普段何気なく食べているもやし。もやし炒め、もやしラーメン、ナムルなどなど。もやしはもやしであって、別に原料がなんだとか、どうやってつくられているか、とか思いをはせることはなかなかない。
野菜であって、野菜じゃないのである。ようやく最近になって晴れて野菜となったようだが、つい最近までは工業製品の扱い。つまり、工場で生産される「加工品」だったらしい。
もやしの栽培には土は使わない。想像の中では、なにかスポンジのようなものの上に豆を巻いてそこから生やすようなイメージがあるが、まったく違った。ちょっと大きなバスタブを想像してもらえばよい。バスタブの底は小さな穴がたくさんあいていて、水がたまらないようになっている。そこに、原料である豆を50kgほど投入する。バスタブの底の方に豆がたまっている姿を想像してほしい。あとは暗い場所で定期的に水をかけて7、8日間ほどすると、バスタブいっぱいにもやしが生長しているのである。7、8センチほどに伸びたもやしがバスタブのような容器にぱんぱんに詰まっている姿はなかなか迫力がある。
スーパーに並んでいるもやしもさまざまな種類があることに気が付く。緑豆もやし、大豆モヤシなどなど。緑豆、大豆はもやしの原料となった豆を表す。とにかく草でも豆でも良いから日の当たらない暗い場所で発芽させれば、もやしなのである。緑豆、大豆、ブラックマッペなどなど、パッケージの裏に書いてある原料を調べてみるとさまざまな豆が使われていることが分かる。
土を使わないから農作物じゃない。栽培方法も通常の野菜とまるで違う。だから野菜であって野菜じゃなかったらしい。
そんな工場を見学させてもらった。白衣を着、帽子をかぶって、内部にはいるには手を洗ってアルコールで殺菌。なかなか厳重である。あの見慣れたもやしも山のように積まれて、わらをすくうようなフォークでがさがさと袋詰めの機械に投入されているところを見ると、さすがに仰天する。
けれども、栽培には水しか使わない。水をかけるのは、まさしく水くれをしてやる意味合いと、さらにもやしが発芽するときに出す熱を冷ましてやる効果があるのだという。さましてやらないと、腐ってしまう。
特殊な条件で発芽させているから、普通の野菜とはちょいと違った栄養素が含まれているとか。工場の一角に置かれたバスタブに、ぱんぱんに詰まったもやしを、上からちょいとつまんで食べてみたら、甘くてこれがまたなかなかおいしかった。