夕方、知多半島で仕事があり、新名古屋駅から名鉄に乗って向かう。半田口というマイナーな駅で降りるため、阿久比で急行から普通に乗り換える。
列車に乗り、車窓から外を眺めていると、移り変わっていく景色に見とれてボーっとしてしまう。別に松本のように美しい北アルプスの峰々が見えるわけでもない。生活剥き出しの物干し台や朽ちかけたトタン壁の工場、スクラップにされた自動車、忙しそうに田植えするおじさんたち。ありふれた日常がスライドのように次から次へ流れては消えていくだけなのだが、思わず、顔も見たことのない見知らぬ人の日常に思いが巡ってしまい、口をあんぐり開けたまま焦点も定まらずに見とれることになってしまう。
気力があればポケットから本を取りだして読んでいるのだが、そんな気にもなれずにボケッと外を眺めていたら、「はんだぐち〜」という声が聞こえ、扉が閉まった。降り損なったのである。バスなら開けてちょ!と叫んで駆け下りることも可能だが、電車ではいかなる抵抗も無駄である。ちんちんっとベルの音がなり、発車してしまった。
で、次の駅で降り、目的地まではタクシーで行く羽目になった。電車より高いお金を取られる。ばかばかしい。