8月16日

 仕事をさぼって夕方、名古屋の大須に向かった。中部地方では一番大きな電気街である。

 まともに歩いたのは何年かぶりなのだが、大変な変貌ぶりに驚いた。パソコンショップは戦国時代で、中小のショップが乱立している。怪しげなパーツ屋やら、同人誌系のショップやら、中古ソフト屋やら、雰囲気は小秋葉原である。あそこまで異常じゃないけれど。

 マイコンテックやコムロード、、中京パソコン、パソコン系にめっぽう強い本屋「三洋堂シグマ」など、老舗はきちんと残っていた。考えてみると、10年以上前から営業しているのだから、この激動の時代の中、良くやっている。九十九電機は秋葉原が本店か。DOS/VパラダイスやらTWOTOPやら、秋葉原発祥のショップが数多くなった。

 名古屋の地元で発展したショップと言ったらやはりグッドウイルである。昔は大須の界隈だけで小さな店舗ばかり10店舗ぐらいあったのだが、今は統廃合が進んでいるらしい。5年ばかり前に大きな5階建てぐらいの情報百貨店というビルを造ったのだが、ほんの少し奥まって場所が悪いからか、ゲームソフト館に変わっていた。その代わり、現在のメインストリートと言える場所に、どぎつい看板をビル全体に張り付けたような、趣味の悪い建物ができていた。半地下にカフェのようなスペースが設けてあって、奥にステージが設けてある。2階は普通にパソコンやらデジカメやらを売っている。3Dシネマなんかもあって、ちょっとしたアミューズメントパーク。パソコンショップも人集めのためにいろいろ考えるもんだ。

 また、紛らわしい名前なのだが「アメヨコビル」という小さな家電屋さんを集積したビルがある。第1と第2があり、4年ぐらい前まではご時世に乗ってパソコンショップが増えていった。第1アメヨコはあまり変わっていないようだったが、第2アメヨコでパソコン店が減っていた。代わりにプラモやらモデルガンやらを売るホビーショップが入っていたり、イベントスペースになっていたりと様変わりしていた。ま、ぐるりと一回りしたけれど、大須の商店街一帯が、寺やお稲荷さん関係のアダルトな街から、若向けの街へと加速度的に変わりつつあるので、パソコンばかり売っているよりはこの方が儲かるかもしれない。まあ、このビルの1階にあるICや配線を所狭しと並べた電子パーツ屋はまだまだ健在だったから、昔ながらのちょっと怪しげな雰囲気は残っているのだが。

 名古屋では名高い質屋の「コメ兵(こめひょう)」もパワーアップして、広大な売り場面積を誇っていた。中古品のカメラを物色するも、まったくお得じゃない。新品で買った方が補償が付いているので得なくらいである。

 何よりも、パソコンの中古パーツを扱う店が大幅に増えているのに驚いた。さらに、その値段の高さに驚いた。はっきり言って、価値の変動の激しいパソコン業界で、中古屋をやるほどハイリスクなことはない、と思っていたから、ちゃんとやっていけるのか不思議に思った。デスクトップのパソコンを作るとして、すべて新品でパーツをそろえたって、1、2万円しか変わらないぐらいの差しか付いていない。デジカメに至ってはCCDの性能とコンパクトさとスピードが日進月歩で上がっているのだから、3万円以上の値段が付いていたら買う気など起こらないのに、そんなものばかりがごろごろしている。人気の高いIXYDIGTALに至っては最新型の新品とそれほど変わらない値段なのである。多くの店がそのうち大損をするとみた。生鮮食品を扱うように右から左にものを動かさなければ、儲かるわけがないのである。在庫としておいた途端、価値の減少が始まる。

 大須の商店街は、お寺とパソコンショップと高齢者とオタクがごった返していたヘンテコな街から、若向けの街として生まれ変われつつあった。おもしろい街になっていきそうである。