2月28日

 本当なら、明日付けで異動のお達しが来て、どこか別の街へ引っ越しているはずだったのだけれど、どういうわけか音沙汰がなかった。人事担当者がこのページを目ざとく見つけて、毎日チェックしていて、大胆に仕事をさぼっているのを知っていて、「こいつは動かせない」と思っているのかも知れない。でも、本当に見つかっていたらたぶんクビになっているだろうから、それはないだろう。

 松本は初任地。我が社では1つの任地に3年がだいたいの目安である。僕はすでに3年7カ月いるから、ちょっと長め、ということになる。イレギュラー。別に偉くなりたい訳じゃないからいいけれど。

 それでも、声が掛からない、ということは、日ごろのさぼり具合や仕事のできなさが漏れ伝わっていて、「あいつならいらない」とことごとく断られているのかも知れない。それならそれで、いいのだけれど。

 もうしばらく、信州で遊んでいることになりそう。もちろん、いる間は山道を走りまくるのである。

2月27日

 休みなのに、早く起き出して始めたのは、足回り交換の続き。夜にリアを済ませてあったので、フロントである。ボールジョイントを抜いてやるのが手っ取り早いと聞いていたものの、抜けるかどうかは分からない。

 意外にも苦もなく抜けたので、着々と作業を進める。ボルトが1本腐っていたので外すのに苦労したけれど、午後1時前には終わった。

 やっぱり走りに行かねばなるまい。試しにいつもの山道へ行ったら、スタッドレスタイヤなのに、ぎゅーんを付けていたときぐらいの感覚で走ることができる。さすがにブレーキは利かないけれど。速い。

 減衰力を調整するために、ドライブに出た。高速コーナーが続く千曲ビューラインを走るのだ。佐久市まで出て、給油して、同じ道を走って帰ってきた。車が少ないし、いても白線なので抜いてしまえばいいのだ。いろいろ試して納得行くセッティングが取れた。

 夕方、諏訪に足を伸ばして、マフラーを交換中の某氏を襲撃。夕食を食べて帰宅。

 詳しくは本編で。

2月26日

 仕事中にホームセンターやカーショップを回りまくり、暗くなったころに颯爽と帰宅して、庭で足回りの交換をしていたら、軽自動車がずかずかと家の玄関までやってきた。少し奥まったところの家だから、普通の神経なら車を乗り入れないはず。自分の車は庭にまで入れちゃっているくせに、隣の家の大学生かな、鬱陶しいな、と思っていたら、「雅さん(仮名)」と、男が僕の名前を呼んだ。

 首から掛かった名札が目に入り、もしやと思ったら、男が切り出した。「私、NHKのものですけれど。今日訪問した理由を、単刀直入に言うとですね、受信料を払ってほしいんです」。うっすらと笑みを浮かべながら、それでも目はちょっと真剣な、そんな複雑な表情で、男が言い放った。

 ついに来た、と思った。ほとんど家にいないものだから、集金に来ていたかもしれないけれど、集金屋さんに出くわしたことはないのだ。いや、松本に来て数カ月のころ、今から3年ちょっと前に一度来たが、家にはテレビがない、と追い返した。本当になかったのだ。

 親が家に遊びに来たときにテレビを持ち込んでから3年ほど。その間、NHKの受信料は払うことがなかった。請求されないのだから、払う必要もない。

 あくまでも腰は低く、丁重な言葉遣いではあるが、少々行き過ぎな感じ。ずかずかとやってくる態度がちょっと気に入らなかったので、振り込み用紙を置いていってください、とだけ返事をした。用紙だけもらって払わなければいい。「いやいやいや、方法には2通りありまして、今ここで1395円を払っていただくか、もう一つは、銀行から引き落としをする手続きをしていただくことになるんですよ」と男。やけにハイテンションで、声がやたらめったらでかい。

 汚れた手でポケットから財布を取り出すのもいやだったので、ほとんど家にいないんですけれど、それでも払うの?と、切り返す。理由にはなっていないのだが、払うにしても次の機会にしてもらいたかった。テレビは見ているし、NHKを見る比率が高いので、今度は「持っていない」とは言えない。

 「いや、いないのはよく分かっていますよ。私もよく近くに来るんですが、何度来てもいないですからね。それにね、以前も来ましたけれど、ちょうど雅さん、そのときは引っ越しした直後でしたよね。2年ぐらい前でしたか」

 なんと、以前追っ払った男だったのだ。しかも、昔のことをはっきり覚えてやがる。良く覚えていますね、と感心したら、「私もこの道のプロですからね。へっへっ」と、上目遣いの妖しい眼光で僕をにらみつける。

 「いま取り込んでいるし、後日振り込めばいいでしょ。用紙だけ置いてってください」。男の目が再び妖しく光る。「いや、別に雅さんのことを言っているわけではないんですがね、用紙だけ置いていっても、若い人の中にはね、やっぱり払わない人がいるんですよ。ですから、今ここで払っていただくか、振り込み手続きをですね…、云々」。向こうのペースにはめられそうだったので、今本当に忙しいんですよ、と、むなしく抵抗してみる。

 「いやね、今ここで私が言っているのは、雅さんに2年分を一度に払ってくれ、という、そんな話じゃないんです。ただ私は、3月分以降を…、あとどれくらいここにいらっしゃるんですか。半年ですか。だったら、3月以降の分をね、半年だけ払ってもらいたいんです」

 声が異常にでかい。まるで玄関先で借金取りに怒鳴られているような雰囲気である。振り込みだとか、手続きだとか、払わないだとかいう単語が、ご近所さんに聞こえては、これは良い事態とは言えない。「あの人、どうも借金取りに追われているのよ」などと誤解された陰口をたたかれそうである。いや、誤解されなくても「あの人、NHKの受信料すら払っていないのよ」と正しい陰口をたたかれても、それはやっぱり不名誉なことである。こうやって、僕がご近所さんに気を遣っている瞬間も、男の集金トークは止まらない。

  「こうしましょう。話をですね、1億人いる国民の平等な負担という…」

 負けた、と思った。さすが集金の専門家である。払わない連中をいかに払わせるかでメシを食っているのだから、そんなやすやすと引き返すわけもない。なによりも、玄関先で、こうも大声でしゃべりまくられては、本当に近所から心配されてしまう。

 いかに早く帰ってもらうかに作戦を切り替えた。じゃ、1395円払います、と答えたら、「そうですか、申し訳ないんですけれど、認めがぽんと一つ、いるので」と抜け目なく要求してくる。顔を見るものいやだったので、すぐさま印鑑を取りに家の中に入ろうとすると、「書くのに平らな場所がいるんですけれど、中に入れてもらっていい?」と男。入れたくもなかったし、何よりも足回りの梱包やらエンジンパーツやら新聞紙やらで、えらく汚かったので、向こうでやってください、と足回りをばらしている最中の物干場に案内した。照明も付きっぱなしだ。

 印鑑を取ってきて、財布からお金を取り出し、コンクリートの上に置く。男は領収書に記入している最中。「ご住所は、ここは大村ですか。番地以降はないんですよね。じゃ、ここに雅さんのお名前を書いていただいて、認め印を押していただけますか」。もう逆らう元気すらない。言われるがままに汚い手で名前を書き、印鑑を押す。

 「それじゃあね、ここには3月分、と書いておきましたから。今日は2月も26日でしょ。2月分ということにすると、3月に入ってすぐまた請求書が来てしまいますから、それではもったいないですから、特別に3月から。3月分としておきます」。なんだかもう、気が狂いそうになってくる。

 領収書と、向こうの控え書類を切り取ろうとして男が失敗した。切り取り線から大きくはみ出して、びりりと領収書がやぶれてしまったのだ。いいですから、そこに置いて行ってください、といったのだが、「いや失礼しました。今すぐテープで張りますから」。冗談だろ? と思うが、男はそそくさと自分の車に戻っていった。

 もういい加減付き合っているのもいやになってきたので、再び作業に戻る。マツダスピードの車高調の分解に入ったのである。

 男が戻ってきてテープで領収書を張り始めた。気にしなくて良いですよ、と言ったら、「いや、雅さんはやさしいからいいけれど、僕だったら怒るよなあ」と、いかにもご機嫌な様子でぺたぺたとテープを張りまくる。抵抗しなくてよかった、と思った。もし、「怒るよなあ」なんてことを人にいう人間を、再び追い返したら何されるか分かったものじゃない。「今、タイヤの交換ですか」と聞いてきたので、新足回りを指さして、これを付け替えているんです、と言ったら、手をぽんぽんと上下させて「ああ、バネですか。がんばってくださいね」とだけ言い残して、ようやく引き上げていった。

 侮りがたし、NHK集金人。奴らはプロだ。

2月25日

 ターミナルケアというと、何のことか分からない人が多いに違いない。

 がんで余命幾ばくもない人たちに施す医療のことである。延命がかなわないのだから、いかに最期まで人間らしく生きられるかを考える。ホスピスという施設に入る人もいる。ホスピスなら聞いたことがある人が多いかもしれない。ホステス、と語源が一緒で「もてなし」を意味する。人生の最期をもてなす場。ホスピスを始めた医者の娘が「ホステスになる」といい出して、一瞬びっくりしたという笑い話もあった。この場合のホステスは、もちろんそこで働く看護婦さんである。

 甲府市の女医で自ら病院を開業し、ターミナルケアに取り組んでいる人の講演会があった。講演会と言うよりはトークショーか。

 末期がんだと死ぬほど痛いらしい。けれども自分では死ねない。もんどり打ってうなろうが叫ぼうが暴れようが、放置されるのが今の日本の医療の現状。最期まで苦しみ抜いて、涙を流しながら亡くなるのが普通なのである。適量のモルヒネで痛みをコントロールすると、亡くなる前日まで好きなことをして、穏やかな顔でいられるという。そんな患者たちがスライドで映し出された。

 そんな講演会に信州大病院の第一外科の先生がいるのを発見した。

 信州大学はなぜか、京都大学と並んで、国内での肝臓移植の最先端を走っているのである。ちょうど3年前、国内初の脳死移植があったとき、肝臓を担当したのがここ。脳死とは、脳みそだけ死んでいるのに、心臓が動いている状態を言う。脳みそが死ねば呼吸が止まって心臓もすぐ止まるはずなのだが、人工呼吸器の発明によって心臓が動いているのに脳みそが死んでいるので、その人が亡くなったとみなすへんてこな状況が生まれた。

 そこにいた先生はこのとき、高知県まで行って肝臓の摘出に立ち会った人である。それで助かる人が大勢いるとはいえ、まだ温かいヒトにメスを入れるのだから、普通の日本人なら嫌だと思うに違いない。いくら医者と言っても最初は躊躇すると思う。それでも回数をこなすとマヒしてくるのが人間の常。

 そこら辺のところを、信州大のお医者さんたちはどう感じているのかな、と思っていたら、その中の1人がこんな重い講演会にわざわざ足を運んで、熱心に聴いていた。手術マシーンのようにさえ感じたこともあったのだが、やはりいろいろと考え、思い悩んでいらっしゃるのである。

 講演会では「大病院のお医者さんほど人が痛んでいるのが分からない人が多い」などと、たびたび大病院批判が繰り広げられた。この移植医も一緒に笑っているのを見て、中にはちゃんと心得ている人もいるんだよ、と1人、心の中でつぶやいたのである。

2月24日

 酔っぱらって失敗しちゃった。

 富山のロードスタークラブの方々が白馬に泊まりがけでスキーに来る、と知ったので、同じ県内に来るのだから、行かねばならぬだろう、と1人、勝手に納得して仕事を終えて夜、ペンションでの飲み会に合流することにした。

 土曜日は仕事。ちゃちゃっと片付けたかったのだが手こずってしまった。大町での仕事だったのが幸いして、午後9時すぎ、ジムニーでペンションに乗り付けた。

 仕事のついでに飲み会に寄った形。夕食も終わり、風呂も入ってのんびりとみなさんでトランプをやっている和やかな場に、スーツ姿の怪しい男が乱入したのだからさぞ気分が悪かったに違いない。

 飲んだ。ビールを数本。それに手ぶらではいけないと、買っていったワイン「CARLO ROSSI」を何杯も。3リットルびんだから、いくら飲んでも減っていかない。

 壊れた。かなり崩壊していたらしく、翌朝みなさんに心配された。「面白かったから良かったけどな」と、励まされているんだか誉められているんだか分からない言葉をかけていただいた。大変迷惑をかけた。どんな風に壊れちゃったかは言うまい。

 朝からまたビール。前日からの人格全壊状態が維持される。多くの人はスキーへいったのだが、4人宿に残ってずっと何をすることもなく座って、飲んでいた。風呂へ行った。仕事帰りだから着替えを持っているわけもなく、営業に疲れた会社員がリフレッシュに来たような雰囲気で公衆浴場に乱入する。

 そして宿に戻り、何をすることもなく、仲間と語って飲む。なかなかいい時間の過ごし方である。人格さえ崩壊していなければ。

 お昼、スキーをやっていた人たちが戻ってきた。「ちびっこゲレンデ」にある、チュービングという遊びをやりに行くというので付いていった。大きなタイヤのチューブのようなものの上に乗って滑る遊びである。ちゃんと専用リフトがある。

 スーツにネクタイ、革靴姿でずかずかとゲレンデに押し入っていった。すれ違う人がみな「えっ」という表情をする。あなた、それは間違っていますよ、という表情。何を営業に来ているんですか?と思われても仕方がないような異様さである。派手なウエアと黒スーツ。レジャーと営業中。

 ほろ酔い気分なので、人の視線がかえって気持ちいいくらいである。2人がやることになり、大人用の大きなチューブに乗ってリフトで上に上がっていく。そして勢いを付けて滑り降りてくる。なかなかのスピードで、音もレーシー。

 これはやるしかあるまい、と僕の格好を見て怪訝そうな顔をした係員に、スーツですけどやります、と間抜けなことを言って、料金の100円を無理矢理渡す。

 リフト係のお姉さんは冷たい目で「濡れてますよ」。チューブが水で濡れていようが、お構いなし、大丈夫、と大きな声でお姉さんを安心させて、どっかと座り、リフトで斜面を上がる。スキーリフトの真下にちびっこゲレンデがあったので、どうやらリフトの人がすべて僕の方を見ていたらしい。ある人の証言によると、リフトに乗った人の視線の先に僕の姿があったようである。スーツ姿を見たときはかなり笑ったらしい。

 大の大人3人がちびっこゲレンデにチューブを持って立つだけでも異様な光景なのに1人は黒スーツ姿。もちろん、車仲間なのだから、レースなのである。どりゃ、と気合を入れて頭から突っ込み、腹這いでチューブの上にしがみついて滑っていった。

 タイミングが悪くてスタートを失敗。致命的な遅れを取ってしまった。しかし、足でばたばたと斜面を蹴るわけにも行かず、ただ重力に任せて滑るしかないのである。前の人を抜こうにも、なにもできない。

 速い。地面が顔のすぐそばだから、体感は時速120キロ。うお、と変な声を出しながらあっという間に滑り降りた。結局、そのまま同じ距離を保ったままゴール。ビリ。

 3人が団子になって滑っていけば、下りきったところで衝突事故が発生するに決まっている。案の定もみくちゃになってメガネのフレームが少し曲がった。

 飲み過ぎて頭が痛い。失敗して頭が痛い。

2月23日

 今日は、珍しいことに仕事がちと忙しい。なぜかといえば、夜に白馬で宴会があるから早めに切り上げたい、ただそれだけのためだけなんだけれど。

 白馬は先日も大雪が降ったから、路肩にはたぶん2メートル以上の雪があるに違いない。仕方なく、ジムニーで出動である。

2月22日

 信州大の某教授が「アクティブトレーサー」という機械を開発した。

 万歩計を恐ろしく正確にしたと思えばいいかもしれない。大きさもポケベル程度で、XYZ3軸の加速度を正確に記録する。人間の腰に付けた場合、立った、歩いた走った、こけた、という動きが加速度として記録されていく。手で持って、少し振った程度でちゃんと反応するからかなり細かな動きも記録する。データはUSBを使ってパソコンに入力できるようになっている。

 この加速度の数値と体重が分かれば、消費したカロリーが正確に分かる。万歩計では走っても歩いていても、歩数しか出ないからどれだけの強度の運動をしたのかは分からない。アクティブトレーサーの場合は、加速度として記録しているから、とっても正確に消費カロリーが分かるのだ。

 この先生はスポーツ科学が専門。これを何に使っているかというと、お年寄りがどれだけ強さの運動をどれだけの量したら、健康を維持していられるか、ということを探るためだ。昔成人病と呼んでいた生活習慣病は、多くの場合、運動不足が原因という。だから、例えば高血圧で悩んでいる人が病院に来た場合、薬を渡すのではなく「あなたみたいな人が1カ月これぐらいの運動をしたら、血圧がこれぐらい下がります」と運動を処方するのだ。現在、実際に中高年の人を対象に健康教室を開いて、データを蓄積し始めたところ。

 このデータをグラフにしてのぞいてみると恐ろしいのだ。月単位で見れば、ある人が最初、どれだけ意気込んで運動をやり始め、時がたつにつれてだんだんさぼって運動しなくなり、けれどもデータを回収する直前はやはり運動をしないのも何だからと再び運動を始めた、というような様子が克明に分かる。さらに、もっと恐ろしいのが1日単位の動き。スイッチを切り忘れたらしい主婦の、運動をしていない間の動きも克明に記録されていた。ウオーキングから帰り、しばらく何やら家事ぐらいの強さの運動をやり、夕方になって、どうやら夕食の支度。その後、片付けて寝るに至るまでが、だいたい分かる。

 自分に付けられちゃった時を想像するととっても怖い。仕事していないのが一発でばれる。午後1時から3時までまったく動きがなければ、それは昼飯を喰らった後に、少し長めの昼寝をしたに違いない、ということが分かるのみならず、寝返りが多いから落ち着いて寝られなかったんだな、ということまで、詳しく分析すれば分かってきてしまうのだ。スポーツ選手だと劇的。ゲームの中でどれだけ動いていたか、さぼっていたかが露骨に分かる。これは、怖い。

 何でこんな装置を紹介したかと言えば、先生から話を聞きながら、車に積めば面白そう、と思ったからだ。車重を測っておき、回転数などのデータと合わせて計算すれば、エンジンの馬力が正確に分かる。サーキットに持ち込めば、どこどこのコーナーでアンダーだしちゃったとか、このドライバーとあのドライバーであのコーナーの攻め方がこんなに違う、だとかが分かりそう。あれこれ考えるだけでいろいろな使い方が浮かんでくる。

 ちなみに、加速度を測るセンサーは自動車用ABSのものだという。ロックしたかどうかを検知するセンサーがこんな使われ方をするとは。

 まだまだ試験段階だから、装置は1つ5万円。さらに、わけてほしい、と言って買える物ではないのが残念。

2月21日

 純正の排気カムを吸気側に移植するにはどうすればいいのか。

 あれこれ考えていたら頭が痛くなってきた。大阪の某氏がBPの排気カムを吸気側に付けたけれど、カム山の様子が変だという。

 吸気側のカムは、排気側のカムに遅れて付いてくるような感じで回っている。すると、排気側カムを吸気側に付けるには、大幅に遅らせる必要がある。作用角だけで考えれば、吸気と排気、それぞれのカムの中心角分だけ遅らせればいいのだが、実際にやってみると変な方向を向いてしまったらしい。

 なぜずれる。円を書いて、その上で計算するときちんと合っているのだ。けれども、実際にその計算結果で組むと、カムが変。なにが原因だ、と頭を悩ませた。日ごろから飲んだくれてばっかりで、あまり考えることなどしないから、頭痛がしてきた。

 仕方なく、ヘッドの模式図を書いてみる。上死点のときに両方のカムが外側を向いている。それがくるくると回るとやがてリフターを突き…。

 ハッと気が付いた。バルブは垂直ではない。バルブ挟み角があるじゃないか、と。

 確かに、その角度分カムをさらに調整したらちょうど良くなりそう。

 で、うまくいくんだろうか。

 

 と、頭を悩ませているうちに、どうやらカウンターの桁が変わっていたみたい。20000ヒット。あまたあるページの中では些細な数字だけれど、とてもうれしいです。

 エンジン始動まで書いても、バルタイ遊びやセッティングまで、まだまだマニアックな話が書けますのでご期待を!

2月20日

 東京の某氏がロードスターで松本にやってきた。

 部品を取りに来たのだ。シリンダーヘッドにインマニ、ヘッドカバー。とんぼ返りではかわいそうなので、信州そばをともに喰らい、僕の車でいつもの山道へドライブした。

 やっぱり助手席に乗っていても3000回転あたりのトルクの落ち込みが気になる。やはりバルタイを工夫せねばなるまい。

 天気も良かったし、気持ちのいいドライブを堪能した。

 今日は、もちろん出勤日。僕が経営者なら、こんな社員はクビにする。

2月19日

 燃料フィルターを交換した。10万キロ交換指定部品らしいのだが、13万キロ交換していなかった。

 長野道塩尻インターから、岡谷方面へ向かう途中、高回転チェックをやった。チェックと言ってもちゃんと吹けるかどうか確かめるだけなんだけれど。インターから合流して、8000回転シフト。ここは少し急な坂だから、エンジンの吹け方の違いがよく分かるのだ。○速では7000回転でシフトアップ。クラッチをつないだ途端、アクセルは全開なのに、がくがくっとエンジンブレーキがかかった。

 やばいと、すぐにクラッチを切って、エンジンを空ぶかしする。その後は、アクセルを踏む勇気もなく、大人しく走った。

 どうして息付きのような症状がでたのかと考えた。原因で一番ありそうなのが、燃料の供給が足りなかったということ。燃料ポンプ不調か、インジェクターかと考えているうち、燃料フィルターを13万キロも交換していないのはまずいかな、と思い至った。

 別に目詰まりが原因ではないのかもしれないけれど、さすがに交換しないとまずそうな気がするので、発注して取り替えてもらった。5000円+技術料1000円。技術料は取り外した燃料フィルターの処理代も入っていると思えば安いものだ。

 その後、息付きの症状は出ていないけれど、再発するかも知れない。次に交換するとすれば、燃料ポンプか。

 何はともあれ、10年選手の車を維持するには、なんだかんだとお金がかかる。