市場のおっちゃんからもらったハタハタを食べた。これが絶品であった。
ハタハタは秋田名物の魚だ。20センチぐらいで鱗がなく、淡泊だが脂がのっていてとてもおいしい。秋田の塩魚汁(しょっつる)鍋が有名。「しょっつる」はハタハタの肉や内蔵を塩漬けにして、発酵させた液の上澄みから取るもので、北陸にもある魚醤の一つ。これを調味料に、魚と野菜を煮込んだ鍋らしい。想像するだけでうまそうなのだが、さすがにそこまで手の込んだ料理はできない。
で、手軽にうまく食べる方法として丸干しがある。ハタハタのはらわたを抜いてお好みの濃度に調整した塩水につけ込み、それを冬の寒い風に当たるように干しておく。風がある日は、それこそ3時間ほどで干し上がる。半日も干していれば良いらしい。もし、干せる環境がない場合、皿にキッチンペーパー敷いて、その上にハタハタを置いて冷蔵庫で2日ぐらい置いておくと干し上がるという。
で、そうやってできた丸干しは、焼いて食べと、これがうまい。生のまま焼くよりも干した方がうまみが数倍であるみたいである。昨日もらったハタハタは、すでに丸干しに加工してあるものだった。朝、焼いてもらい、賞味した。
市場のおっちゃん曰く、「はしでつまんで食べたらおいしくない」とのこと。頭から丸かじりするのがたぶん一番おいしいのだが、さすがに硬い骨が気になる。おっちゃんが教えてくれた方法を紹介すると、まず、焼きたてのハタハタの頭としっぽをむしり取る。「あっちっち」と言って耳たぶをつまみながらむしるのがベストだ。
次に、身をほぐす。なぜほぐすか、と言えば、背骨を身と分離するためである。ほぐした後、封筒を開くときのようにハタハタの身を指でつまんで、首をむしった後のところを広げて、はしで背骨をつまんで抜き取る。背骨はいとも簡単にごそりと抜けるから、なかなか気持ちがよい。
背骨が抜けたらあとは賞味するだけ。ぱくりと身にかじりつく。噛むと脂がジワリと口のなかで広がり、風味が鼻に抜ける。今の時期は特に、脂が乗っていておいしい。3匹のハタハタ丸干しがあれば、日本酒2合ぐらいは軽く飲めそうである。
名古屋ではあまり見かけないのだが、ほかの地域ではどうなんだろう。