4月16日

 必要があれば、人は何歳になっても進歩するみたい。

 フィギュアスケートの浅田真央に首ったけの母。テレビ放映されたすべての演技をVHSのビデオの前に釘付けになって録画して「真央ちゃんテープ」を量産するぐらいの熱の入れようだった。が、せっかく液晶大画面のテレビがあるのに、ビデオを買っていなかったものだから、21インチのブラウン管で観戦していた。せっかくきれいに映るテレビがあるのに、もったいないな、と年末にブルーレイレコーダーを買って取り付けてあげていた。

 ビデオの録画予約すらできなかった母に、最近のレコーダーは番組表が出て、選択すれば勝手に撮りためてくれるんだよ、と説明。VHS時代から突然、ハードディスク時代に突入したものだから、もうパニック。レコーダーにたくさん映像をためることができる円盤が入っていて、一杯になっちゃったときに、こちらのブルーレイディスクに移すんだよ、などと教える。

 母にとって、真央ちゃんだけが重要で、安藤美姫とか中野友加里とかは眼中にない。VHS時代はテレビの前に待機していて、真央ちゃんの演技のときだけ録画するという方式を取っていた。もう、テープの時代じゃなくてハードディスクの時代なのだから、不要な部分を撮ったって、ほら、こんなふうに簡単に飛ばせるから大丈夫、と操作を教えてあげた。両手でリモコンを持ってのぞき込むように操作しながら、真央ちゃんが映っているところの頭出しをしようとする母だったけれど、行きすぎてしまったり、戻りすぎてしまったりとなかなかうまく行かない様子。まあ、慣れてね、とその場はそんな感じで終了。

 ところが、ブルーレイ画質で真央ちゃんを撮りためているものだから、シーズンが始まるや瞬く間に340ギガのハードディスクの空き容量が減っていったらしい。いや、親父がこっそり録画した釣りやらゴルフやらの映像も馬鹿にならない容量を占めている。先日、実家に戻ったときには親父の映像を問答無用でブルーレイディスクに追い出して空き容量を確保した。

 このとき、母が「やっぱり真央ちゃんの映像だけで良い」と。たぶん、目的の部分でチャプターを区切って前後部分を削除する、ということもできるんだろうけれど、説明書を見ながら試してみなければならないし、今回は時間がないから、また今度やってあげるね、と実家を後にした。

 で、先の日曜日。母は独自にハードディスク上で「真央ちゃん集」をつくることに成功していた。「チャプターで区切ってできた」と母。僕ですら、まだやってことがないのに、ちょっとびっくり。その情熱は正直、すごいなと思った。

 必要があれば、人は何歳になっても進歩する。最新機器だろうが使いこなせるようになる。初孫が生まれるから、パソコンでも買い与えてみようかしら。