1月29日

 メインのコンテンツを地味に更新してみた。表紙を見る限り、内容のある更新は2年ちょっとぶりだ。純正皮シート愛好家の方はぜひ、参考にしてほしい。

 すっかり普及したblog。確かに簡単に更新できて、書き手と読者のコミュニケーション自体がコンテンツになるのは素晴らしいアイデアだと思う。が、なにしろ情報が時系列で並べ立てられていて、毎日チェックしている人なら良いけれど、そうでない場合、「良さそうな情報がありそうだ」と思ったら、ずっとさかのぼって調べていかなければならない。

 日々の動向を伝えるニュースサイトなら、blogでもOK。だって、古いニュースは古新聞と同じぐらいの価値しかないのだから。古いニュースはサイトをキーワードで検索をして、調べれば良い。が、趣味の世界のノウハウだとかハウツーだとかは、時系列だけで整理されてしまうと、自分に役立ちそうな探し出すのに時間が必要になってくる。

 blogのほかにホームページを持っていてコンテンツを整理して見られるようにしてくれれば良いが、そうでない場合が多い。「カテゴリ」などという分類で、日々のblogキーワードに関連づけて書いている人もいるけれど、少数派。

 知っている人の日常雑感なら読んでいて楽しいけれど、顔も見たことがない人がどこへ旅行へ行っただとか、何を食べただとかは、あまり興味がない。そんな興味がない情報の中に突然、興味深い情報が出てくるかもしれないから、目をさらにして無駄な情報に目を通すことになるのだが、もしかすると徒労に終わるかもしれない。検索術を身に付けろ、ということになるかもしれないが、思いつくキーワードに引っかかる情報以外にも有用なものって多いはず。

 個人が情報発信できる、って素晴らしい時代だと思う。どんな仕事をしているのかすら知らない全国の人と、「ロードスター好き」ということだけでつながることができるのだから。が、メーリングリストやホームページ、掲示板、blog、SNSと、流行が変遷していく。以前書いたコンテンツは新しいフォーマットになじまないから、たとえ内容が素晴らしくても、そのまま消えてしまったものもあるかもしれない。

 移り変わりが早くてさまざまなアイデアが駆けめぐるネット上だからこそ、整理と継続がコンテンツの価値を高めていく重要なキーワードのような気がする。

1月27日

 中央市場の魚屋さんから「もさエビ」というエビを大量にもらってきた。

 まったく聞いたことがないエビ。大量のエビが入ったトロ箱をから魚屋さん、1匹取り出して「まあ食べてみろ」。ボイルしてあるから、手でむいてそのまま食べてしまえる。

 エビの頭の殻を外して、みそをちゅっとすする。なかなかこくがあっておいしい。しっぽまでむいて身を食べてみると、上品な甘さと歯ごたえがありとってもうまい。なんでも、鳥取から取り寄せたエビで、日本海側ではいろいろな名前で呼ばれて各地で食べられているのだが、太平洋側ではあまり知られていないのだとか。マニアックなニーズにこたえて、時々取り寄せるのだという。「甘エビの甘みと車エビの食感を併せ持って知る人ぞ知る食材」と魚屋さん。なるほど、その言葉の通りのうまさである。丸ごと1箱をもらって、ほくほく顔で持ち帰る。

 ちょうど、友人が訪ねてくるというので「エビを喰らおうか」と誘う。夜、訪ねてきた友人は、山盛りのエビに驚いた様子。これが市場サイズ。あまりにも大量なエビに、事前準備にも抜かりはない。1人に1つずつ、ガラを入れる「マイボウル」と手を拭く「マイタオル」が配られた。

 そして、食べ方を教えて食べてもらうと、再びサプライズである。こんなうまいエビがあったのか、と。それこそ、ボウルからはみ出るほどのガラの山を築いてもまだ飽きずに食べ続けられる。それでもさすがに満腹になり、食べきることはできなかった。

 余ったエビを仕事場に持って行き、夜勤の後輩に食べさせる。後輩も感動。なぜか、社員でもないのに毎日仕事場にテレビを見に来る80近いおじいさんも、夜は小食のはずなのに、「うみゃぁでいかんゎ」とわしわし食べて言った言葉。「こんなにうまいエビを食べて、わしの寿命も3年は延びたゎ」。食べてもらって本当にうれしくなった。

 山盛りのガラからだしを取ってみそ汁を作ったら、これがまたうまかった。

 ネットで調べてみると、どろエビ、さくらエビ、白エビなどと各地で呼ばれているみたい。もし、居酒屋やスーパーで出会ったら、ぜひ食べてみてほしい。

1月17日

 最近では珍しく出張。新幹線に乗り、京都へ。以前の部署では週に1度以上は新幹線に乗っていたのだが、今は自家用車でぐるぐる近所を走り回る生活。車窓を流れる風景が懐かしい半面、稲沢や一宮の風景は、地上から見て知っている場所が多くなっただけに特別な感慨があった。

 FM京都に行き、応接室を借りて井上堯之さんに会う。グループサウンズのスパイダースのギタリストで、かなりすごい人らしいのだが、僕はその時代を知らないので普通にお話。考えてみると、堺正章や井上順という今の芸能界のトップの人とまぶだちなのだろうから、すごい人なのかも。「太陽にほえろ」のテーマといえば、だれしも頭に思い浮かぶメロディーだと思うが、あの曲を作ったと知ると、かなりすごい人に思える。

 ひたすらギタリストとして音楽を極めてきた人。「制約がなければ自由って言葉も生まれない」「無駄なように見えることが、文化として底力になっていく」「形が残らない文化はだめなわけ。形を残していくことはものすごく大事なことで、スタイルを継続していくことこそが文化」。第一線で活躍し続ける人のお話は、やはり含蓄に満ちていた。

1月14日

 ちょっと強めのブレーキをかけたら、純正油圧計の針が左の方に動いたのでやばい、と思った。オイル消費を放置しすぎて、足りない状態になっていると出る症状である。減速Gで前にオイルが偏り、ストレーナーからオイルが満足に吸えない状態なんだろう。

 レベルゲージを確認すると、案の定、なにも付かない状態だった。そろそろオイル交換をしようかと思っていたのだが、ここまで少なくしてしまうとは不覚であった。全開セッティングを繰り返したためいつもよりも減りが多かったらしい。予備にトランクに積んであったバルボリンの20W50を丸ごと1本分、注ぎ込む。約1リットル入れて、レベルゲージの真ん中より少ししただから、2リットルちょっとしかオイルが入っていなかったんだろう。

 オイルがかなり少なくなっても、けっこうエンジンは普通に回る。一番、やばいときは、巡航中、エンジン負荷が一定のときに油圧計の針がふらふらと2〜4キロの間を行ったり来たりした。そこまで減らしても、焼き付いたことはない。丈夫だぜ、B型エンジン。

 最近は、近くのディスカウントストアで買ったアメリカ直輸入版バルボリンを入れていた。1クオーツ(約0.95リットル)で400円ぐらいだったから。「レーシング」という銘柄は20W50。「オールクライメイト」で10W40。1回のオイル交換で2000円もかからない、このコストパフォーマンス。エンジンにはまったく問題なかったと思う。

 が、最近、バルボリンを値上げしやがった。一気に1.5倍の600円台となってしまう。これではコストパフォーマンスがなくなってしまう。ディスカウントストアを探すと、BPの鉱物油が1900円ぐらい。500円の差となってくるとちょっと考えてしまう。

 筑波を走るならハボリンとか、良いオイルを入れるのだけれど、街乗りだけ。街乗りだけでもぶん回すからちょっと気になるのだけれど、そんなに高いオイルを入れなくたって、そんなに繊細に組んだ覚えのないエンジンにとってはあまり関係ない気がする。

 高くなったバルボリンを入れるか、それより安く手に入る10W40を入れるか。おめでたい悩みはしばらく続く。

1月9日

 突然の事故車写真にびっくりしたかもしれないが、ご安心を。同じVスペシャルだが、2000年3月に豊田市の業者からYahoo!オークションで10万円で買った平成6年式のテンハチシリーズ1の事故車である。

 このときには松本に住んでいて、愛知県尾張旭市の実家のごらんのような駐車スペースに事故車を置いた。僕が実家に住んでいるときは、この場所にロードスターをとめていた。近所の人にとっては、僕が松本に行って以降、しばらく見なかった同じ色のロードスター事故車が突然、出現したわけだから「あそこの家の息子の車が事故った」と思ったことだろう。

 それどころか数ヶ月の間、この車をこの場所に放置したわけだから「事故で死んでしまった息子が忘れられなくて、せめて車だけでも捨てずに置いているんだわ。かわいそうに」と周囲に住むマダムたちの勝手な妄想をふくらませてしまったに違いない。近所の人には迷惑をかけたが、テンハチのブレーキとトルセンデフが欲しくて落札した。手元にはそれ以外にも左フェンダーとかドア、バンパーなどなど、さまざまな部品が残ったから、輸送代として取られた2万円を足して12万円の価値はあったと思う。なによりも、解体の過程を通じて車いじりについてかなりの知識を得ることができた。

 ちなみに、解体した部品をオークションで売って荒稼ぎをした。テンハチから標準装備になった座席後ろのブレースバーが1万円、内装部品4点も1万円、タワーバーが5千円で売れたのである。今から6年前ということもあって、かなり高値で買われていった。ミッションはまだ、実家の車庫に転がっている。ミッションはテンロクの現在のものでも、21万キロを走破した現在、まったく問題なく機能してるので、あと20万キロぐらいは、ミッションの心配はしなくてよさそうである。

 で、このBPエンジンが、現在なんと、この世界では有名なFireRoadsterのFire号に載っているのである。現在、500万アクセス直前なのに「100万アクセス突破記念」のプレゼント企画をしている。その中で出ているBPエンジンのノーマルピストン
がこのエンジンの中身である。まだ締め切られていないようなので、FireRoadsterとガレージ雅ファンというコアなマニアの方はぜひ応募を(笑)。

FireRoadster

1月3日

 29日から5連休、自宅に引きこもって飲んだくれてなにもせずに過ごし、今日が初仕事。ロードスターのセッティング以外、なにもしなかった。見事な寝正月。

 初仕事とはいえ、社会が動いていなければこちらの仕事もほとんどない。なので計10分ぐらい仕事をして、今日の仕事終わり。一応夜勤だったが、尾張の北地域はまだまだ正月モードらしく、なんの事件も起こらなかったので、仕事場ですごして終了。

 ことしの年賀状で驚いたこと一つ。3通の年賀状に、僕が撮った写真が使われていた。どれもそんなたいした写真じゃないのだけれど、それぞれの人の人生にちょっとでも近づけたのかな、と思うとけっこううれしい。

12月31日

 一年の終わりの日に、原因不明のエンジンストールを直そうと、Freedomをいじっていた。

 しばらく前に、全壊全開追い越し中に崩壊してポートに吸い込み、大変なことになったエアクリーナー。ファンネルソックス、と言って、4連スロットルの吸い口に一つずつかぶせるスポンジである。接着剤で形にしてあるので、何度も熱が加わって劣化して、ふたに当たる部分が外れてすぽん、と吸い込んじゃったのである。エンジンブローしたと思ったのだが、幸い、ポートに吸い込まれたスポンジを取り出したら元に戻った。

全壊

 エアクリーナーが崩壊したのが8月だから、5カ月間、ファンネルむき出しで走っていた。シリンダー内と大気がダイレクトに結ばれている状態は、とってもレーシーで音も良く、なんとなく速い気がするのだが、所詮、街乗りしかしない車である。いつまでもむき出しはエンジンに悪いので、マルハモータースに注文する。

 せっかくオーダーを入れるのだから、ファンネルソックスだけじゃ、もったいない。排気ガスが強烈に臭いのは、オーバーラップのせいだけじゃないだろう、と思い、ついでにスポーツ触媒もオーダー。なんと、ちょうどセール期間中だったので、ブレーキパッドも注文。さらに、次のブッシュ交換に備えて、トーコンキャンセルブッシュも頼む。

 結局、なにが主役だか分からない注文をして、どっさりと届いた部品の中から、触媒とファンネルソックスを取り付けた。新品のメタル触媒はすばらしい効果を発揮し、エンジンを始動すると普通の車みたいに水蒸気がばしゅばしゅと吹き出される。吹き出される排気ガスの圧力も増した。

 4連スロットルにハイカムの車なのだから、すごいマフラーを付けているに違いない、と思われるかもしれないが、なんとNA6CEのノーマルマフラーなのである。エンジンを組んだ当初はRSファクトリーSTAGEの2寸管だったのだが、ノーマルエンジンだとジェントルなこのマフラーも、僕のエンジンとのマッチングでは、相当な音量だったから、しばらく前にノーマルに戻した。せっかくのチューニングエンジンも、使い古した触媒とノーマルマフラーで性能にふたをしていた感じだったのである。

 においはやっぱり臭いが、前ほどじゃない。かなり満足度が高い。

 ファンネルソックスを取り付ける前に、4連スロットルにスロットルの口径を絞るカラーを取り付けた。どうも、AE101のスロットルは口径がでかすぎる気が常々していたから。以前も取り付けていたのだが、スロットルの壁面に段差ができるのがいやで外していた。

以前も取り付けていた

 それでも、低回転でアクセルを踏み込んだときのトルクの抜け方がいやだったので、ついでで取り付ける。やはり段差が気になったので、電気ドリルに刃物と砥石で角をとってみた。スロットルにはめてみると、それだけでファンネルっぽい。

 吸気ポートからの吹き返しでスロットルは真っ黒に汚れているので、キャブクリーナーで洗浄する。ファンネルソックスを取り付けて完成。

 スポーツ触媒の効果は絶大で、全体的にトルクの厚みがました。7000回転以上はノーマルマフラーなのでいまいちだが、普段使う回転域ではすばらしいトルクが出ている。やはり、純正触媒がふたをしていたのは間違いない。

 カラーが効いたのか、3000回転付近のトルクも増し、かなり乗りやすい車になった。低回転で踏み込んだときのネガティブ面もかなり薄れた。

 で、ながながと前振りを書いたが、一連の作業後、なぜかアイドリングでだんだんと空燃比が薄くなっていき、エンジンストールしてしまう。アイドリング以外では絶好調な回り方をしているのに。

 で、原因をあれこれ調べてみる。最初、ファンネルをはずしたときに、スロットル回りの配管でも外れたのかな、と思ったが、きちんとしている。おかしい。次に、Freedomのリセット。副作用で、この半年分のセットデータが消えてしまうという被害を出してしまったのに、直らない。なぜだ。

 アイドリング時におかしくなるのだから、アイドル回りのセッティングデータがおかしいに違いないといろいろ調べてみるが、おかしなところはない。

 ISCVかしら、と思い、ISCVをハンマーでたたいてみた。直らない。ベースカウントを手動で変えてみると、ちゃんとアイドリング回転数が変化する。いちおう、ちゃんと動いてみるみたい。

 もう、お手上げ、と思ったのだが、ふと、アイドル回転数が高いときには問題ないことに気がつく。ためしに、ISCVのフィードバックを切ってから、手動で数字を変えてみる。すると、カウント値が60以上だと調子よくアイドリングするのに、カウント値が60以下になると、空燃比がどんどん薄くなってストールすることがわかった。

 原因がよくわからないが、キャブクリーナーで清掃してスロットル周りについたカーボンがなくなり、その分、隙間から空気が入るようになるので、フィードバック制御されているISCVは閉じる。たぶん70〜80ぐらいだったカウント値が30〜40ぐらいになってしまった。これまではカウント値が下がることもなく、問題が出なかったのに、キャブクリーナーで洗浄したために顕在化したトラブル。

 とにかく60以上であればOKなので、回転数のフィードバックを切って手動で60以上の値を入力する。とりあえず、不具合は出なくなったが、アイドリングが1200回転。まあ、良いか。

 大晦日にこんな作業。そして、今は独りで年越し。なんだ、この状況は。

12月27日

 どうも、「ガラスの喉」らしく、毎年、喉に違和感を感じて「まずいな」と思うと翌日には腫れて発熱してしまう。うがいをこまめにすれば予防できるんだろうけれど、毎年、一度は喉から来る風邪でしばらくぐったりする羽目に。「あなた喉弱いねー」と、かかりつけの医者がカルテを一読して声を上げた。

 決してノロウイルスではない。

 ノロウイルスが猛威を振るっている。聞き慣れないウイルスで「過去最高の流行」というニュースを聞くと「また新しい感染症が増えたのか」とでも思ってしまうが、そうじゃない。昔から「胃腸かぜ」「感染性胃腸炎」「食中毒」などと呼ばれていた病気の原因が特定できるようになっただけの話である。

 ノロウイルスと統一して呼ばれるようになったのも、ここ3、4年の話で、その前は電子顕微鏡で見たそのまんまの「小型球形ウイルス(SRSV)」などと呼ばれていた。ヒトの腸管でのみ増殖するという律儀な性質を持つので、ほかの食中毒のように原因となるウイルスを増殖させて診断することができない。だから、研究が遅れていたという。最近は、簡単な検査キットができたので、ノロウイルスが原因と特定ができるようになった。

 インフルエンザと同じで、ひどい症状がでるものの、死に至ることはまれで亡くなるとしても高齢者が主。ウイルスにとっても、宿主が死んじゃったら自分の死を意味するので、そこまでは攻撃しないのだ。タミフルという特効薬があるインフルエンザとは違い、治療法が確立していない。

 ヒトの腸管でしか増殖できないなら、排泄されてしまったら終わりな気がするが、下水から河川に流れて海に到達し、二枚貝に取り込まれて再びヒトに取り込まれるというサイクル。が、今年の流行は牡蠣が原因ではなく、ヒトからヒトへの伝染が主らしい。

 だが、流行のあおりを受けて牡蠣の価格が暴落してしまい、生産者が困っているらしい。せっかくの冬の味覚なのだから、安いときに存分楽しんでしまえ、と思うのは僕だけだろうか。「やはり心配でおいしく味わえない」というなら、85℃以上1分以上の加熱で感染性を失うということなので、生食は避けて牡蠣フライや鍋なんかで楽しむのが良い。生食は1つ2つでおなかいっぱい。わしわしと大量に食べるなら、フライや鍋だ。

12月19日

 江南に来てから一年半あまり、前の仕事場で東京や九州、北海道へ足を運んでいたのとは対照的に、担当となったエリアに閉じこもった仕事ばかり。たまには外に出た仕事もしたい。

 そんなストレスを発散させるために、あえて県外に出る仕事をつくった。北名古屋の若い元気な酒屋さんと一緒に、三重県の造り酒屋さんへ出かけたのである。そこで飲んだこともない日本酒を味わった。

 年に一回、税務署主催のお酒の品評会がある。今の時期、日本酒は日本酒米とこうじをまぜて1カ月ちょっと熟成させた「もろみ」をしぼる作業が進められている。市場に出すためにはある程度の量を造る必要があり、量のためには機械を駆使する。米のかすと日本酒を分離するために、オイルフィルターにオイルを通すがごとく、1000リットルもあるようなもろみを幅10メートルもあるような圧搾機で絞るのである。巨大ジャッキでぎゅーっと力を加える。

 今日、試飲した酒は違う。大きな木綿の布にもろみをどろりといれ、自然に濾されてくる酒を一斗瓶で受ける。もちろん、最初に濾されてくる酒と1時間後に濾されているお酒はまったく違う。いろいろなお酒ができるなかで、一番良いのを品評会に出品するのである。とはいえ、一つの蔵元で一升瓶4、50本売りに出せるかどうかのお酒。

 一緒に行った酒屋さんは、そういった品評会向けに造ったお酒を買い付けてくる。もちろん、信用がなければ買うことはできない。足を運んでどんな人物かを蔵元が知っているからこそ、譲ってもらえるお酒。酒屋さんでは1本1升を1万円で売っているが、こだわり抜いたお酒だから、値段は付けられないのである。蔵元は、いい加減なところにこのお酒を出したら「このお酒がかわいそう」といった。別に売りたければ2、3万で売っても良いのである。要するに、今市場に出しているお酒との関係があるので、特別に造ったお酒の値段を決めることができないだけなのである。

 それほど、思いが込められたお酒を試飲させてもらうと、まったくすっきりと雑味のない口当たりでふわーっと日本酒の香りが鼻に抜けるさわやかな味がするのだが、そのさわやかさを楽しんでいる間に日本酒の香りがすっと消えていくのである。なので、まったく後味が残らない。こんな日本酒、初めて飲んだ。

 「15本ください」と酒屋さんは言った。売値で15万円。このランクの酒を15本、短期間に売れる酒屋っていないんだって。

 うまいビジネスを考える人間がいるもんだ(もちろん、品評会のお酒を売ることだけがこの人のビジネスではない)と感心しつつ、蔵元から近くにある温泉につかり、命の洗濯をした僕なのであった。余暇の間に仕事をする。この余裕こそ、いい仕事を生むと信じている(嘘八百)。

12月17日

 連日選挙ばかり。一宮市長になりたい人の顔を朝からみることに。朝から脂ぎったおじさん、おばさんばかりを見るのだから、いやになる。

 朝一番に出陣式を開いた候補のところに行ったので、あとの3人の候補の出陣式も回る。朝一番に一銭の得にもならない集まりに顔を出す物好きな人はいない。もちろん、寂しい出陣式だとさい先が悪いので、動員をかける。何人人を呼べるのか、ということはいくつ票が取れるのかということに直結するので、出陣式の雰囲気を見れば、どの候補が勝つのかがだいたい見えてくる。

 最初に行った候補は150人ぐらい。現職市長は500人ぐらいか。合併で吸収された市の元市長は250人ぐらい。最後は50人ぐらい。

 選挙人名簿登録者数は30万人弱だが計算を簡単にするために30万として、投票率がぐっと低く40%と計算すると、全部で12万票。出陣式の人数の比率で計算すると、トップは6万3千、2位は3万1千5百、3位は1万9千、ビリは6千3百という結果となる。

 もちろん、実際の選挙の結果がこんな数字になるわけではないが、いろいろな情報を総合すると、こんなもんかもしれない。