「やってられねえよ。こんなに働いて売り上げを上げているのに、査定で2番だぜ? なさけねえことに2番だ。どれだけ査定で金額差が出ているかって聞いてみたら、俺の3分の1しか売り上げていない奴と10万しか違わないの。これじゃあさあ、何のために身を粉にして一生懸命働いているのか、分からなくなるよなあ。俺の弟が大学で教えているんだけどさ、こうやって言うのさ。いくらがんばり通しても、金額はそんなに大きな差になる訳じゃない。一生懸命働くことも大切だが、人生やりたいことをやって楽しくすごすことも大切だって。そうだよなあ。10万だものなあ。年に2回で20万として月に1万5000円ちょっとの差だよ。もうちょっと自分のために時間を使わないと損だよなあ。昔はA級ライセンスとってリッター100馬力を目指して組んだエンジンを積んだサニーで鈴鹿のコーナーで横転していたんだけどな。あなたも、やりたいことやっておかないと、人生あっという間よ。俺だって楽しかった学生時代がもう20年以上前だし、息子が今、その年代だ。いつ女を連れ込んできたって不思議じゃないんだよ。遊ばないといけねえ。もっとも、9時に来て5時に帰るようなやつは、プライベートを充実させることもできないだろうけどな」
「ボーナス出たんでしょ。おごってちょ」と市場の顔なじみのおっちゃんに話しかけたら、「ま、そこに座れ」。100倍言葉が返ってきて面食らった。