万博の話を書いていなかった。
愛知県で万博をやっている。とはいえ、騒いでいるのはこの地方だけで、中部以外に住んでいる人は、「ああ、そんなことがあったよね」ぐらいのことに違いない。
万博とはかれこれ10年以上前からのつきあいになる。瀬戸の里山「海上の森」を大規模開発する当初の計画を「ぶちこわす」とつぶやいている人間を何人も見た。実は、海上の森の近くには、4駆で走るには絶好のクロカンコースがあり、4駆ブームだった当時は、よく兄とランクル60で林道を荒らし回ったもんだ。
万博会場として開発された愛知青少年公園は、実家から近く、自転車で行けるような距離だったから子どものころから親しんだ。ロードスターが納車された当日には、万博のアクセス道路であるグリーンロードをぶっ飛ばした。そんな場所をぶちこわしての博覧会である。「本当にできるのか」と思っていたら、期日通りきっちり始まった。1年半ぐらい前、久しぶりにグリーンロードを走ったとき、対面通行だった道が片側2車線となって立派なトンネルも開通していたのにはびっくりした。当時の面影もまったくないぐらい開発し尽くされた青少年公園跡地をみて寂しく思ったものである。
で、なぜか4月中旬、仕事で2週間、万博会場に通うことになったのである。
さすが国家プロジェクト、と思わせるのがグローバルループだ。舟の甲板みたいなデッキが会場をぐるりと1周を巡っている。その長さ2.6キロ。丘陵地で万博をやること自体が初めてみたいで、このご時世だとバリアフリー化は絶対やらねばならないから、高いところのレベルに合わせて地面を作っちゃった感じ。
開場直前の西ゲート付近。雨の直後だからデッキがしめっている。奥の山には桜が咲いている。桜の時期にこんな場所で監禁されたような生活を送っていた(涙)。
すげえ構造物なのだが、晴天の日は日光を遮るものがなく、さらに照り返しもあってあっという間に丸コゲになる。人に優しいようであって、実は人に優しくない感じ。夜に歩くと、地面の正面がデッキの隙間から漏れてみえて、実はとても高い場所にいることが分かってとても怖い。板が抜けて落ちたら、間違いなく死んじゃう。
仕事で行ったので、人気のあるトヨタ館なんかは入れてもらえない。企業館で入ったのはJR東海の超伝導リニア館だが、こちらも山梨の実験線で実物に乗って時速450キロを体験したことがあるので、そうたいした感動はなかった。
外国館は個人的には好きだ。時間があいたとき、展示の一つ一つをじっくり見た。時間をあまり気にしなくて良いからできる芸当で、通り抜けるだけだと、背景にあるテーマもよく分からないまま終わってしまうだろう。国によって力の入り方がまったく違うので、どの国の館に入ったかでかなり印象が変わると思う。イタリア館はGOODである。
万博を楽しんできたわけではない。その前提で誤解を恐れず書いちゃうと、遠くに住んでいる人に「万博に来たら」とはお薦めできない。人気パビリオンは長蛇の列、くそ暑い中並んでも数カ所しか見ることができない。4600円も払ってただ並びにくるようなものである。外国館は、各国の文化なんかが紹介されていて、楽しいところもあるのだが、ここまでテレビ番組で世界が紹介し尽くされている時代に、大きな驚きはない。1日だけの滞在なら、会場も広いし、気ばかり焦って何をみたのかよくわからないまま帰る羽目になっちゃうに違いない。周到に準備して、パビリオンの予約なんかもばっちり取っていれば話は別だが。
通える場所に住んでいて、17500円の全期間入場券を買うなら話は別。公園としてちゃんと整備されているし、食べるものも高いが各国の料理があるので、いろいろ楽しむことができる。毎日がお祭り騒ぎで、毎回違った発見があるから楽しめるに違いない。
わりと近くに住んでいても、そこまで気合を入れるつもりがないなら午後5時から入るのがお薦め。入場券が半額の2300円で、各パビリオンもすいてくる。これからの季節なら、夕涼みの気分で行くと、夜だけのお祭りもあって楽しいに違いない。
という僕は、8月にまた3週間も万博会場で仕事をさせられるので、もううんざり。