバーを増やすと64、128、256…」。茶髪男の話は、ねずみ算トークに切り替わった。「10年後は、単純に計算しただけで月に100万入ってくる。今後10年、会社に居て月100万もらえる? これはあくまでも年1人で非常にスローペースでやった場合。3年に3人増やすだけでこれだけになるんだよ」。ねずみ算で会員が増えることを計算しても意味がない。27代目には日本の人口を超えてしまうという、中学でも習う単純な話を、若い男女は知らないらしい。

8、16、32と、倍数になっていくんだよ。それぞれが1人ずつメンバーを増やすと64、128、256…10年後は、単純に計算しただけで月に100万入ってくる。今後10年、会社に居て月100万もらえる? これはあくまでも年1人で非常にスローペースでやった場合。3年に3人増やすだけでこれだけになるんだよ

 「マイナス成長の時代でも商品がしっかりしたものだから、売れまくる。これは、イイよ。会社には成長する時期があるんだけれど、今が一番いい時期。ある程度話が行き渡ってしまうと、伸びなくなるからね。今、これは名古屋では買えないんだよ。福岡では1時間半レジに並ばないと買えない。それぐらい広まっている。名古屋はまだ更地なんだよ」。まず、物の良さを強調し、もうけの話を後からくっつけるのがマルチ商法の手口である。「とにかく、一人で良いから紹介してよ」と茶髪男のマルチトークもだんだんと熱を帯びる。

マイナス成長の時代でも商品がしっかりしたものだから、売れまくる。これは、イイよ。会社には成長する時期があるんだけれど、今が一番いい時期。ある程度話が行き渡ってしまうと、伸びなくなるからね。今、これは名古屋では買えないんだよ。福岡では1時間半レジに並ばないと買えない。それぐらい広まっている。名古屋はまだ更地なんだよとにかく、一人で良いから紹介してよ

 「君からこの話を話すと、怪しまれるから、こう話すといい。『可能性があるすごい話がある。一緒にやろう』。ビジネスに誘うように切り出せばいい。細かい説明は俺がするから、君は相手に熱を伝えて欲しい。ただものを売るのではなくて、人間関係もできるんだよ!」。最近、ネズミ講マルチ商法まがいの商売が「ネットワークビジネス」と呼ばれてもてはやす向きもあるが、どう考えても成功する話ではない。茶髪男は話の中で「だれもが成功する話じゃない」と保険を掛けておくことも忘れない。

君からこの話を話すと、怪しまれるから、こう話すといい。『可能性があるすごい話がある。一緒にやろう』。ビジネスに誘うように切り出せばいい。細かい説明は俺がするから、君は相手に熱を伝えて欲しい。ただものを売るのではなくて、人間関係もできるんだよ!ネズミ講マルチ商法ネットワークビジネスだれもが成功する話じゃない

 「とにかく可能性がある話でしょ。この会社はお金儲けをしようと全然考えていない。環境を良くしたい、という思いがあるから。自分たちの製品を使ってもらって環境を良くしようと考えている」。お金儲けのことを全然考えていない割には、さっきから儲けた実例ばかりを熱く紹介している。結局、若い男女がだれかを引っ張ってきても、儲けるのはこの茶髪男だけだ。

とにかく可能性がある話でしょ。この会社はお金儲けをしようと全然考えていない。環境を良くしたい、という思いがあるから。自分たちの製品を使ってもらって環境を良くしようと考えている

 

 健康食品だとか、天然素材の石けんだとかを会員だけを対象に売り、さらに売り上げのうち何パーセントかを紹介者にリベートとして渡すビジネスがある。会員はランク分けされていて、たいがいが物をたくさん買うか、会員をたくさん獲得するかでステージが上がるシステムになっている。ステージが上がれば、もちろん金がたくさん集まることになっているのは言うまでもない。だが、ねずみ算の話を持ち出すまでもなく、大多数が損をするシステムであることは、ちょっと考えれば分かることだ。

 扱う商品には傾向がある。たいていは「自信のある本物」を扱っていると称し、広告は使わず、「本当によいかは人からしか伝わらないから、人のつながりで商品を広める」などと説明する。が、商品の効能は理論や摂理を超越したものがほとんどで、何ら信頼できる物ではない。

 神懸かり的な効能を信じて商品を買うだけならまだましだ。だが、いけないのは商品を信じ込むだけではなく、「儲かる」と思って必死になって会員を勧誘し出す迷惑な人が中にはいることだ。友人を誘いだしては商品の紹介に明け暮れるようになる。しかし、だれも会員にはなってくれない。自らもだんだんとお金を吸い上げられていき、気が付いたときにはお金も友だちもなくなっている、という悲惨な末路をたどる。儲かるのは、商品を売る会社と一握りの幹部だけという仕組みなのだから当たり前だ。

 頭では知っていたのだが、ファミレスの後ろの席で実際に勧誘しているのを盗み聞きして、まさしくその通りの話をしているのは正直笑った。今回話を聞いていた2人も、びっくりパワー水をペットボトルで買っているうちなら良いのだが、そのうち50万円ぐらいする浄水器でも買わされて、痛い目に遭うに違いない。若かったし、そんなに搾り取られるお金も持っていないだろうから、数十万円ぐらいは勉強代、と割り切ってしまえば良いのかもしれない。