各地でこの時期やっている「茅の輪くぐり」という行事を見に、祖父江町のとある神社に行くことになった。
神社は、だいたいが昔からの集落の一角にあったりして、分かりづらい場所にあるのだが、だいたいの場所さえ分かれば、迷うことなくたどり着くことができる。こんもりと背の高い木が立ち並んでいる場所がだいたい神社か寺だ。田園地帯なら、田んぼの中に浮かぶ島のような感じなので、車で走っていればすぐ見当が付く。
そこも古い集落の中の神社。近くに行くと、氏子の人たちが家族で歩いて神社に向かっていた。浴衣姿の人もいてすっかり夏の風情である。近くに車を止め、歩いて境内に入る。入り口に、たこ焼きやイカ焼きやおもちゃや綿菓子を売る屋台が立ち並んで正しい夏まつりの雰囲気であった。
ちょうど、日が暮れかかっていたときで、周囲の森は徐々に暗くなっていき、木々の間から見える空もだんだんと灰色が濃くなり、それとともに提灯が明るさを増してきた。そんな境内を浴衣姿で葦を手にした家族連れが最低限の明かりを頼りに境内を進み、直径2.5メートルほどの茅でできた輪をまずくぐって左に回り込み、8の字を描くように3回回って境内に参拝していた。
葦には人の形をした紙が付けられていて、その紙に名前を書いて、体中をこするようにして汚れを払うのだという。それを神社に納めてこの夏の無病息災を願うのだ。
社務所では氏子の代表の人たちが、畳の上で簡単な食事を取っていた。部屋に漂う蚊取り線香のにおい。
まさしくそこには日本の夏があった。