3月4日

 吸気272度、排気288度のオーバーラップ70度以上のバルブタイミングで、4連スロットルで回していた旧エンジン。とりあえず、快適ツーリング仕様&車検対応排ガス仕様とするために同じTODAの256度カム(9ミリリフト)に交換。4連は付けていても良かったけれど、あまり付けている意味のある仕様のエンジン&車ではないので、NB6のインマニを取り付けた。もう、どこにでもある普通な感じのエンジンである。

 ノーマルカムプーリーでそのまま組んだバルブタイミングだと、3.7キロのオグラフライホイールが入っている影響でミッションの歯打ち音(アイドリングでがらがらという音)が出るので、さらにオーバーラップを少なくする方向で適当にスライドカムプーリーをいじって排気カムのタイミングを調整。ものすごくノーマルチックになったのだけれど、排ガスがまだ基準値よりも高い状態だったので、そこからさらにオーバーラップを減らす方向で排気カムをずらした。排ガス自体はこれでOK。

 どうも、ノーマル以上にオーバーラップが狭いらしく、アイドリング時の負圧がノーマルより出ている(笑)。アイドル時に必要な燃料の量も少ないし、ISCVも30台とかとても低い値で回っている(NB6のスロットルを使ったのは初めてなので、これぐらいが当たり前なのかもしれないが)。「普通に走れれば良いんだ」といういい加減なバルブタイミングなのだが、最初はNB6のカムでも付けようかと思っていたぐらいなので、これでOK。能登半島を1周走り、Freedomの学習&手打ちでほぼ噴射量マップと点火マップは完成させた。

 で、残るは外気圧補正が必要かどうかの検証なのであった。たぶん、外気圧補正がまったくない状態でもOKだと思ったのは、昨日書いた通り。

 外気圧補正について簡単に書くと、標高を高いところに行くと徐々に空気が薄くなっていくので、Freedomに内蔵している気圧センサーを元に、空気が薄くなった分、なんとか調整しようという目的の補正である。

 普段、山の方に向かっても標高に応じて気圧が低くなっていっていることなんて、気にしないでしょう。標高2500メートルぐらいまで行くと、活発に動くと頭が痛くなったりして分かるぐらい。

 が、実際には標高に比例して気圧が変わっていっているのだ。たとえば、平地で760mmHgだった外気圧は、東海北陸道の五箇山インターあたりに行くと720mmHg。飛騨清見インターでは690mmHg。東海北陸道の標高最高地点の1100メートル付近に行くと、670mmHgにまで下がる。ちなみに、標高2000メートルの美ヶ原高原では590mmHgぐらい。

 ロードスターの聖地とも言える軽井沢は標高1000メートルぐらいだから、外気圧は680mmHgぐらいか。平地よりも1割ぐらい外気圧が低くなっていて、1割はパワーが落ちているはずである。120馬力のロードスターなら110馬力弱ぐらいになっているわけで、軽井沢に行ってパワーの低下を感じられない人であるなら、ちょこっとチューニングしたところで差は感じられないはずなのだ。

 話がそれたけれど、Freedom標準のDジェトロ制御で、シングルスロットルの場合、外気圧の変化はまったく考慮しなくてよいのだ。今回、ばっちりセッティングを取った状態で高地を走ってみて良く分かった。

 Dジェトロは、センサーで吸気管(シングルスロットルの場合、インテークマニホールド)内の圧力を調べて、その圧力に対応する噴射量マップの数値を元に燃料の量を決める。「この圧力のときはこの空気の量が入ります」という数字をいちいちコンピューターに教えてあげるのだ。あくまで吸入量を予想しているようなものだから、たとえばバルブタイミングを変更したり、吸気管や排気管を取り替えると、再びセットし直さなくてはならない。

 で、たとえば、下記のようなDジェトロの噴射量マップがあったとする。全開に近いところの抜粋ね。

550
600
650
700
750
800
4500
0.650
0.690
0.730
0.770
0.810
0.850
5000
0.710
0.750
0.790
0.830
0.870
0.910
5500
0.730
0.770
0.810
0.850
0.890
0.930
550
600
650
700
750
800
550
550
600
600
650
650
700
700
750
750
800
800
4500
0.650
0.690
0.730
0.770
0.810
0.850
4500
4500
0.650
0.650
0.690
0.690
0.730
0.730
0.770
0.770
0.810
0.810
0.850
0.850
5000
0.710
0.750
0.790
0.830
0.870
0.910
5000
5000
0.710
0.710
0.750
0.750
0.790
0.790
0.830
0.830
0.870
0.870
0.910
0.910
5500
0.730
0.770
0.810
0.850
0.890
0.930
5500
5500
0.730
0.730
0.770
0.770
0.810
0.810
0.850
0.850
0.890
0.890
0.930
0.930

 例えとして分かりやすいようにマップの数字が単純に吸気圧に比例する形で書いてある。実際にはでこぼこがあったりする。

 平地だと、外気圧が760mmHg(天候で変わるけれど)あるから、スロットルを全開にするとインマニの中の圧力も外気圧と同じになって、マップはだいたい750のところを読む。カムに乗ったりして、パワーが出てるときは800のところも読むことも。

 では、標高1000メートルのところに行くとどうなるのか。外気圧が700mmHgになるので、全開にしても700mmHgのところしか読まない。外気圧に従って、エンジンの吸気圧も小さくなるので、自動的に低いところのマップを読むので適切な燃料を噴射するのだ。もともと圧力を基準に吸入空気量を予測するマップを読んでいるのだから、外気圧が変わろうが適切な制御となる。

 そんなの当たり前じゃない、と思うかもしれないが、Freedomには外気圧補正という機能が付いていて、「吸気圧変換方式」「外気圧補正マップ方式」の2つが用意されている。Dジェトロの場合は、吸気圧変換方式を選ぶようにとマニュアルに書かれていて、マニュアルでは「スピードデンシティー(=Dジェトロ)では外気圧が下がると、排気の抜けが良くなり、排気行程での残留排気ガスが減少し、同一吸気圧でも外気圧が高い場合に比べて充填効率が上昇します。そこで、外気圧ごとに計算によって吸気圧を、充填効率がほぼ同一になる吸気圧に変換することで補正を行います」とある。

 外気圧が1割下がったところで、排気の抜けによる充填効率の向上が燃料の調整が必要なぐらいまで変化するのかどうかは疑問が残るところだが、とにかく、シングルスロットルDジェトロは外気圧補正を入れない方が調子が良い。もしかすると、アイドリングだけ、マップの読む位置が変わって不調になるかもしれないから、その対策に「外気圧補正マップ方式」を選んで濃くしたり薄くしたりと調整すると良いかも知れない。

 で、今回、標高1100メートルでチェックした。僕のマップは空燃比マップを駆使して、アクセル開度によって空燃比を変えていて、軽い負荷(マップの左の方ね)のときは16に、中負荷のときは14.7に、高負荷のときは12.5にセットしてある。高速道路で、前の車に接近しすぎてアクセルを抜くときや下りの坂道のときに16、一定速度で巡航しているときは14.7、少しアクセルを踏んでエンジン回転が上がっていくぐらいの領域は12.5という具合。

 で、外気圧補正はまったく殺して標高1100メートルを走ったのだけれど、アクセルの踏み方に応じて、平地でセットした空燃比できれいに制御されていた。若干アクセルの踏み始めが薄い感じだったけれど、問題ないレベル。外気圧云々ではなく、単純にマップを読む位置が左側にシフトするから、平地ではあまり読まないマップを読んだのが原因だと思われる。同じ理由で、アイドリングを試してみると、若干マップがずれるから、空燃比もずれるかもしれない。

 長くなったから細かく書かないけれど、シングルスロットルの場合はDジェトロ+リニアスロポジで補正し、外気圧補正を殺すのがベストな制御だと思う。

 これ以外の制御では外気圧補正は必須。シングルスロットルでもスロポジ制御にしたい場合は「外気圧補正マップ方式」を、4連スロットルを入れた場合、Dジェトロを試して見たかったら、吸気圧変換方式を、4連スロットルスロポジ制御は「外気圧補正マップ方式」を選ぶ。僕は外気圧補正が合わせきれなくて、4連スロットルでDジェトロを使うのをやめた。スロットルの開き始めとかの空燃比が調整しきれず、高原に行くと気持ちよくドライブできなかったからだ。

 けっこうばっちり噴射量マップができ、エンストもしない(あ、軽量フライホイールだから普通のロードスターよりはエンストしやすいよ)し、ぎくしゃくもしなくてスムーズに回る。晴れて借り物の空燃比センサーを外すことができるのだ。

 エンストする、ぎくしゃくする、気持ちよく吹けないなどの症状でお悩みのFreedom使いはT.O.Racing
Factory
へ相談を(笑)。

T.O.Racing
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