この前話していた生ごみ処理機ができたんですよ、と、江南のとある中小企業の社長のおっちゃんがいうので見に行くことにした。
江南市の中小企業でつくる工業振興の集まりがあるのだが、市から補助金をもらっているのに毎年、集まって飲み食いするぐらいしか実績がなかったらしい。ま、行政がつくっている協議会なんて実態はだいたいこんなもので、よくある話である。このおっちゃんが3年前に会長となったとき、こんなことじゃいけないと、みんなで何かものづくりをしようということになった。
ときは、環境をテーマにした愛・地球博が盛り上がりはじめたころ。江南市はごみ減量57(こーなん)運動という、一人一日57グラムのごみを減らそうという運動をしている。家庭でごみを減らすのにもっとも効果的なのが生ごみ。環境万博も開かれることだし、家庭用の生ごみ処理機を作ろう、という話で決定した。
ごみ処理場などに視察に行って研究を重ね、バイオ式という方式の生ごみ処理機をつくることにした。微生物の力で生ごみを分解するため、1年半はメンテナンスフリー。機械の構造も簡単で、おっちゃんの工場でも内部の部品は作れるだろうという目算はあったに違いない。
が、製品にするには、外観も大切。プラスチック製のガワを製作するためには、金型などを作らないといけない。その道のプロも江南市にいるのだが、この人が概算すると、ガワをつくるのに5000万円。しかも、10万個単位で製品を作らないと売りやすい価格にはならないという。
しょうがないから、とすでに生ごみ処理機を作っている企業からOEMで部品を調達することにした。主要メーカー製のものはほとんどが中国製。それでは意味がないということで、国内メーカーを探し、一日あたりの処理量が1キロほどの少し大型のものを選定。すべての部品を買ったら江南製じゃないからと、生ごみをかき混ぜるステンレス製の部品はおっちゃんの工場で内製することにした。
と、これだけの話があったのだが「生ごみ処理機をつくってるんですよ」という話を聞いたのが6月ぐらい。一から製品を作るのだからしばらくかかるんだろう、と思っていたら、すでに製品がある、ということで、半信半疑、見に行ったら本当に売れる製品があったのでびっくり。ほとんどOEMながらこのおっちゃんの仕事の速さと情熱に感心したのである。
高さ40センチぐらいのふたつきバケツ、といった感じ。名前は「エコ」に江南をからめて「エコーナン」なんだと。べたべたで恥ずかしくなるような名前だが、なんとなく頭に残る絶妙なネーミングだ。
とりあえず販売するための製品を作ったという位置づけで、将来は、すべての部品を地元でつくるのが目標。いまはこのおっちゃんが突っ走って製品を作っちゃった形だが、もし、地元企業の技術を集めて一つの製品ができたら、それはそれはすごいことだと思う。「環境の市」などとうたっているが、かけ声だけで実効性の疑わしいことばかりやっている江南市の、ジマンの一つになることは間違いない。