12月28日

 掲示板で知り合った人の家に行き、餅つき大会に参加した。いや、行ったら餅つきが終わっていたので、餅つきに参加したのではなく、餅喰いに参加したのである。初めて会ったばかりなのに厚かましくも家に上げてもらい、ばくばくと遠慮なくいただいた。初めて会ったばかりの人を使って、エンジンを積み込んだりしている僕であるので、これぐらいの厚かましさでは驚くに値しない。

 エンジンしか使えそうもない事故車と、エンジンがいかれてしまった不動車が2台あり、当然のごとく載せ替えをする予定だそう。餅を喰らいながら、車談義に花を咲かせ、話はエンジン積み替えの話に。

 「ぜひ手伝ってくださいよ」

 僕:「いや、エンジン積み替えなんて簡単だから、一人でできますよ!」

 「何のために餅を食べさせていると思っているんですかー。逃げられませんよ」

 僕:「……。」

 そういうことだったのか!

12月26日

 昨日は朝市、今日は市場に行かねばならなかったので2日連続の早起き。この時期、午前6時はまったくの暗闇であることを知る。始発バスの時間を10分間違えて、とっても寒い中、震えながら立ちつくした。

 早起きだったので、帰りぐらい早くしようと7時に会社を出る。帰り道、雪がちらついていた。どうりで寒いわけだ。

 本屋でRoad&Sterの33号を購入。相変わらず、間違いだらけの誌面である。NA8Cエンジンの圧縮比は9.0であり、決して10.5ではない。NB2エンジンの圧縮比は10.5であり、11ではない。素人にすら分かってしまう間違いを書き、間違うのは人間なら誰でもあることでいいのだが、訂正すらしないメディアはいかがなものか。「BPエンジンを考える」という企画が1号あけて載っていたが、何も考えることなく、ただオーバーホールの場面の写真を羅列しただけのなんの新鮮味もない記事であった。ラッシュと表現されたラッシュアジャスター、HLAについて、「ノーマルのまま組み込んだ」とあるが、どうみてもラッシュロックが付いているような気がするのは気のせいか。HLAを油圧プレスで組むことはまずないと思うのだが。

 と、間違いだらけなのであるが、何も言うまい。ロードスターの専門誌が、この期に及んでまだ発行され続けているだけでそれは貴重なことである。とっても良いパーツを供給しているショップの方々が記事で紹介されている。玉石混淆、中には「玉」な情報もある。まあ、「石」の情報が多いのだが、それはほかのメディアにも言えること。

 重要なのは、垂れ流された情報について、それが玉なのか石なのかを見分ける「目」である。素人が書いたこんな日記から、まず疑うべきなのだ。

12月25日

 なぜか、知多半島にある半田市に行って、朝市の写真を撮ってきた。公民館の敷地を利用して、野菜や花、魚介類、衣料品を売る人たちがずらりと並んで、なかなか良い雰囲気。年の瀬であるので、しめ飾りも売っていた。スーパーに並んでいるような規格品ではなく、曲がったキュウリや不揃いの長さの大根、ちょいと葉がしわくちゃになった白菜などなど、見栄えが良くないだけに、味は良さそうな野菜がずらりと並ぶ。「おまけ」や「値切り」ができる昔は当たり前にあった買い物の風景がそこにはあった。

 半田市は昭和4年から朝市が開かれているらしい。3と8の付く日に市を開く、「3・8(さんぱち)朝市」が最初で、今日行ったのは「5・10(ごじゅう)朝市」。1・6やら2・7やら4・9もあるから、毎日どこかで朝市をやっていることになる。なかなか良い文化だ。

 朝市であるからには、日が高く昇ってからでは良い写真にならないわけで、当然早く出発する必要がある。7時前に出発して8時すぎに到着した。

 いちおうこれも仕事である。せっかく早起きしたのだから、海岸線をドライブしようと師崎に向かう。

 朝から曇っていたのだが、師崎をすぎた辺りから、晴れてきた。海岸線を走っていると、南知多町あたりで、驚くべきものを目にした。廃車が並べておいてある中に、ある小さなスポーツカーが。なんと、トヨタスポーツ800だ! あのヨタ8が、なんかゴミ同然に置いてあるんですが…。いらないなら、ください。

 それでも、海に面した場所に放置してあるのだから、潮風でいろいろなところがぼろぼろに腐食しているのは間違いなさそう。ああ、もったいない。

 どうも、スロポジのアイドル信号が出ていないようなので、途中の公園に車を止めて、スロポジのチェック。配線には問題ないみたいだから、スロポジの取り付け位置が悪いのだろう、と2本あるうちの片方のねじをモンキレンチでゆるめて、プラハンでたたいて位置をずらした。すると、アイドル信号は問題なくなったが、少し動かしすぎたらしく、アクセルを踏むか踏まないかの領域で、ぎくしゃくするようになってしまった。要改善。

 改めて言う必要もないが、すべて勤務時間(とされる)内の出来事である。

12月24日

 年内には金曜日に東京に行く以外は、すでに仕事らしい仕事がない、というか年内に仕事らしい仕事をするつもりがないので、かなり余裕たっぷりに過ごしている。だから、Freedomネタ更新2連発目! ネタの大盤振る舞いなのだが、今日、更新作業をしていて気が付いたことが一つ。

 クリスマスイブ、じゃねえか…。

 車野郎、すなわち、「Car is my life!」というか「Car is my wife!」と言い切ってしまえるぐらい危ない領域に達してしまった、「ヲタク」青年、すなわちギャルギャルにまったくもてない代表格の男である僕が、いくらクリスマスイブのことに対し、「キリスト教信者でもないのにクリスマスを祝うなんて、ただ商業主義に踊らされているだけじゃねえか。けっ」とすこぶる正しく吐き捨てようが、やはり、世の中のアベック(死語?)は一緒に過ごしていて温かい気持ちになっている厳然たる事実が存在するのである。いくら僕がクリスマスを祝って除夜の鐘を突いて、初詣に行くような3つの宗教を渡り歩く節操のない国民性を攻撃する、まったくの「正論」を吐こうが、世の中はそんなことにお構いなく、ハッピーであって、吐いた正論はただのひがみであって、ジェラシーであると断罪されるのがオチだから、やはり僕はただのロンリーな車野郎なのかもしれない。

 そんな聖なる日らしい今日は、まじめに仕事をしているのも馬鹿らしいので、がしがしっとFreedomの配線についてくどくどとどうでも良いことを書いて過ごした。去年のクリスマスイブにも同じように更新しているから、去年も同じ心持ちであったのだろう。

 夜になって、こんな些細な話はどうでもよく、ぶっ飛んでしまう出来事があったことを知った。それは、お世話になりっぱなしの富山の車屋さん夫妻の子どもが生まれたことである。

 一気にハッピーな気分になった。

12月23日

 起きたら正午前。このまま2日間、まったくなにもせずに過ごしてしまうのもよいかもしれないな、と、ふと思ったのだが、どうも僕にはそれを許してくれない、悪い虫がすんでいるらしい。悪い虫がうずいたのである。走りたい。

 さっと朝昼兼用のカレーライスを喰らい、スタッドレスタイヤを15インチのネオバに付け替える。電動インパクトレンチを駆使すれば、15分で交換終了だ。起きてから40分ほどでタイヤ交換までして出かけたのだから、その慌てぶりが分かると思う。

 ヘルメットを積んで出発する。東名阪をひた走り、亀山で降りる。たどり着いた先はここだ! ぶっ飛ばしていけば、1時間ちょっとでたどり着くことが判明した。

ここ

 コース上では、ドリフターズがタイヤのスキール音を響かせて、躍り回っていた。多くの車はパワースライドでぐちゃぐちゃやっているだけであった。中には、スピードが乗ったまま恐ろしい勢いでコーナーに突っ込んでいく車もあったけれど。公認でドリフトができるサーキットはそれはそれで楽しいが、その後に走るものとしては冷や冷やするだけである。コース脇を耕して、土をまき散らしてくれるから。

 3時から走れるかを聞いたら、まだ余裕があるとのこと。5000円と計測器代1000円を払って、エントリーする。同じ時間枠でエントリーしていたのは、同じロードスターにFD、S2000と、スターレットターボ、パルサーターボであった。

 初めてであるので、コースの説明と旗の説明を受けて、いよいよ緊張のコースインである。やっぱり、初めて走るコースは緊張する。

 コースはこんな感じ。100mと書いてあるところがピットである。線が引いてある場所がタイムを計測する場所。コースインするのは、この線の少し先になる。

コース

 タイヤを温めるため、最初はゆっくりと走る。コースの下見をする。120mと書いてあるところがホームストレートに当たるのか。ぐるりと外周を回って、150mと書いてあるバックストレート?に入り、内側のセクションに入る。15Rが二つ書いてあるところはかなり狭い道。

 とりあえず10Rというところを立ち上がると、計測ラインをまたぐので、1速にたたき込んで思いっきり加速する。

 短い100mストレートを加速し、2速に入れるとすぐに10Rのヘアピンである。そういえば、ブレーキパッドをプロジェクトμのHCに変えてから1発めのフルブレーキであった。気が付いたのは、簡単にロックしてしまったから。「ギョキョ」とタイヤがなるも、コントロールがしやすいので、難なくロックを解除が可能。制動力の立ち上がり方がこれまでのパッドから比べると抜群に良い。さらに、踏み込んだ後のコントロールの幅もある。なんだか新鮮な感じのするパッドである。高くなければ文句がないのだが。

 ヘアピンを抜けて、見た目ではかなり長く見える120mのストレートを加速しようとアクセルを踏み込み、あることに気が付く。かなりの上り勾配が付いているのである。これは非力なロードスターにとってはつらい。30Rはゆるやかなので、加速態勢を維持できる。2速が吹けきるかどうかのところで、ブレーキング。その後の2つの20Rは1つの高速コーナーのようなものである。アクセルコントロールで車を曲げていくのが楽しいコーナー。広いから、多少リアが流れても怖くない。一番気に入った。

 高速コーナーのスピードの乗り方で、その後の200mストレートのスピードの乗り方が変わってくる。シフトアップポイントが明らかに違ってくるから、高速コーナーでいかにアクセルを踏むかが最高速の出方を左右する。ちなみに、少し下っているストレート。コース図では最後のところで曲がって書いてあるが、そのまままっすぐ走るだけである。3速に入れて少し加速すると、ブレーキングポイントとなる。

 ヘアピンを抜け、150mのストレート。ここもなんと上り坂である。非力なB6ではとってもつらい。2速がなかなか吹け上がっていかない。とってもいらいらするが、3速に入れることもなく、内側のセクションに突入する。

 150mのストレートから一度右に折れて、さらに深く曲がった後に15Rが立ちふさがる格好。ドリフターズにとってはスピードも乗っているから格好の見せ場となる。最初の軽く右に曲がったところを抜けた辺りでブレーキングし、次のコーナーでよいしょと車を右に曲げる。これで終わったと思ったら、さらに15Rが待ちかまえている、というちょっと意地の悪いレイアウトになっているので、最初はどうしても突っ込みすぎてしまう。最初はストレートの延長のような形で進入してきて、右15Rの前にもう一度、ブレーキングをやり直す形になってしまう。

 そして、ようやく15Rを曲げたと思ったら、次にきつい左15Rがやって来る。またかよ、と思ってようやく曲げたと思ったら、極めつけの右10Rがやって来るという形で、あまり気持ちよく走れない。いくらライン取りを気を付けてスピードを乗せていこうと努力しても、最後に右10Rがあるから、それなりの速度で進入するしかない。最後の10Rは結局ストップアンドゴーに近くなってしまうから、なんだか、努力が報われないレイアウトである。気持ちよく走るには、ドリフターズのように最初の15Rからリアを流しっぱなしでスライドコントロールしながら各コーナーを曲がっていくしかない。

 10Rで立ち上がって1周が終わる。

 のろのろ走っているうちに、後ろからFDがやってきた。仕方がないから150mストレートで先に行かせてあげる、、と考えている間にものすごい勢いでぶち抜いていった。ターボパワーがうらやましい。

 それでも、ブレーキング勝負で、最初の15Rでぴったりと追いつくことができた。少々突っ込みすぎたので、じわりと間隔が開いたものの、左の15Rの出口では再びぴったりと、10Rの進入ではきもち、早めにブレーキを掛けるぐらい。けっこう追いつけるものだな、と思ったら、100mストレートで暴力的な加速であっという間に遠い存在になってしまった。いくら次のブレーキングで勝負しても、追いつかない。上り坂もなんのその、ぐいぐいと車間が開いていき、あっという間に遠くにいってしまった。内側だけだったら勝負になるのに。

 2人乗りのスターレットターボにも軽くぶち抜かれてしまった。かなりの屈辱である。それでも、仕方がない。馬力差だけは、いくらストレートでがんばっても意味がない。

 クールダウンしていたら、白いロードスターに抜かれたので、「パワーで勝っているのはお前しかいないよ」と、不埒なことを考えながら、ぴったり付いていき、120mストレートで勝負をかけたら、まったくの互角な加速。2速8000回転まで回しても、まったく同じ車間距離。仕方なく、体をぶんぶんと前後に振って車を押し出そうとしても、まったく同じ車間距離。こっちはファイナルが4.1になっているから、多少は馬力が出ているのかもしれないが、本当に付かず離れずの加速しかしない。それどころか、なぜか走っていたプジョーの206とまったく同じ加速である。さすがにコーナーでは相手にならないが、荷物も積める車と同じ加速ってどういうことよ。

 なんと言っても、スピードが乗る2カ所のストレートのはじめが上り坂であることが、NA6CEにとってはつらいかも。S2000にも追いつけなかった。プジョーを除き、走っている車のなかで一番遅かったのではないだろうか。車と腕がどちらとも悪ければ、何ともならないのは道理なんだけれどサ。これほどまでに情けない思いをしたのも久しぶりかもしれない。

 50分間の走行で5000円だから、かなりがんばって走った。これまでも頭を悩ませてきた水温は、こんな季節になってもまだ僕の頭を悩ませ、3周全開で走ると簡単に105度を超えてくる。1周クールダウンを入れれば95度まで下がって再び3周走れるのだが、これはもうラジエーターを交換した方が良いかもしれない。というか、することに決定。

 結局、50分間で42周も走った中で、ベストラップは9周目である。初めて走って9周目のタイムが一番良いなんて納得いかない。走りは絶対にこれに近いタイムが出ている最後の数周が良いに決まっているのだが、エンジンやタイヤがたれてしまって何ともならない。完全にエンジンを止めて冷やさないと、HLAのたれって直らない気がする。やはり、のんびり車を休められる富山の我がホームコースの方が良いかも。

 先日、富山勢が出したタイムを考えると、ちょいと遅すぎるかも。成績表を見て、やっぱり遅かったことを確認、絶句した。

追記

追記

 翌朝、たまたま通りかかったプジョー206を見たら、昨日走っていた車と違うことに気が付いた。あまりしげしげとは見ていなかったので勘違いしていた。そういえば、濃い赤だったので、アルファロメオかしらん、と思いWebで調べるとどんぴしゃ。アルファ147でした。こいつは2リットル150馬力の強力エンジンを積んでいるから、同じ加速になるわけだ。ちなみに車重は1300キロ近くあるみたい。

 翌朝、たまたま通りかかったプジョー206を見たら、昨日走っていた車と違うことに気が付いた。あまりしげしげとは見ていなかったので勘違いしていた。そういえば、濃い赤だったので、アルファロメオかしらん、と思いWebで調べるとどんぴしゃ。アルファ147でした。こいつは2リットル150馬力の強力エンジンを積んでいるから、同じ加速になるわけだ。ちなみに車重は1300キロ近くあるみたい。

12月21日

 外が暗いのでまだ早朝だろうと思って、再び寝直した。次に起きるとまだ暗いので再び寝直した。さらに次に起きてもまだ暗いので寝直そうと思ったが、やっぱりおかしいので腕時計を見てみると、正午を回っている。天気が悪くて外が暗いだけであったのだ。やらねばならない仕事があるのに、思いっきり寝坊をしてしまったぜ。

 起き出すと、ちょうど親父が味噌煮込みうどんを完成させてにこにこしているところだったので、それを奪って朝ご飯とした。地域色豊かな朝食である。

 のろのろと支度をして、出かけたのが2時前ぐらい。「重役出勤」という言葉があるが、夕方近くの出勤には当てはまらないような気がする。フレックスタイムというか、いつからいつまでが仕事なのかよく分からないから、どうでもいいのだ。

 雨が降っているのに歩いてバス停に行くのがおっくうだったのでロードスターに乗り込む。寒くなってから始動が困難になっていたが、いろいろいじっているうちに1発でかかるようになった。水温補正、始動後増量補正、始動時噴射時間などなど、いろいろいじってみたのだけれど、結局燃料噴射マップがおかしかったらしい。

 会社へは、出来町通りと呼ばれる国道363号1本で行くことができる。この道、「バスレーン」というバス優先車線があり、さすがに朝と夕方の専用時間帯には走ることは遠慮しているのだが、それ以外の時間帯はこの車線をいかに有効に使って走るかが、通勤時間短縮のカギを握っている。

 おっかない走りの代名詞である「名古屋走り」が炸裂する道であり、ナゴヤバシリ初心者にはお勧めしない道なのだが、僕はナゴヤバシリマスターであるから、遠慮なく走らせてもらう。名古屋走りとは、信号が青になる前からずるずると発進し出したり、きわどい車線変更を駆使して1台でも前に走ろうという、「こすい」走り方である。(こすい=ずるいの意)。

 今現在、年末の名古屋名物である「名古屋おこし」(年末に予算消化に迫られた行政が実施する道路工事)の最中であるから、必要なのか分からない工事のために、バスレーンがなくなっている区間もある。走るたびに道路の形状が変わっており、いかに工事区間を予測して、車線をジグザクと変えるかが、通勤時間短縮の肝だ。

 車線を強引に変えて、前が開けたらフル加速をしつつ、順調に走っていたら、信号ダッシュをしてきたパワー任せの下品な赤いFD・RX7にぶち抜かれた。何が気に入らないかと言えば、斜め出ししたデュアルマフラーである。こいつは許せない。

 ぶち抜かれて腹が立ったので、追いつこうと思っても、車が多い道路であるからなかなか思うようにはいかない。ところが、この前まで工事していて通れなかったはずのバスレーンが復活していて走れるようになっていた。瞬く間に車線変更し、バッヒューンとバスレーンを駆け抜けると、次の信号待ちでFDと並ぶことができたのである。

 さきほどのFDの走り方を見れば、信号が青になったのと同時にフル加速し、バスレーン、すなわち僕の走っている前に割り込んでくることは明白である。これだけは、阻止しなければならない。理屈ではなく、ただ阻止しなければならんのである。

 4000回転ぐらいをキープし、信号が青になった瞬間に、クラッチミート。フル加速する。実は、スタッドレスタイヤである。一気にクラッチをつなげばホイルスピンするに決まっているから、クラッチさばきに気を遣いつつ、フル加速。予測通りFDはかなり凶暴な加速をしてきたものの、フルスロットルではないらしく、互角の加速である。

 互角の加速が続き、こちらは2速8000回転までぶん回す。さすがに雨の日であるから、そんな無謀な加速に追いつこうとは思わなかったらしく、FDはアクセルをゆるめ、僕の後ろに付いた。一般道での加速勝負はチキンレースのような趣がある。

 こんなことばかり、やっていたら、せっかく新調したスタッドレスもあっという間になくなっちゃいそうである。

12月20日

 昨日、木曜日は、早朝に市場に行く日である。朝4時半に起きて、日比野にある市場に向かう。寒くなっても、早朝の市場は相変わらず活気にあふれ、デンジャラスなフォークリフトや軽トラックがびゅんびゅんと行き交う。自分の周りの360度に気を配っていないと、ひき殺される。

 5時半すぎに市場に着くと、競りが繰り広げられていた。セリ人が聞き取りにくい意味不明の低い声を上げると、仲買人が競って札のようなものを魚が入れられたトロ箱に放り込んでいた。はたから見ても、どうやって値が付いているのか、見当がつかない。

 養殖ブリを見せてもらった。4キロほどのもの。スーパーで出回っているブリはだいたいが養殖物だという。

 それに比べて、天然ブリは8キロぐらいと大きい。一番高級なものは、富山・氷見で水揚げされたもので、ご丁寧に青色のトロ箱に入れられて、その存在をアピールしている。「ブリ一本、米一俵」というぐらいだから、数万円の値が付く代物である。でも、値が張りすぎて、買い手がないらしい。不景気であることを感じる。

 魚売りのお兄さん曰く、今年のブリの形が気に入らないらしい。例年なら、ブリをトロ箱に押し込んだとき、おなかと背中がトロ箱に隙間なく、ぴっちりとはまりこむらしいのだが、今年のものは、隙間ができている。「海水温度の上昇で、生態系に変化が起きているのでは」というのが、お兄さんの不安だ。いくら今年は、冬が早く訪れたからと言って、やはり海水温度は高く、温暖化傾向なのだ。

 市場のおじさんとともに市場の食堂で朝飯を喰らった。おじさんが気を利かして、ヒラマサの刺し身を持ってきてくれていた。さらに山盛りの刺し身を、ばくばくと遠慮なく喰らったのだから贅沢な話だ。ヒラマサはブリ系の魚で、ぎとぎとの脂が乗っているのだが、天然ものだからか、大量に食べても脂がくどくなかった。

 4時半に起きたのだから、夕方になれば眠くなる。パソコンに向かって、仕事をしているふりをしながら、ディープに寝ていたら、頭を思いっきり殴られた。

12月18日

 昨日のこと。松本に行く仕事が出来たので、仕事が終わったらすぐに向かえるようにロードスターで出勤。とりあえず、松本に行くならタイヤは交換しなくてはならないから、出勤前にさくっと交換した。なんだかタイヤ交換ばかりしている。正午頃、ジーパンに革ジャンな格好で、堂々と出勤。だれも、なにも言う人はいない。いかれた仕事場だ。

 友人がホテルマンをしている松本駅前のビジネスホテルに予約を入れ、チェックインしたのが9時ごろ。それから飲みへと繰り出し、もちろん懐かしのショットバーに顔を出し、部屋に入ったのが午前3時。起きたら午前10時前であった。

 ロードスターで安曇野をぐるぐる回る。すっかり雪化粧した常念岳が美しい。山の位置を見ると自分がだいたいどこら辺にいるか分かる。山を見ながらの生活が懐かしい。

 仕事を終え、スタッドレスタイヤの威力を確かめようと、美ヶ原林道を上ってゆく。雪の降らない松本では珍しく、この早い時期にかなりの量の雪が降ったのだが、ここ2、3日の暖かさと雨で街中の雪はほとんど溶けてなくなっていた。林道でも雨が降ったらしく、かなり上まで行って、ようやく雪道になった。それでも、雨が降った後に凍ったらしく、氷結に近いシャーベット状の路面であった。

 先代のスタッドレスであるミシュランのタイヤであれば、すぐに前に進まなくなって止まってしまうような急坂でも、新品のヨコハマ・アイスガードはぐいぐいとグリップして車を前に進めてくれる。ブレーキでロックさせてみても、かなりの効き具合を発揮し、すみやかに止まる。さすがに、ある程度勾配のある場所での坂道発進はきついと思うけれど、素晴らしい効き具合である。比較対照が、もともとドライ路面重視のスタッドレスを4シーズン使ったタイヤだから、あまり参考にならないけれど。どんなスタッドレスを付けても新品であれば、グリップ力向上に感動したはずである。

 路面にわだちがあり、それが凍りかけているので、滑って遊ぶようなことはできなかった。武石峠の近くまで上っていったのだが、路面の雪が深くなってきたため断念した。ロードスターでは亀の子になってしまうから。がりがりに凍った雪では一度スタックすると、タイヤが凹凸にはまりこんだ形になってしまい、なかなか抜け出すことができない。

 すごすごとバックで引き返したのだが、狭い場所で強引に転回しようとしたら、やはりスタックした。ハンドルを左右に切りまくり、ギアを前進とバックにがちゃがちゃ入れ替えて振り子のように車を動かして、何とか脱出。

 やはりFRで雪道を走るものじゃないね。

12月16日

 忘年会で泊まったのは、渥美半島の先端、伊良湖岬に近い角上楼というお宿。ここがなかなか良い味を出している宿で、素晴らしかった。

角上楼

 建物は昭和元年に建てられたという。もちろん木造で、階段は少々急なのだが、よく磨き込まれて光っている。木は放置しておけば腐ってぼろぼろになっていくけれど、磨き込んでゆけば、年ごとに味が出るのだな、というのが分かる。部屋は良くある和風旅館の造りなのだが、家庭的でとても落ち着く雰囲気である。

 古い建物だが、お風呂はきちんと作ってあった。男女の別もなく、空いているときに気軽に入っていって、鍵を掛けちゃえばよいのである。お風呂は狭くても汚くなければ気持ちよく入れるものだ。木で作り込んであるから、また味わいがある。洗面所だけは、昔のまま残してあり、ひび割れた円形の陶器がとっても味わい深い。

 メシはふぐずくし。ふぐ刺し、ふぐ鍋、ふぐの空揚げ、ふぐの焼き物などなど。刺身にしたふぐはあまり味もなくて値段が高いという以外に感動も薄いけれど、煮込んだときのだしは素晴らしい。ビールがぐいぐいと進む。

 その後は、隣にある築150年の蔵を改造したバーで2次会。ここの大将が酒通、というかきき酒師であり、上等な地酒がたらふく飲める。カクテル、バーボンもよし。

 このお宿、数年前にはつぶれかけて廃業寸前、素晴らしい建物もぶっつぶして駐車場にしてしまおうというくらいまで追い込まれていたらしい。平成10年には一年間の宿泊が5人、しかもビジネス客という有様だったという。それが、改装して昭和初期の雰囲気をうまく引き出した宿として作り込んでいったことで、一気に客が集まるようになった。今は平日も含めて3月末までぎっしり予約が入っているという。

 やはり、テーマを定めて作り込んだことが成功の秘訣じゃないだろうか。今、日本全国に同じような宿が建っている。広いロビー、大理石のお風呂、ぴかぴかした廊下。すべてが均一化されていて、日本どこへ行っても同じ。その土地のものを食べるぐらいしか変化がない。食べ物だって怪しいものなのだ。魚がおいしいとされる街のホテルで、韓国あたりから輸入した魚で舟盛りを作っているという笑えない現実。

 「日本人へのおもてなし」を考えたときのキーワード。「木」「小規模」「アットホーム」「本物の料理」。偽物じゃないおもてなしなら、ちょっとぐらいお金を使っても満足なのだ。