人は見かけじゃない。これはたぶん、真実なんであろう。
ところが今日はさすがに自分の身なりの貧しさを反省した。土曜日だし、仕事の予定を考えると、スーツを着るまでもないだろうと、お気楽にジーンズで出勤することにした。
いつもの調子でジーンズをはくと、黒いまだら模様が付いていた。ヘッドを外したとき、オイルが付いてしまったのである。さすがに、そんなズボンで人前に出るわけにもいかず、もう一本のジーンズをはいたら、これもまた、酷使されてすり切れる寸前、色もほとんどはがれ落ちたような、みっともない代物だった。
膝のあたりがやぶれたような、ぼろぼろのジーンズをはくのもファッションの一つなのかもしれないが、このジーンズはなんだか、違う。貧乏くさいのである。まあ、仕方あるまい、とそれをはくことにする。
適当に着た上着も、エンジンをいじるときに何度か着たものだったらしく、袖口が黒く汚れていた。もう破れかぶれになって、どうせ着てしまったのだからと、そのまま外出しようとし、いつもの皮靴を履き、その靴も、ヘッドからたれたオイルで黒く水玉模様が付き、おまけに地面に寝そべったときにこすれてしまって、茶色がほとんどはがれてしまっている始末。さすがに、これはまずい、と苦笑してしまった。ちゃちゃっと、クリームを塗ってごまかすも、かえって黒色の水玉が強調されてしまったようである。
外を歩きながら、やはりこんな身なりで歩いているのはまずい、さすがに学生じゃあるまいし、いつまでもこんな格好でうろうろするわけにも行かないかな、と思い、そのうち服でも買いに行こうかしら、との考えが頭をよぎるも、
いや、その前にピストン。
いや、その前にピストン
と考えてしまうから、僕の病気も末期症状と言って良いだろう。