高校野球が開幕した。長野からは松本にある塚原青雲高校という一般の人にとっては聞き慣れない学校が出場した。実に35年ぶり2回目の出場。
この学校、いろいろな意味でドラマチック。
まず、野球部。来年で廃部の可能性が高かったのだ。今だって17人しか部員がいない。2年前、県外から実力のある選手を引っ張ってくる受け皿となっていた体育科がなくなった。今、レギュラーでがんばっているのは大阪出身者がほとんど。甲子園出場は里帰りみたいなものだったりする。県外者を受け入れていた寮が廃止されることもあって、もう強い選手を引っ張ってくることはかなわない。しかも、2年生がいない。1年生が4人ぐらいだったか。この時点で来年の県大会は惨憺たる結果であることが目に見えている。だから「最後のチャレンジ」と部員の結束は固かった。
学校そのものも存続の危機に直面している。現在の在校生は110人余り。正確な数字が分からないのは、在校しているのかしていないのか、分からない生徒が多いからか。最盛期には1500人ぐらい在校していたらしいから、あまりにも衰退してしまった。原因は2年前の募集停止騒ぎ。経営が成り立たない、と募集しない考えを運営する学校法人が表明したのだ。
教職員組合の猛反発があって、募集停止は撤回。しかし、学校として積極的に生徒募集をしなかったし、やる気のある先生がいくら中学校を回ったところで、募集停止騒ぎがあった学校。なかなか生徒は集まらなかった。
創立者の娘に当たる現校長は、どうやら学校をやめたいと考えているふしがある。来年の募集で、一定以上生徒が集まらなければ、再来年は再び募集停止となる可能性が高いという。
そんな厳しい状況下での甲子園出場。決勝戦、松本球場で佐久長聖を下す瞬間を見て、鳥肌が立った。松本の街は寄付やら応援団の編成やらで盛り上がっている。来年、多くの生徒が集まるかも知れない。野球部を目指して。
学校を続けることに積極的でないように見えた校長も、田中康夫知事が松本で3日夜、懇談会を開いたとき、わざわざ会場までやってきて、甲子園まで応援に行くよう依頼していた。2年前、募集停止する、やめろの騒ぎを目の前で見た者にとっては、感慨深い光景だった。もしかしたらこの学校、これを契機に復活していくかもな、と感じた。来年は、どれだけの生徒が入学するんだろう。
第1試合は13日。鳥取代表の八頭との対戦。戦力は五分五分か。ぜひ、勝ってほしい。
犬猿の仲である田中知事と有賀正・松本市長とのスタンドでのバトルも見物かも。