そろそろ松本にでも行こうかね、と親が言った。洗濯物が雪崩を起こしそうなくらいたまっているし、台所も蜘蛛の巣天国になっている。すぐにでも来てもらおうか、と思ったが、そう言えば、お客さん用だった部屋に、エンジンさんが鎮座しているので、泊まる場所がないことに気づき、そういえば、寝る場所ないや、と断った。
本当だったらエンジン組み立て部屋はきれいに片づいていたはずなのに、想定外の故障により、再び腰下がエンジンスタンドに固定された状態になって放置されている。もし、再度組むとしたら、最低オーバーサイズピストン&シリンダーボーリング。圧縮比が上がるピストンを組むとしたらヘッドをばらして、燃焼室をもう少しきれいに削り、バルブシートカットを施してやりたい。すると、15万ぐらいかかる計算である。欲を出してバルブリフターにまで手を入れちゃったりすると、計算不能な感じで費用がかかってしまう。狂ったように物欲の赴くままにしておいたので、先立つものが心細くなっている。銀行の残高を見て、そろそろ理性が頭をもたげ始めたところなのである。
積み替えたノーマルエンジンは、いい感じで回っている。安いレギュラーでそれほど不足のないパワー(それでも前のエンジンよりは確実に一回り遅いけれど)が出ているから、不満はない。そもそも、前のエンジンが求めるがままにアクセルを踏むと、ちょっと怖かったし。その一方でエンジン積み替えができる恵まれた環境がある。
物欲と理性が我が頭脳の中でずっと綱引きをしている状態なのである。