東京のホテルで宿泊し、朝からランドの方へ行く。平日でシーだった昨日は人込みもあまりなく快適だったのだが、休日のランドは朝からものすごい人。正直、なめていた。時間を追うごとに満員電車のようになっていく。夕方、おみやげ屋に入ったときは、笑うしかないぐらいの人込みだった。
それでも、頭にくることが万博より少なかったのはなぜだろう。
万博は、黄土色した警備員が常にほえまくっている。「走らないで」「階段を下りたら右側に向かって歩いて」などと、機械的に大声を上げている警備員のなんと多いことか。半年間だけのイベント、急ごしらえのスタッフだから、マニュアル通り動くことを徹底しているのだろう。そのマニュアルには、「〜させない」と制限することばかりが書かれているらしく「世界から集まった人たちに気持ちよく帰ってもらいましょう」とは一切書かれていないみたい。
基本的に「〜するな」というのが万博会場。合理的とは思えないような制限をされると、人間腹が立つ。
特にペットボトルの持ち込み。テロを防ぐ、というのが表向きの理由なんだそうだ。唖然とするしかない。水曜日に行ったとき、持ち込み禁止を忘れていて、会場内で買えないと困るからと、西ゲート近くの自販機でペットボトル飲料をがしがしと3本も買ってしまった。
あ、そういえば入り口で没収されるんだった、と思い出し、あわててリュックの底に3本並べて上に汗拭きタオルを載せ、その上にデジカメやらポケットに入っていた財布やら、携帯電話やらを放り込んで、たくさん物が入っているように装った。西ゲートの荷物検査場でリュックの口を開けて警備員に中身を見せる。「タオルの下も見せて」と手を伸ばしてきたら、ペットボトル3本450円をあきらめるしかなかったが、そんなこともなく易々と通ることができた。テロを防ぐ、といったって所詮、この程度のチェックしかしていない。
ディズニーランドでは万博会場を上回る、半端じゃない人口密度だったが、会場スタッフに腹を立てたことはあまりない。基本的には教育が行き届いていた。なにをするにも行列を作らせるのには、閉口したけれど。やっぱりリピーターがあっての経営だから、いかに客を楽しませ、気持ちよく帰ってもらうかに、神経を使っていると思った。「ホスピタリティー」の発想を、良く心得ていると思う。
万博との基本的な考えの違いを痛感したのが、丸太のいかだに乗って、滝を下る「スプラッシュ・マウンテン」の行列待ちの時。壁にびしょびしょに濡れたキャラクターの絵とともに「濡れたらごめんね」と、注意書きが書いてあった。「ごめんね」という注意書きや「荷物に気を付けて」とさえ言っておけば、濡れたって荷物がどこかへ飛んでいったって笑う人はいても、怒る人などいない。
確かに万博ではいっさいの事故がないのかもしれないけれど、訪れた人のうち、8割ぐらいは腹を立てて帰っている。この違いはやっぱり「ホスピタリティー」というものがなんたるかを接客に取り入れているかどうかの差じゃないだろうか。「事故さえなく会期末を迎えられれば」「とにかく開催して帳尻だけ合えば良い」。そんなこっすい(名古屋弁。標準語では「けち」「ずるい」)考えが、ディズニーランドに来て余計に見え透いてしまった。