8月17日

 ビールは注ぐ人によって味が変わる。

 そんな話を偶然に喫茶店で会った庭師から聞いた。注ぐ人の人柄や態度、生き方のようなものが味に出るのだという。まじめに話すものだから聞き入ってしまった。

 居酒屋のママ。心を込めて客にビールを注ぐ店ははやるが、ぞんざいな注ぎ方をするような店は客足が途絶えてつぶれるのだ、という。そんなものかな、と思いつつ、味にどう現れるのかを聞いてみた。

 まじめな態度で注ぐの者は、やはりビールがキリッとうまいのだそう。逆に、軽い気持ちだったり、普段からいい加減な性格の人が注いだビールは軽い味がしてまずい、という。微妙な話ではある。

 この庭師、昨日、一緒に飲んだ学生に「惨敗」した。学生の就職が決まった祝いに、学生と学生の先生に当たる人とともに飲み、先生から、ビールの味が確かに変わる、という話を聞いた。半信半疑で自分の注いだビールを飲み、次に学生のビールを飲んで、驚いた。「確かに、学生の注いだビールがうまい」。人生にまじめに向かい合っている、そんな味だったという。

 逆に自分の注いだビールは「オレの軽い性格、そっくり」。人生の年輪はあまり関係がない。「そのとき、その時点での注いだ人の人間性が現れる」とも。

 確かに注ぐ人によってビールの味は変わる。今度飲むときから試してみよう。けれども、人の人生を推し量るような微妙なテイスティング。いわば、「人生のきき酒」。まだまだ青い僕には、当分、微妙な違いは分かりそうにもない。