6月11日

 まっすぐ歩いているつもりだったのだが、じぐざくの千鳥足だったに違いない。完璧に飲み過ぎたのを後悔しつつ、夜の大津通りを北に向かって歩いていた。

 DyDoの自販機が目に入り、かれこれ15本目になるデミダスコーヒーを買った。フェラーリが当たる、ということならば、買わねばなるまいと、缶コーヒーを飲むたびになるべくデミダスを買うようになって、どれくらいたつのだろう。iモードでシリアルナンバーを入力し、スロットとは名ばかりのゲームに挑戦するのだが、当たった試しはない。これまで14本買って全部外れた。いや、うち1本は市場の自販機のそばに転がっていた空き缶のシールを奪ってチャレンジしたから、13本だった。酔っぱらっていることもあり、無性に当ててやりたくなったのである。

 それにしても飲み過ぎた。金山の木曽屋で市場の人と。濁り酒に手を出したのがまずかったか。ビール数本開けた後、コップに3杯飲んで、もう2杯、今度は透明なお酒を飲んだ。さすがにちと限界量を超えたらしい。

 フェラーリの話をしていたのだった。とにかく、携帯でゲームにチャレンジしても、ひどいのだ。スロットゲームのはずなのに、画面上のスロットは動かない。静止画のままなのだから、タイミングを取りようがない。闇雲にストップさせてもいつも青い飛行機が出てきて、赤い車で止まらない。15回目のチャレンジ。今度も例のごとく青だった。

 あきらめて歩いていたらいつしか上前津にさしかかっていた。やっぱり酔っぱらいだったらしく、だんだん腹が立ってきたので巨大駐車場1階にあるDyDoの自販機の前に立ち止まり、再びデミダスコーヒーを買う。5百円玉を入れておつりもばんばんつぎ込み、計4本。むきになっているのである。

 むくんでしまった手では、ちまちまとシールをはがしたり、携帯でシリアルナンバーを入力したりするだけのことでもおぼつかない。今日こそ当たる、と信じて1回、2回、3回、4回。4機目の青い飛行機をぼんやりと眺めていたら、僕の心を表すかのように、小雨が降り出した。