8月18日

 家から近くの短大で、教授がブドウの収穫をすると聞いたので、出かける。夏休みのキャンパスの一角の土地を3年前に借りて、耕して育てているのだ。

 収穫していたのはメルロとカルベネ種。3年前に植えて、初めての収穫。病気にやられたり、直前にムクドリの大群に実を食べられたりと不運が重なって、数量にしたらちょこっと。それでも、喜々として収穫する教授。実は一流ホテルでソムリエをしていた経歴を持つ。そんな人が教えている大学が近くにあるのはうれしい。ソムリエのときはぱりっとした格好をして粋に振る舞っているに違いないのだが、作業着を着て剪定ばさみを持って、喜々とブドウを収穫している姿はお百姓さんそのもの。

 もちろん、ブドウはワインを造るために育てている。「消費する側の出口は極めたから、造る側の入り口を極めたい」という。きわめて正しい。

 んが、採れたブドウはほんのちょこっと。それでも、塩尻のイヅツワインに持っていって、醸造してもらうという。「これを持っていって『これだけじゃできないよ』と笑われてもいいんだ」と教授。わざわざ、車で運ぶのだから、コストで言えばまったく合理的じゃない。

 「いいんだ、お金じゃないんだ」という教授。将来、地ワインをみんなでつくりこの地にブドウの文化を根付かせたいという。お金じゃない、と言い切って目標に突き進む人は見ていてすがすがしい。