4月14日

 ドライブがてらに作業を見学に来る、という風変わりな方がいたので、朝からフライホイールとクラッチを移植しながら待っていた。来たいという人も変わっていれば、それを待つ人も変わったことをしていた。

 きれいなNBに乗って現れ、エンジンルームにぽっかり穴が空いたロードスターとぐちゃぐちゃに工具やら部品屋らが転がっている軒下を見て、あまりにも想像を絶する光景に、絶句した様子。しかし、作業着まで持ってきてやる気満々だったので、エンジン積み込みという軽作業を手伝ってもらう。軽い簡単な作業であるが、1人ではなかなかできない。簡単、というのはもちろん冗談である。手伝ってもらえて、ラッキーであった。

 途中、突風。立てかけてあったボンネットがあおられて、どかん、と倒れてしまう。2カ所がへこんでしまった(涙)。一番きれいに磨く場所なのに、思いっきり目立つ傷が無惨にもついてしまったのである。「立てかけておけば倒れるに決まっているでしょ」と、正しいおしかりを受ける。素人とは言え、かなりいい加減に作業をしているのを見て、あきれていた様子であった。(それでも、今回自分の組み付けたエンジンを外してみて、意外にもきちんと部品が付いていてびっくりした)。

 ボンネットがへこみ、僕もへこんだ。直さなければ。いくら落ち込んでいようと、エンジンは動くようにしなければならないのだ。作業を再開する。

 2時間ぐらい格闘して、エンジンとミッションのドッキングに成功した。ここまでこれば後は早い。一人で狭いところに手を突っ込んだり、車の下に潜ったりすれば終わる。近くのカフェレストで、メシを喰らい、いつもの山道へ走りに行った。「こんな近所にいい道があってうらやましい」との感想。僕もそう思っています。

 NBの方がビーナスライン方面へ走り去り、再び淡々とした作業に戻る。ミッションとエンジンをとめるボルトを締め、エキマニを付け、インマニ、ラジエーター、エアフロ、吸気管。配線をつないだころ、あたりは暗くなっていた。

 アンダーカバー以外、すべて終わったので、オイルと水を入れ、バッテリーをつなぎ、プラグを抜いて、きゅいいいいいんと、しばらくクランキングをすると、油圧計が2kg/cmを指す。マツダ純正オイルなので、こんなものであろう。

 プラグを付けて、プラグコードを配線し、クランク角センサーの配線を付け、エンジン始動。何の感動もなく、エンジンが始動した。HLAのラッシュ音すらしない。

 圧縮比9.4、吸気236度排気249度カムで回るノーマルエンジンのアイドリングは本当に静か。インジェクターの音しかしないぐらいである。空燃比も、ピタッと同じ数値を示し続ける。負圧も500mHg! 吸排気264度のカムから100mHg以上上がっている。平地なら530mHgぐらいを示すんだろう。3.7kgのフライホイールでも、まったくエンストしそうにならない。乗りやすい車になったことは確か。

 しかし、排気に手をかざすと、やはり勢いが足りないのである。音も迫力がなくなってしまった。物足りない。何の感動もないエンジンである。

 実感した。普通のエンジンでは満足できない。我が病の根の深さ。