8時前のあずさに何とか間に合って、揺られること2時間半。新宿に到着。憂鬱な気分になる。いつも北アルプスの山や、広い空を見ている人間にとって、東京の街並みは圧迫感を覚えるだけである。狭い空に、コンクリート、都会臭。田舎育ちの僕の体には、合わない。ジトジトっとした空気が体にまつわりつくようで気分が悪くなる。
学生時代の先輩と赤坂見附で落ち合って、昼飯を喰らう。少ししゃれた感じの定食屋に入って、食べたのは、いわしのどんぶり。正午になった途端、えらく込み始めたので、スターバックスでコーヒーを飲む。見事にお上りさん風の行動を取ってしまった。
先輩と別れて、なぜか霞ヶ関へ。眠たい思いをして、夕方、学生時代の別の友人の携帯に電話を入れる。神谷町が仕事場だというので、霞ヶ関から歩いて移動する。そういえば、東京タワーを近くでじっくり見たのは、生まれてこの方初めてのことかな、と思う。正真正銘の田舎者である。
焼鳥屋に行き、ビール。午後8時半まで飲んで、新宿へ。帰りのあずさでは、ほとんど意識がなかった。あっという間にワープして松本に帰ってきた感覚を覚える。
零時前に松本駅前にいるのだから、いつものショットバーに行かねばなるまい、と、しつこい客引きを振り払いつつ、向かう。ジュースのようなカクテル2杯。このショットバーで知り合った名古屋生まれの若者が偶然座っていた。先月、中央道の駒ヶ岳サービスエリア付近でタヌキに遭遇し、自損事故をしてしまったらしい。「ひいてしまえば良かったのに」と言うものの、人間、とっさのことには反射で動いてしまうものである。ぶつけてしまうのも仕方がないか。
急ハンドルを切ってタコ踊りをして、中央分離帯に衝突。もう少しで死ぬところだった。この事故で営業職なのに会社の車に乗せてもらえなくなり、気まずくなって転職を考えているのだとか。何の仕事をしようか、と考え中という。
東京にも住んでみたい、という。田舎が一番、と考えている僕は、やはり普通の感覚じゃないのかしら。