6月9日

 起きたら午後3時だった。一日が始まったと思ったら、すでに終わっていたこの衝撃。しかも、外は抜けるような青空で、絶好のドライブ日和を、寝て過ごしてしまったことになる。ま、全力で朝までドラクエやっていたから、仕方がないことか。体調も良くなったことだし、寝て過ごした休日もよしとしよう。

 でも、せっかくの天気なので、いつもの山道へ行くことにした。給油して、コンビニでパンを買い込んだ。日曜日はたぶん、ライダーな人たちがハングオンしているので、暗くなるまでは危なくて走れないことは分かっている。美鈴湖をすぎてそのまま美ヶ原林道を上がっていき、標高2000m付近で日没近くまでのんびりしていようと考えた。

 今の自分の課題は、コーナー直前のブレーキとアクセル加減である。コーナーを曲がるのにブレーキもアクセルも使うから、何の説明にもなってはいない。今までは絶対にコントロールを失わないように、減速をきっちりして、車をきっちり曲げてから、アクセルを徐々に開けていく、という極めてつまらない走りだった。ぶつけたくない、ぶつけたくない、という考えが、そのまま出た走り方。走りがマンネリ化しているので、これをちょっと崩したくなった。

 何をするのか、というと、ブレーキのタイミングを微妙に変えるのだ。速い走りではないかもしれないけれど、少し突っ込み気味で進入して、ブレーキを多めに残す。姿勢をわざと不安定にして、アクセルオンでオーバーステアというか、スピン状態に陥る。アクセルとステアリング操作の調和で、うまくスライド量と方向をコントロールできれば、いわゆるドリフト状態、というわけ。ドリフトをしたい訳ではないけれど、自分の意志で姿勢をコントロールできるようにしたい。

 アンダーステアさえ出さなければ、少しぐらいオーバーになっても、ぶつけるような事態にはならないかな、というぐらいな感触は得ているので、わざと崩した走り方をしようと考えた。幸い、FM901はワイヤーが出る直前(実際に出したことがないからどこまで減れば出るのか分からないけれど)なので、思う存分変な減らし方をさせられる。

 入り口の勾配のあるヘアピンで試したら、やはりこれまでの感覚を崩すことになるので、突っ込みが怖い。結局、なんだか分からない姿勢になって、えいっとアクセルを踏んだら、パワースライド。おつりまでもらって格好悪いな、と思ったら、対向車がいた。たぶんスピンして事故をしかけているように見えたに違いない。びっくりさせてごめんなさい。

 やはり、ライダーがいた。なぜか、FCサバンナが側溝に落ちてオブジェになっていた。日曜日は交通量があるので、飛ばしても意味がない。パジェロミニの後ろについてとろとろと山を上がっていく。新緑の下を走る形になるので、とってもすがすがしい。

 頂上の駐車場で、缶コーヒーを開け、パンを食べながら本を読む。夕方のちょうど良い日差しの中、高原のさわやかな風に吹かれ、好きな車の中で好きな音楽をかけて好きな本を読んでいるというこの贅沢。目を上げれば、浅間山が噴煙も含めてくっきりと見える。上田、小諸の街が眼下に広がり、菅平あたりのパノラマが広がっている。いや、信州って良いです。

 人が増えてきたので、北アルプスが見える駐車場に移動する。小さいのでだれもいない。高原を独り占めした気がして、いい気分で本を読んでいたら、日没が近づいてくる。時間は午後7時前である。太陽が沈みかけたら、夕暮れの北アルプスを撮ろうとアマチュアカメラマンが何人もやってきた。鬱陶しいので、そろそろ下山することにする。

 いつもの山道に至り、課題を試してみる。ちょっと突っ込み気味に走る。突っ込む先には下手をすると何もできなくなるアンダーステアが待っているので、やはり怖い。ここら辺の試行錯誤はやはり走っていないと表現できない。文章では伝えられない領域である。ま、下手だから分からないだけかもしれないけれど。

 片道、すべてをきっちり走ると6kmあるコースを4往復ぐらいした。さすがに3往復目あたりで疲れてくる。間瀬峠30分よりもハードだと思う。胃腸がねじれて気分が悪くなる。左の膝がこすれて痛くなってくる。

 何となくつかむものがあった気がする。さすがに、山道では怖くて、一気には限界を超えられない。徐々に徐々にステップを踏まないと、大切な車を壊してしまいそうで怖い。サーキットに行って、いろいろ試してみようかしら。

 午後8時をすぎて、いくら日曜日でもいやに静かだな、と思ったら、そういえば日本代表の試合があるのに気付いた。別に見たいわけではなかったけれど、体力の限界を感じて下山する。グロッキー。

6月8日

 現在、午前4時。すでに日曜の朝が白んでくる時間である。僕は、なぜか仕事場。パソコンの前で、すでに音楽しか垂れ流さなくなったNHKをBGMに、一仕事終えた達成感とともに、脱力感を覚えている。

 こう書くと、朝まで掛かって仕事していたんだねえ、エライねえ、とみなさんから思われてしまうかも知れないが、仕事ではないのである。そこまでまじめじゃあない。なぜ、仕事場にこんな時間にいるのか。僕も、原因がよく分からないのである。いや、分かっているのだが。

 なぜかマイノートパソコンでスーパーファミコンのソフトが遊べるようになった。DirectXのサウンドが調子悪く、音が出なかったので、DirectX8の11MBにも及ぶアップデートファイルをダウンロードし終わったのが午後7時すぎであったか。うまく動くようになり、遙か昔に「面白い。怖い」と聞いていた「弟切草」をやってみたくて、やりだして、2回エンディングを見た。まったく別の終わりかたであった。

 これも昔はまった「ぷよぷよ」もやる。パソコンのキーだと少し慣れが必要だったので、クリアするのに1時間近く掛かってしまった。この時点で時間は午後9時半。

 ぷよぷよもクリアしたし、最後の敵に勝った達成感もあり、次に手を出したのはスーパーファミコン版のドラゴンクエスト1・2である。懐かしいなあ、10年以上前にやったよなあ、と思うのもつかの間、戦士「ろどすた」が生まれて、スライムと戦い始めた。画面がきれいになっている上、どうクリアしたのかなどはほとんど忘れてしまっているので、まったく新しいゲームをやっているようであった。そうして、夜はだんだんと更けていったのである。

 竜王倒しちまったぜ。ノンストップで。我ながら、自分の愚かさ加減をつくづく感じてしまう。歳いくつなんだよ、と。

6月7日

 いくらなんでも、放置したままではエンジンがかわいそうだ、と昨日の夜、エンジンスタンドに固定されたまま部屋の中で宙に浮いている腰下をばらすことにした。何も音がない部屋で独り、エンジンをいじっているのも少し寂しかったので、テレビを持ってきて、フランス対ウルグアイの試合にチャンネルを合わせたら、ちょうど試合が始まったところだった。

 このテレビ、最近調子が悪い。つけていてしばらくたつと、突然チャンネルが切り替わってしまうのだ。別のチャンネルになればまだましなのだが、最近はどこにも合わずにただ砂嵐を表示することもしばしば。どうも、受信をする回路が暖まってくると、チューニングがずれてしまうらしい。

 フランス戦も、5分ほど表示して砂嵐になった。しばらく消しておき、再びつけると復活する。しかし、1分ほどで砂嵐。あきらめて消し、黙々と作業を続ける。

 腰下分解も、中古エンジンで一度やり、さらに自分の車に載っていたエンジンもやっている。3度目となると、手慣れたもので、タイミングベルトのベアリング、ウオーターポンプ、クランクの12kgfもの力で締めてあるボルト、オイルポンプと外していき、オイルパンのたくさんのボルトをやっつけて、液体パッキンで張り付いたバッフルをはがしてオイルパンをはがし、オイルストレーナーのボルトを外してバッフルごと外し、コンロッドボルトをゆるめて4つのピストンを取り出して、リアのオイルシール、クランクのメインジャーナルのボルトを順番通りにゆるめてゆき、クランクを外してしまえば、もう終わり。時計を見ると午後9時30分前。1時間弱でばらばらにしたことになる。簡単だ。

 やはり、シリンダーの壁面には縦の傷が付き、ピストンのスカート部も縦の傷がたくさんついていた。1万キロ弱の走行しかないエンジンとしては、やはり異常と言えるわけで、オイル消費もここら辺が原因だろう。すべてのシリンダーの壁面に縦傷が付き、いちばんひどいのはプラグがかぶった4番気筒。ブロック前側を12時とすると、7時の位置だから、排気側の壁面。1番のピストンリングが上死点となる地点から、下の方まで、約1センチ幅で色が変わっていた。ピストンがどんな当たり方をしたんだろう??? リングが悪いのか?

 あれこれ考えても、素人には答えが出しようがないのである。再トライあるのみ。

6月6日

 リア左側だけジャッキアップし、タイヤも車体下に入れた状態で3日も放置していたロードスター。ようやく作業する時間を見つけたので、リアのローターとブレーキパッドを交換することができた。

 さっそく当たりを付けようと、ジムニーを放置してロードスターで仕事に向かう。ちょっとした直線でぐわっと加速し、急ブレーキ。タイヤがロックしかけて「きゅきゅ」っとタイヤが鳴る怪しい走り方をしばらく繰り返した。

 下りてリアの新品ローターを見ると、中央の部分だけパッドが当たっている感じだった。まだまだ踏み方が足りない。仕事を終えて、道中、急ブレーキを繰り返しながら、まずはいつもの中華料理屋へ。麻婆茄子丼を喰らって、午後10時ごろ、いつもの山道へ行く。

 夜になるとドリフターズがいるので、なかなか行かないのだが、やはり本格的にブレーキを踏むなら、走り慣れた道しかあるまい。当たりが付いていないためか、利きが一定じゃなく、同じ踏み方でも利かなかったり、ロックしたり。ローターを交換したこともあるかもしれないが、マツダスピードのパッドよりも利きが良いので、少し走り方がぎくしゃくする。

 途中、S14のシルビアとすれ違った。ドリフターズにしては群れていないし、スピードも出していないので、様子を見に来ただけなのか。他の車がいなかったので、安全に走ることができた。

 まだ体調がすぐれないので、全然乗れた気がしない。まったくひどい走り方ながら、少しの当たりは付いただろう、と1往復で下山することにする。

 仕上げに、と、女鳥羽川沿いの堤防道路で3速全開からのフルブレーキを繰り返す。山から下りてきたばかりのためか、2回目からなんだかブレーキの利きが怪しくなり、3回目は思いっきり踏んでもロックしない。さらに4回目をやると明らかにブレーキが利かない。フェードしていた。信号で止まると、もくもくとブレーキから煙が立ち上っていた。ブレーキが焼けた特有のにおいが鼻につく。怪しい車だ。

 少しやりすぎたかもしれないが、新ローターはきれいに当たりが付いていた。冷えてから1発目のブレーキは利かなかったものの、すぐに復活したので、大丈夫だろう。当たり出し作業は終わり。

 けれども、左コーナーでブレーキが鳴く、変な状態になってしまっていた。何がおかしいんだろう。

6月5日

 日本人の3割ぐらいは確実にテレビやラジオに釘付けになっていたであろう昨日の夕方、さすがに話の種として日本戦ぐらいは見ておこうと思ったのだが、5月に新任で長野に来たばかりのボスが顔を見にやってくるという、本当にくだらない会議のために、ささやかな希望も叶えられることはなかったのである。

 どうせ内容のない会議なのだが、いかにもしらけた場にしてしまうと、わざわざ遠く足を伸ばしてやってきた人に失礼というものである。あれこれとってつけたような意見を考え出して、それらしく話す。ささやかな苦労で会議らしい会議にはなった。

 夜開かれる会議だから、話が終わればそれでさようなら、ではないことぐらいは社会人の常識である。夜の帝王みたいな人だったら嫌だな、と考えつつ、恐る恐る出方を見てると、なんだか車でそのまま帰る雰囲気だ。

 松本の直属のボスの一存で近くのファミレスに行くことになった。おいおい、とこれまた冷や汗をかくことになる。いくらアルコール抜きの食事でもファミレスに行くことはないだろう。

 重苦しい気持ちでファミレスの席に座ると、長野のボス、「アルコール飲んで良いよ」と勧めてくる。どうも、帰るのではなく、飲んで松本に泊まっていくつもりらしい。それなら、最初から居酒屋へ案内したのに。

 まだ少し体調が悪い。ビールを飲んだら、せっかく沈静化している風邪ゲリラが活発になってしまうかもしれない。苦肉の策で、メニューに載っていなかったが、頼んで焼酎のお湯割りをもらう。

 1杯飲んだだけで、もうふらふらになってしまった。やはり体調が完全ではない。全身がだるく、頭もくらくらする。簡単に酔っぱらってしまった。正直、すぐにでもタクシーに飛び乗って帰りたかった。

 ところが長野のボスはまだ気が済んでいなかったらしい。そりゃあ、ファミレスでいくらアルコールを飲んだって、飲んだうちに入らない。物足りなさそうだったので、そのままさようならするわけにもいかず、次の店に連れて行くことになった。フォアローゼズのお湯割りをもらってちびちびやっているうちに時間も過ぎる。付き合いで飲む、というのは苦痛以外の何ものでもない。

 苦痛も終わったので、どうせタクシーで帰ることだし、仕事場の人といつものショットバーに行った。病人向けという、歯磨き粉のにおいと味のするカクテルを作ってもらい、1杯だけが2杯、3杯になっちゃった。

 体調が悪かろうがいつも通り飲んでしまったのである。だらだらとくだらないことを書いたのは、ただ単に、自分が飲んでしまった罪悪感を人になすりつけたかっただけなのかも知れない。

 人は毎日、言い訳ばかりして暮らしているのさ。

6月3日

 どうやらゲリラは休戦を迎えつつある情勢。夕方、リアのブレーキパッド&ローター交換作業をやったら、少々熱が出たかも。この季節、まだ夕方は涼しいねえ。

 ロードスターは左リアをジャッキアップしたまま放置。

6月2日

 昨日から、激しいゲリラ活動に襲われております。

 腹が激しいノッキングに見舞われるわ、吐き気するわで、さんざん。まだ松本にいれば薬もあるし、寝ていればよかったのだが、場所は奥三河。薬もなし、独り、ふとんに転がってじっとゲリラの嵐が過ぎ去るのを待つしかなかった。

 寝っ転がっているうんうんとうなっていて、どうも様子がおかしいのに気が付く。昼に大量のメシとビールを喰らったのがまずかったのか、と思っていたら、頭からもノッキングが出て痛みだし、体の節々はデトネーション気味でじんじん痛む上、寒気を覚える。どうも、風邪がお腹に来てしまったみたい。そういえば最近、喉が痛いことがあった。

 風邪なんか1年以上かかったことがない。「車馬鹿がフルブーストしている限り、大丈夫。馬鹿は風邪引かないから」と、周りの人にうそぶいていたのに、こんな季節はずれの時期にかかってしまった。

 朝、ゲリラは小康状態であったものの、いつ暴れてもおかしくない状態。今日は容赦なく仕事である。代わりの人がいないから、休みます、などという甘っちょろい弱音を吐くことは許されない。朝7時半に現地を出発し、国道151号のロング&ワインディングロードを飯田へ向かってひた走る。体力が弱っているため、重ステがつらい。

 仕事場に着いたら、気がゆるんだのか、一気に症状が悪化した。ソファに寝っ転がって、うんうんと苦しむ。体の節々、特に腰が痛い。汗が噴き出て、頭もがんがんと痛む。

 これはいかんと、薬を買って家で寝ることにした。昼までさぼっていても大丈夫だったからである。帰り道、日曜日にやっている薬局はほとんどなく、薬も売っているセブンイレブンで風邪薬を物色する。

 薬局なら薬剤師さんに相談してベストの薬をもらうのだが、ここは置いてあるだけである。以前、風邪を引いたとき、3本1000円ちょっとと少し高いがアンプルタイプの風邪薬が効いた気がする。

 しかし、「熱、喉の痛みなど風邪の初期症状の緩和に」という能書きが書いてある。完全に初期症状を通り越して、胃腸にまで影響が及んでいるので、ちょっと手遅れか。「発熱・ふしぶしの痛みに」という、今の症状にぴったりの能書きの「新ルル−K細粒」を購入する。

 風邪薬を飲むとき、一緒に栄養ドリンクなどを増量補正すると治りがよい気がする。子供用風邪シロップを一気飲みしたり、怪しげな漢方薬を試したりして薬をチューンするのが風邪引きさんの醍醐味だ。迷った挙げ句、2本で980円の栄養ドリンクも購入した。高い。

 家に帰って、ゲリラ活動に対処する薬と、風邪薬を口に含み、栄養ドリンクで飲み下して寝る。ついでに、栄養ドリンクのおまけに付いていた「牡蛎肉エキス」配合の怪しい栄養補助食品も一緒に増量補正。風邪薬がぴったり合ったのか、2時間も横になっていると、症状が緩和した。

 松本でエンジン作れないかも、なんて書いたからいけなかったんだろうか。車馬鹿さ加減を後退させると生きていけない体なのかも。

 けれども、座っているのもやっとな体調で、こんな馬鹿げた文章を書いているから、相変わらず、馬鹿なんだよね。

6月1日

 午後9時に仕事を終えて、愛知県の奥三河に向かった。

 タイヤがほとんどないため、乗り心地が悪く、ロードノイズもうるさい気がする。おにぎりを食べながら中央道を飯田までぶっ飛ばし、国道151号を駆け抜ける。

 やはり、ブレーキの遊びが増えてしまっていて、シフトダウンの時に、ブレーキとアクセルの位置が微妙にずれて少し違和感を覚える。ブレーキに足を当てる程度のブレーキングのときも、すかっと踏み応えがなく、拍子抜けすることもしばしば。踏み込めばカチッとしたタッチだし、利きもマツダスピードのパッドよりも増しているのだが、どうもこの遊びが、嫌だ。

 とりあえず、リアのブレーキパッドも換えてみて、タッチが変わらないようならば、エア抜き。それでも直らなかったら、組み直しだろうか。これまで10万キロぐらいはマツダスピードのパッドだったので、ブレーキパッドのタッチの差を知らないから、もしかすると、特性の差なのかも知れない。なんだろうなんだろう、と考えているうちに、この遊びにも慣れてしまうのかも知れない。

 3月に換えたFM901はほとんど溝がなくなり、後継タイヤ選びに頭を悩ませているところ。お金もない上、8月に引っ越すとなると、あと2カ月足らず。

 新エンジンを松本で組むのは難しいかも。

5月31日

 熊丼を喰らった。

 なぜか梓川の奈川渡ダムにある東京電力のPR施設で、同業他社の友達と会ったので、昼飯を一緒に喰らうことにした。

 トンネルばかりで何もない山の中、どこで食べようかと話し合い、とりあえず街へ向かおうと、国道158号を下っていく。友人が怪しげな食堂で車を止めた。

 古ぼけた食堂。スキー場の食堂のような雰囲気の場所で、入り口で目を引いたのが「熊脂あります」の看板。なんだそれは、と心の片隅で考えつつ、中に入り、壁にかけてあるメニューを見ると、「焼き肉定食」「うどん、そば」「トンカツ定食」「カレーライス」と並んで、「熊丼」「猪しし丼」の文字。「しし」がだぶっているんじゃないか、と思ったがそんなことはどうでもよく、熊の肉が食えるらしい。値段は1500円。なかなかの料金である。

 友人は「そばが食べたいんだけれど」と弱気なことを言うので、猪丼を注文してあげた。猪は松本市内で猪鍋を食べさせてくれる店があり、そこで2、3度食べているから、どんな味か知っている。野生の動物は「味」というよりは独特な「臭み」がある。猪は味噌でチューニングされた鍋でも、少し臭かったので、どんぶりにしたら露骨ににおいそうだな、と思う。

 熊は臭くないのか、と言えば、ある人から聞いた話だと、熊肉をもらってきて、鍋にぶち込んで煮たら、とんでもなく臭いにおいが漂って、とても食えたものじゃなかった、とのこと。鍋は洗っても洗ってもにおいが取れず、捨ててしまったという。よっぽど強烈なにおいだったんだろう。肉が少し古かったのではないか、とその人は言っていた。

 どんな強烈なものが来るんだろうとドキドキしながら待つと、シラタキやタマネギとともに、熊の肉が醤油ベースでおおざっぱに煮られてごはんの上にぶちまけられて出てきた。ブロック状に切られた熊肉は、黒っぽく、同じくブロック状の脂肪がへばりついていた。見るからにしつこそうである。

 一つを箸でつまんで口に放り込むと、それほど臭みもなく、ぱさぱさした感じでやわらかい。試しに友人の猪を喰ってみると、ゴムみたいに固く、しかも獣臭が強烈である。食べられないことはないけれど。

 熊の方がましであったか、と言えば判断に迷う。脂肪ブロックが強烈にくどく、口の中一杯に油が広がる感じ。お茶で流し込みながら、何とか飲み込んで平らげた。

 熊と猪を喰らったから、今度は鹿だな。

5月30日

 「そでどうしたの。真っ黒よ」。近くの中華料理屋で、ピリ辛のたれがかかった唐揚げの定食を喰らい、レジで会計をすませたら、中国生まれとみられるこの店のお母さんに、中国なまりでこう指摘された。見てみると、確かに真っ黒である。また、やっちゃった。爪も真っ黒だ。

 休みだったので、まずジムニーのタイヤの交換をすることにしたのだ。乗鞍スカイラインでは数日前に雪が1メートルほど降ったそうだが、さすがにこの時期までスタッドレスタイヤのまま放置されているジムニーを見ていると不憫に思えてくる。おもちゃと侮っていたわりには出動回数の多い電動インパクトレンチを駆使し、ちゃちゃっとタイヤを交換する。

 天気はそれほど良くはなかったが、ロードスターで美ヶ原へ上がることにした。そういえば、今シーズンになって、美鈴湖より上に登っていなかったのだ。

 8K6Kのバネはやはりうねった道には固すぎるらしく、途中で何度か車が飛び跳ねた。サーキット「も」走ることができる車にしちゃった宿命だから仕方があるまい。ぎりぎり我慢できる突き上げだから、足の仕様は当分このままになるだろう。

 武石村側に下りてビーナスラインを走ろうと思ったら、道が通行止めであった。欲求不満を感じながら同じ道を戻る。それでも、ブレーキパッドがそろそろ限界で、常に悲鳴を上げている状態だから、戻って正解だったのかも知れない。

 下界に下りて洗車をする。そして、フロントのブレーキパッドを交換することにしたのだ。

 エンジンの載せ替えは2回したけれど、ブレーキをいじったことはいままでなかった。エンジンは動かなくなっても危険はないが、ブレーキが壊れると危険だ。自分だけではなく、人を傷つけてしまう可能性がある。だから、これまでブレーキはディーラーに任せていた。

 と、言い訳がましいことを書いているけれど、エンジンだって走行中にブローしたら危険なわけで、ブレーキ整備に手を付けなかったからと言って、お利口さんなわけではない。ただこれまでにいじる機会と気合がなかっただけである。

 初体験のブレーキ整備。フロントをジャッキアップして、タイヤを外し、キャリパーのスライドピンを1本ゆるめただけで、パッドが剥き出しにできた。意外と簡単なのね。パッドは案の定、残り1ミリもなかった。

 シムや金具、針金のようなバネは錆びてボロボロになってしまっていたのだが、替えがないのでパーツクリーナーを噴いてそのまま再利用する。金具やスライドピンはグリスアップしておく。ピストンのブーツをめくると、中は錆びもなくきれいな状態。グリスを押し込んでおく。

 ピストンを戻そうとして困った。ウオーターポンププライヤーで戻した、という話を聞いていたので軽く考えていたのだが、ピストンに傷を付けてしまいそうだし、幅が広くてつかみづらい。ピストンを戻すSSTを買っておけば良かったかな、という考えがちらりと脳裏をよぎる。

 キャリパーを眺めていて、何か使える道具はないか、と考えた。何かが使えそうである。何だろう、としばらく考えて、そうだ、と膝を打った。

 バルブスプリングコンプレッサーである! あれさえ使えば、簡単に押し込めるじゃないか。古いパッドとリア用のパッドをあてがっておき、コンプレッサーをセットしてぎりぎりと締め上げていくと、簡単に引っ込んでいった。

バルブスプリングコンプレッサー

 意外と簡単だったパッド交換。グリスアップもして、ごきげんな利きになるかと思い、車を動かしてブレーキを踏むと、まったく踏み応えがなく、ペダルが床に付きそうなぐらいだった。へこへこっと何度か踏んでやると、少しだけ踏み応えが出てきたものの、遊びが大幅に増えてしまっている。奥まで踏めばちゃんと利いているので、危険ではないが、ちょっと気持ち悪い。エア抜きをすれば直るのかしら。

 ついでに2週間前に燃え掛かったオルタネーターのVベルトを交換。こんな作業を普段着でやって、その服装のまま中華料理屋へ行ったから、お母さんに不審に思われるのである。