4月4日

 信州でロードスターが一番楽しめるのは、やはりこの時期だろうと思う。今は松本の平で桜が満開。諏訪で5分咲き。桜前線はニュース番組で示される平面だけではなく、標高の前線もあるのだ。

 この時期に休みをもらったのなら、走りに行かねば、人生の多くの大切なものを置き去りにするようなものだ。まずは、平で満開になった桜を見に、ロードスターの屋根を開け放ち、薄川へ向かう。今日は春にしては珍しく、北アルプスがくっきり見える。この時期、春霞でだいたい山の展望はなくなるのだが、少し冷え込んだためだろうか、常念岳をはじめ、くっきりと望むことができる。これからのドライブに期待が持てそうだ。

 薄川。美ヶ原を源流に、松本市の中心街で田川と合流する短い川だが、桜の並木が良い。この週末はきっと、河川敷に多くの人が出て花見をするんだろう。ごみごみした街を抜けて堤防に出ると、満開の桜が待ち受けていた。

 桜並木を走るとオープンカーに乗っていてよかった、と心から思う。窓から外を見るのではない。上を見上げるのである。前から後ろに流れていく桜は、なかなかみられるものではない。危ないのでのろのろ運転。

 堪能して、進路を北に取る。あてもなく、気の向く方向へ走るドライブが一番すかっとする。谷間の村に差し掛かると、まだ桜はつぼみだ。ここにはまだ、春が完全には訪れていない。

 聖高原を登ると、北斜面の路肩には雪が残っている。最近の暖かさで一気に解けてしまったのだろう、この時期にしては少ない。善光寺平らを見ながら、ヘアピンの連続を更埴に下りると、あんずの花が満開である。白やうす紅色の花が枝に控えめについている。桜のように豪華ではないけれど、控えめなところがかえって、美しい。

 ここで長野に向かうか上田に向かうかで迷った。長野に行けば、帰りは高速を使う長距離ドライブになってしまう。6日に間瀬を走るから体力は温存しなくてはならないのである。国道18号を上田に向かう。

 沿道も桜が満開だった。小学校の校庭でにぎやかに咲く桜も良いけれど、山の斜面にぽっと1本だけ咲く桜をみるとハッとする。回りの景色にとけ込んでこそ、桜は美しい。

 ここで突然、進路を真田に取った。菅平に向かう山道である。菅平の登り口で直進すれば、浅間山の北に出る国道である。

 ぐんぐんと登っていくと、路面には再び雪が見えるようになり、景色は灰色の冬になってしまった。せっかく花を見にドライブしているのに、あまり山へ登ってはいけなかった。北軽井沢に向かう。

 北軽井沢。軽井沢の名前を付けているだけ合って別荘地が立ち並ぶ。突然、なで肩の浅間山が、まだ多くの雪をいただいて、視界に入ってきた。山頂付近からは、白い噴煙がもうもうと立ち上る。毎日見ていないので分からないが、少し多いのじゃないかしら。

 北軽井沢周辺はまさに火山の大地。岩がごつごつしてうっそうと林が生い茂る。あまりにも荒涼としていて、寒気がするほどである。同じ軽井沢でも、麓と大違い。

 急いで人と桜のある麓に下りる。軽井沢の中心街は軽薄な観光地だけれども、静かなたたずまいのコテージがあると、泊まってみたいな、と思ってしまう。国道18号に合流すると、硫黄のにおいが鼻を突いた。浅間山の噴煙が下まで下りてきているんだろうか。佐久まで下りてきて、ようやく花を見ることができた。すでに夕方近くなっている。

 時計を見て、日没までにビーナスラインに行けるだろうと予想して、望月町から蓼科山に向かって車を走らせる。この前来たとき、全面的に凍って車のテストコースになっていた女神湖の湖水は、すでに全面的に解けていた。ビーナスラインを飛ばし、諏訪で某氏と食事。映画を見て帰宅。200キロ以上は走ったのか。