今年初のキノコ鍋を喰らった。これを食べるためだけに信州にいてもいいと思うくらいの食い物である。山に生えている雑キノコを鍋に肉や野菜とともに放り込み、シンプルな味を付けただけ。さまざまなキノコが醸し出す香りは絶品。しこしこした歯ごたえのキノコと、キノコの香りを吸った肉、野菜。鍋から取り出すすべてのものが、魔法をかけられたようにうまくなっている。これを食ってしまうと松茸なんて、それほどうまいものでもないと思えるようになる。さらに、キノコエキスを煮詰めた汁にうどんを放り込む。名古屋近郊の生まれの人間としてはぶっといきしめんを入れたいところである。ただのうどんのはずなのに、またこれがうまく、腹が一杯だったのに、さらに食ってしまう。
今回はコムソウというキノコだけの鍋だった。やはり旬は10月らしい。単一のキノコだけだと、香りの相乗効果のような反応は起きないが、それでもうまい。おきまりのうどんを喰らったら、動けないぐらいになった。
キノコを煮てくれるのは塩尻にいる同じ社の人。ことし、新しいパソコンが仕事場に導入されたので「困ったときはいつでも助けに行ってあげます」と耳元でささやいておいた。これで、どっさり食べさせてくれること請け合い。
寒く悲惨な季節になる前の、ほんのささやかな楽しみ。