「これやるよ」と会社の同期から2枚のチケットをもらった。中日対阪神のチケットである。マジック2で、絶対優勝がない、という微妙な試合である。せめて、昨日の試合が終わる前にもらっていれば、速攻でチケット屋にたたき売れば数万円になっていたはずである。
仕事中にもらったので、チケット屋に行くわけにもいかず、さすがに球場前の「券ないか〜」のおじちゃんに売るのも気が引けたので、行くしかない。それでも、道連れを探す時間も余裕もない。もたもたしているうちに、午後6時のプレイボールの時間になってしまった。もったいないので、ドームに向かう。
知り合いからメールが届いたので、券があるよ、と伝えたら、来る、と即答があった。まあ、今シーズンの一番良い時期の試合だから、当たり前のことか。
金沢に住む知り合いの虎キチ夫妻がこの3連戦で優勝するだろうと山をはり、2試合のチケットを押さえて名古屋に乗り込んできた。真っ黒な法被を着こんで応援している姿は、ちょっと近寄りがたい雰囲気がある。
ふれておかねば分からない人が多いかもしれないのだが、今シーズンの阪神の快進撃は、名古屋人にとって、とっても複雑な、というよりはにがにがしい気分なのである。だって、中日を辞めた星野さんが、野村さん降板の一報を受けて間髪入れず監督に就任し、さらに中日の首脳陣を引き抜いて、いまのチームを作っているのである。かつては名古屋のヒーローだった星野監督が、今はタイガースの神様になりつつあるのである。
だから、名古屋人はドームで星野監督を胴上げされてたまるか、と思いながら見ている。が、監督すらいないいまの弱竜チームで、猛虎が倒せる勝算はないのである。
ドームは、阪神ファンに占拠されていた。スタンドは、右翼のドラ応援団以外は黄色と黒色な感じ。ドームなのに甲子園な雰囲気。福留がんばれーとでも叫ぼうなら、回りからタコ殴りに遭いそうな殺気。ホーム球場なのに、なぜ?
でも、阪神ファンの応援って気持ちが良い。3塁ベンチ裏あたりで観戦したのだが、回りの虎キチは外野の応援団の音頭を常に気にしながら叫んでいる。距離にして100mはあるから、タイコやトランペットの音が若干遅れて聞こえるのをうまいこと合わせて、合唱している。虎キチであるならば、さぞかし気持ちよく、ストレス解消になる空間であっただろう。
試合といえば、監督もいない弱竜に、猛虎が食われてしまった。こんなファンを抱えた球団だから、優勝のプレッシャーもかなりのものなのだろう。気合いが空回りして、駄目だったみたい。
金沢から来た虎キチが、枯れた声でしょげているのを見て、かわいそうになったから、14日のチケットが手に入るつてがあったので、手配して3枚プレゼントした。これもたたき売れば数万円になったのかなあ。