6月15日

 夕方、仕事で貴金属屋さんへ行った。僕の仕事は夕方が一番、忙しいので写真を一枚、撮ってとんぼ返りするつもりだったのだが、仕事を終えて貴金属屋さん、「なに、その眼鏡」と僕の顔を見て真顔で言う。

 「なんか、ゆがんでいるよね」と貴金属屋さん。「ちょっと貸して」というので、その勢いのまま眼鏡を渡す。確かに、僕の眼鏡はフレームがちょっと変わっていて、針金細工のような感じで、着けたまま寝てしまいぐにゃぐにゃと曲がって原形をとどめていなかった。自分で手で曲げて元通りにしたつもりだったのだが、プロから見たら変形しているのが一目瞭然だったらしい。

 「あー、乱視が入っているけれど、こんな状態じゃあ、効いてないね」などといいながら、手でフレームを修正する貴金属屋さん。しばらくいじって、返してくれた眼鏡は、素人目で見てもばっちり元の形に直っていた。すごい。

 「ちょっと2階に来て」と言われるがままに、2階へ。1階は時計や指輪しか置いていないのだが、2階は眼鏡コーナーになっていた。奥に招かれて、「ここに座って。眼鏡を貸して」と貴金属屋さん。眼鏡を機器にセットし、レンズの度を調査。そして、おもむろに眼鏡屋さんが眼鏡を作るときに使う視力検査用の眼鏡にレンズをセットし始めた。

 「これかけて」というので言われるがまま眼鏡をかけ、遠くのスクリーンに映る視力検査用の文字を読む。さまざまな検査をされて、視力や遠近感など目の健康に関するすべてを30分ほどで調べられてしまう。ここまできちっと視力検査をされたことは、ない。

 「じゃあ、こっち来て」とフレームが並べられているコーナーに行き「これなんか、似合うんじゃないか」などと2、3薦められる。「いやあ、まるで仕事ができる人間に見られてしまうと困っちゃうんですよ。僕には今の丸眼鏡を着けてぼーっとしている感じがちょうど良いんです」なーんて言いながら「イメチェンするなら、これぐらいかな」などと答えてしまう僕もいた。結局、眼鏡を買うことになってしまった。僕の度から言うと高いレンズが必要なので全部で52000円。

 使っていた眼鏡の修正から視力検査まで、プロのこだわりを見てしまったので、視力検査が終わったころには新しい眼鏡を作る気になっていた僕。決して、強引に買わされた訳じゃない。きちんとしたコミュニケーションや自らが持つ技をきちんと見せられてしまっては、こちらも納得して買うしかない。どんな仕事にも通じるスキルを見せつけられた気がした。仕事のついでに作ってしまった眼鏡だけれども、なかなか良い買い物をした。

 ということで、次に着ける眼鏡はちょっと冒険をしているのだ。