夜、10時すぎにアパートに帰ったら、入り口で小雨が降っていた。廊下が水浸し。ただならぬ量なのでどうやら、どこかの部屋で水が噴き出しているよう。
とりあえず、小雨をくぐり抜けて自分の部屋に戻ると、向かい側の部屋からじゃばじゃばと水の音がした。僕の部屋は3階なので、3階で出水して2階に漏れて、それがさらに1階の廊下に出ていることになる。大惨事だ。
ドアの向こうでなにが起こっているか分からないので、とりあえず管理会社に電話。夜だったけれども、ちゃんと転送電話になっていて、会社のだれかが出た。1階廊下が水浸しになっていること、3階の部屋から水が出ていることを告げると、最初は事態が飲み込めなかったようだけれども、「そちらに行きます」とのこと。
部屋でビールを飲んでいたら、チャイムがなった。管理会社のおっさんが鍵箱を持って「やっぱりこの部屋から出ているみたいですね」と向かいに部屋のドアを見る。チャイムを押しても返事がないから、合い鍵で入ることに。
はっきり言って夜のアパートの1室で水がじゃばじゃば出ているのって、けっこう怖いシチュエーション。「すみません、一緒にいてもらえますか」とおっさんが言ったのは、なにか目撃してしまったときの警察対策だろう。僕も一切自分で動かずに管理会社を呼んだ後ろ暗さがあるので、後ろについて一緒に入る。
部屋は真っ暗で、ざあざあと水の音だけしていて、非常に怖い。おっさんが「冷たっ」とつぶやきつつ中に入って電気を付けたら、洗濯機のホースがすっぽ抜けて水道水が全開で噴き出していた。よりによって留守中に抜けるとは、と同情しつつ、事件だったらお盆休みがなくなるところだったと、ほっとして部屋に戻る。
下の部屋に住人がいるかは知らないが、自分の部屋に上から水が漏れくるって最悪のシチュエーションだな、などと思いつつ、夏はクソ暑い最上階に住んでいるささやかな幸せを感じたのであった。