エンジン

1月20日

 一日暇だったので、部屋の片付けだとか、頼まれごとでもこなしてすごそうかと思っていたのだが、外は天気である。最近、雪も降っていないし、信州の北部にさえ行かなければ、路面は乾いているはず。そう考えたら、いても立ってもいられなくなり、ロードスターに乗り込んだ。気軽に信州をドライブできるのも、もしかすると、もう数えるくらいしかないかも知れない。

 開幌状態でいつもの山道へ行き、美鈴湖へ。左に折れて、三才山を駆け上る。中信地区と東信地区を結ぶ三才山トンネルへ向かう国道254号は、けっこうな急坂なのだが、高回転をキープしてフルスロットルをくれると、エンジンはものすごい音を立てながら、ぐいぐいと車体を加速させる。6000回転をしばらくキープして、スロットルを全開。そして、バックミラーを注視。どうやら白い煙は出ていない。この幸せ。

 まだ、フル加速に慣れていない。フライホイールが半分の重量になり、回転落ちが早くなったことと、スロットル径を拡大してアクセルワークがシビアになっていることが合わさって、8000回転まで回してシフトアップすると、ぎくしゃくする。そのうち慣れるだろう。

 開幌状態のままトンネルに突っ込むと、ものすごい反響音と排ガス臭でめまいがしそう。ここまで快調に登ってきたのだが、軽自動車に追いついた。

 下り坂をとろとろと走り、平地に至る。5速、2000回転でアクセルに足を乗せる程度の運転だと、バランス取りしたエンジンはまったく存在感がなくなる。冬特有のキンと張りつめた重い空気。耳が少々痛いけれど、全開のヒーターで体はぽかぽかと気持ちよく、やはりオープンカーは冬の乗物だと思う。

 お気に入りのドライブコース。丸子町から千曲川ビューラインを走り、佐久に至る道だ。台地の上を走る道の回りには農地が広がり、まるで北海道でも走っているかのような錯覚を覚える場所もある。台地から谷へと下り、渓谷を渡る大橋もあって、変化に富んだ道である。薄曇りだったが、少々雪化粧した浅間山がくっきりと見える。

 こうして、自分を遠くまで運んでくれているのが、自分で加工して組み立てたエンジンなのだから、叫びたくなるような喜びを覚える。行く先々の空気のにおいを感じながら、昨日買ったばかりの音楽にのり、手先だけできまるシフトをリズミカルに操作して走っていると、本当にこの車に乗っていて良かったと感じる。この瞬間のために、この車を所有しているようなものだ。

 佐久で甲府の友達に電話したら、休みだというので、晩飯を一緒に食べることにする。清里へ進路を向け、日が落ちたので幌は閉める。さすがに氷点下だと、日没後のオープンは苦痛しか感じない。

 甲府で1人5000円取られるがうまいというしゃぶしゃぶの店に行ったら定休日。仕方なく、餃子屋に向かう。餃子6人前と、焼きそば、チャーハンを頼んで分けて食べる。餃子、4人前ぐらい平らげた。腹の中からものすごいにおいがはい上がってくる。

 結局、部屋は散らかったまま。頼まれごとはまったく進まなかった。

1月11日

連休なので実家へ戻ることにした。やっぱり正月中に一度は顔を出しておかないと、親不孝のそしりを受けかねない。

ちゃちゃっと適当に仕事を済ませて夕方、喫茶店で遅い朝昼兼用のピラフをかっ込み、ロードスターに乗り換える。仕事場の前で、ボロボロになった点火プラグを新品に取り替える。NGKのIRIWAY7番だったのだが、この前チェックしたら、真っ白で先に白い堆積物がごてごてと付着して形が変わっていた。こりゃあダメだ、とIRIWAY8番を買っておいたのだ。

実家に向かって走り出すと、新品プラグでやはりアクセルの付が良くなっている気がする。高回転が回したくなるのは当然。

塩尻インターから長野道へ。スタッドレスなのであまり無茶はできないが、新品プラグの全開テストぐらいはやっておきたいところだ。前の車に追いついたところで3速に落とし、5500回転ぐらい。バランス取りしたエンジンは、この回転数をキープしてしばらく走っていても、あまり嫌な感じを受けない。

ノーマルだと、4速の加速はなかなか回転が上がっていかないが、けっこう回る。はっきり言って、スタッドレスでは危ない。

高速で給油。松本市内で給油するより遙かに安いのが泣ける。

12月31日

 世間では大晦日らしいのだが、問答無用で出勤である。ここ4年間、仕事場もしくは、仕事中に年越ししている気がする。ただれた生活だ。

 こんな日にやる仕事など全然ないわけで、午前中は洗濯をしながら、ゆっくり風呂に入っていた。午後は、引き続きロードスターの慣らし。暗くなってからの走行も合わせると今日は130キロぐらい走ったかな。

 仕事場にいようが暇なものは暇なので、WEBをがしがし書いていた。できあがったので、アップしたところ、異変に気付く。どうやら、前回のページを上書き&上書きアップしてしまったらしい。ハードディスク内を探すものの、どこにも見あたらない。

 これは、困った。1ページ書くだけでかなりのエネルギーがいるのに、同じ物なんて書く気がしない。高岡の某氏に速攻で電話。キャッシュファイルが残っていないかを調べてもらった。

 どうやら、キャッシュは残っていない。別ルート。帰省中の諏訪の某氏と東京の某氏に電話する。大晦日なのに迷惑な話だ。2人とも探してくれる、とのこと。大いに期待して待っていたら、ほとんど同時にメールで送られてきた。

 やっぱり持つべきものは仲間だね。お礼に諏訪の某氏にはショットバーのお酒を、東京の某氏にはシリンダーヘッドをあげよう(今のエンジンにトラブルがなければね)。

 

 いろんなページを巡回していたら、この1年を振り返る書き込みが多かったからちと書き足して振り返っておこう。

 一言で言うと、エンジンをいじっていた1年だった。1月に中古のエンジンを購入し、ばらして、ついにヘッドだけ載ったのが6月。その後、12月にはフルオーバーホールをして積み替えが成功した。最初、まったくエンジン内部のことを知らなくて、ぶっつけ本番、とりあえずばらしてみたら、何とかなった。やはり、ばらしてみることから始まるらしい。あとは、いつでもアドバイスを受けられる温かい人たちがいると、素晴らしい。この1年でプロだけで4人ぐらいから聞けるようになった。

 素人のエンジンチューンには「気合」が必要だ。その「気合」を保つために、このページを作ったら、いままでなかった仲間ができた。想像していた以上の副産物。この輪のおかげで、充実した日々が始まった。

 来年は、この輪を大切にしつつ広げて行けたらいいな、と思う。

 お世話になった方々、ありがとうございました。来年も、どうぞよろしくお願いします。

12月29日

慣らし運転のついでに、はかりを借りたり、たくさんお世話になった富山の車屋さんに行くことにした。

昼間なら安房トンネル経由で行っても大丈夫だろうと、山道を登っていった。快晴で、常念岳を始め、北アルプスのパノラマが間近に迫ってくっきり見える。道路に設置された温度計の表示は「−9℃」。路面は圧雪状態である。白い路面ならばのろのろ走っていれば、ロードスターでも何とかなる。

安房トンネルを抜けても圧雪状態。神岡へ抜ける国道は急坂である。下りるのは簡単なのだが、帰りに登ることができるかは不明。夜になるだろうし、帰りは高速を使うことに決めた。

上宝あたりからは、日向では路面も濡れているだけになり、快調に走ることができる。国道41号に合流。走っていたら、路面が乾いてきた。晴れていることだし、これは開幌状態にするしかあるまいと、屋根を開けた。富山の平野に抜けると、こちらも素晴らしい快晴。松本とはまた違った北アルプスがとても美しい。

富山の車屋さんでは異次元の速さを見せるVスペがどんがらになっていた。冬眠の間にスポット増し5000個所だって。どんな車になるのか、想像もつかない。間違っても「僕もやってください」なんて言えない。

夜は高岡の某氏とメシを食うことに。山道で乗ってもらったら、新エンジンはかなり速いことが分かる。

帰りは高速。安房トンネルルートなら、下道で130キロ。高速だと、一度北上してから上越に至り、南下することになるので、240キロぐらいになる。時間もあまり変わらない。冬だから仕方がないけれど。

26日に走り始めて、この日で1100キロ走った。もう良いだろう、と高速で高回転まで回す。8000回転も試す。少し速過ぎて怖い。

自分で組んだエンジンが8000回転まで回ったのに、現実感があまりない。

12月28日

 意味もなく、ロードスターを走らせた。もちろん、仕事をさぼってである。松本は昨日の夜と今日の午後、再び雪が降った。おかしい。いつから雪国になったのだ。

 当然、山に向かえば路面は圧雪。ジムニーで失敗したばかりなので、遊ぼうという気が起こらない。広い駐車場で思う存分遊びたいな。

 最初は乗りにくい車を作っちゃったと、少し後悔したけれど、すでに慣れちゃった。初心者が乗ったらたぶん運転できないけれど。慣らしが進んだためか、走行中にクラッチを切っただけでエンストするという現象は収まりつつある。アクセルワークも慣れた。雪道でも普通に走れる。

 車はどうやら無事に走っているから、早くページを更新しないと。

12月27日

 久しぶりに乗るのだから、やはり開幌状態にしなければならんだろう、とディーラーを出てから屋根を取っ払った。木曽路に入るとやはり凍てついた世界。日が沈むと同時に、凍えてきた。がんばってオープンのまま走り抜こうと思ったのだが、冷たい空気が髪の毛を貫通して、頭皮が痛くなってきたので、閉じることにした。

 コンビニの駐車場でアイドリングと点火時期の調整。オイルをレベルゲージ一杯に入れて、再び出発。発作的に愛知の実家に向かうことにしたのだ。この季節、信州を走り回るのだったら、やはり冬タイヤにせねばならない。スタッドレスは実家に置いてあるのだ。

 気温はマイナス。対向車のヘッドライトが路面に反射する。凍結防止剤がまいてあるから、凍っているわけがないのだが、ぎゅーんだと心許ない。ハンドルに全神経を集中して木曽路を走り抜いた。

 中津川に出れば、路面の心配はいらないので、少しアクセルを踏み込む。最初は3000回転の自己規制をしたので、ストレスがたまる。高速で多治見へ。

 実家の両親はどうやら出掛けているらしい。兄貴とメシに食いに行くことにした。家の駐車場は縦列駐車のように止めないと行けない。クラッチを切るとエンストするセッティングだし、重ステだし、ぎゅーんはスリップサインが出ているし、吹け上がりは見違えるほど軽いしで、大変苦労する。

 兄貴とメシ屋へ。目当ての場所が定休日。焼き肉屋で牛肉を喰らった。駐車場から国道に出るのでさえ、エンストしていたら、笑われた。もうちょっと、工夫しないと乗りにくい。

 松本に戻ってきて少し走ったら、走行距離が500kmになった。ディーラーも今日で年末休業に入ってしまうし、オイル交換に行って来よう。

12月22日

 雪の中、諏訪から来た某氏の目当てはいつものショットバーで飲むことであった。朝から飯を喰らっていないことに気が付いたので、とりあえず何か食べに行こうと松本の街中をうろうろ歩き、適当なお店を探して歩くものの、どこも満員の状態。さすが忘年会シーズンだ。

 地元のものを食べさせてくれる店に行ったら、カウンター席が空いていた。この店に来たら、食わねばならぬものは猪鍋である。猪は松本から一番近い山の美ヶ原産である。店にはマスターが狩ってきたときの写真や道具が飾ってある。新鮮なのだ。

 その猪鍋やら鹿刺やらを頼みビールを飲む。猪鍋は一押しの食い物。気に入ってもらったようで何よりだった。猪鍋は僕のおごりで食べてもらい、いつものショットバーへ。もちろん体で払ってもらう。

 極寒の部屋に泊まってもらい、昼前から強制労働に従事させる。車をいじる人の助力のおかげで作業がはかどり、エンジンが車に載った。年内には火が入るかな。

12月18日

 B6エンジンがどうやら車に積み込めるところまで完成した。見かけはちゃんとエンジンの形をしているように見える。今回、問題だったのは同じ場所で2基のエンジンをばらしたため、部品が倍あること。組み忘れた部品があるのかまったく判断できない。

 現在、ヘッドカバーまで付いている。インマニはオイルクーラーの配管を組む関係でまだ外れたまま。ちゃんと載るだろうか。

 問題は、どうやって部屋から外に出すのか。2人ぐらい呼んで力ずくで運ぼうとも考えたのだが、来てもらうのも悪い気がする。エンジンスタンドごと、50センチほど下の地面に降ろす方法を考え中。コンクリートブロックを使えばできる気がする。

 次の土曜が休みだから、積み込もうかな。仕事が入らないことを祈るのみである。

 完成する前に、更新しなきゃ。

12月2日

 早い時間に撃沈したはずなのに、朝10時ぐらいまで、虐殺されたかのごとく、うんともすんとも言わない人間が部屋に転がっていた。みんなでのろのろと起き出して、食器を片付ける。鍋は片付けが楽でよろしい。

 なぜかあったポップコーンの素を炒ってはじけさせる。缶コーヒーを買ってきてもらい、それが朝食。

 廃人状態からなかなか立ち直れない人のNB2を貸してもらえることになった。我がロードスターを不動車にしてから、2週間。そろそろ禁断症状が出てきたので、好意に甘えて3台でドライブに行くことにした。廃人は捨ておく。

 シートに座った感じは、やはり同じロードスター。クラッチを踏んで、セルを回すと、ロータリーエンジンのような起動音。BPはかかりが悪い?

 ギア比が違うのに少しとまどったものの、剛性の違いが感動的。ビルシュタインの足回りは乗り心地がよい。開幌状態でいつもの山道へ行き、いきなりの7500回転。フラットトルクでモーターのように回転が上がっていく。我がB6では、7000回転を超えると、怪しげな音と振動が発生するのだが、排気音も静かで、心地よいノイズである。ヘアピンカーブで、ブレーキを踏むと、踏みごたえがあまりないのに、がん、と利く。軽く踏んでいるのに、我がロードスターなら、フルブレーキぐらいの領域の減速だった。もう少し、ダイレクトな方が好きかな。

 6速ミッションはいつもの山道にぴったり合って、なかなかリズム良く走ることができる。ノーマルタイヤはリアが滑る感じが、よく分かって、あまり緊張しない。ちょっと飛ばすと、ぎゃあぎゃあうるさいぎゅーんとは大違い。

 ああ、楽しいと調子に乗って走っていたら、やはりブレーキには負担が掛かっていたみたい。車を降りると、カチカチという音とともにブレーキが焼けたにおいがした(持ち主の某氏ごめんなさい!)。

 美ヶ原に向かって登る。標高1900mの武石峠の先で、路面が氷結していた。ロードスターだと、スタッドレスタイヤを履いていてもつらい路面。仕方なく引き返した。気温は氷点下だったらしい。

 仲間と別れて、夕方からエンジン製作。バルブリセスを仕上げて、クランクに連結し、オイルポンプ、ウオーターポンプ、リアのオイルシールまで組んだ。オイルパンのパッキンを取る作業に時間を取られる。オイルパンが付いたら、完成も近い。

 気が付いたら、ポップコーン以来、メシを喰らうのを忘れていたのであった。宴の後に残ったバランスアップとポテトチップス、ビールにワインで空腹を紛らわす。

11月28日

 12月1日に新エンジンを積み込もうと思っていたものの、仕事が入ったり、付き合いが入ったりで、不可能となった。せっかく、車好きが集まるのに、絶好なチャンスを一つ見送ることになっちゃった。

 正直言うと、体力も限界。日、月と2日連続のハードな作業後に、午前3時までヘッド組み立て。さらに、翌日仕事で遠出したから、昨日は家に帰るなり、ストーブの前で意識不明となってしまった。昏睡すること2時間ほど。

 急ぎすぎて、致命的なエラーを犯してもつまらない。現在、ヘッドは組み上がった状態だけれど、腰下がクランクを組み付けただけ。1日まで作業は中断になるかな。

 それに、インマニ&スロットルと、オルタネーター、スターターが今手元にない。加工とオーバーホールに出してしまったのだ。

 今の車がそろそろ10年。ちゃんと組み上がれば、あと10年そのまま乗れるな。