3月28日

 5年ぶりのFJ1600はとっても怖くて、やはり予想通り、惨敗した。

 レンタルしたFJ1600は、かつてのマイマシンと同じ東京R&D製のFV/2K。今日は鈴鹿・西コースのフォーミュラ枠が6枠もある。天気にも恵まれて本当に文句のない状態で乗ることができた。

 午前8時の走行開始。前日も休みをとって、実家に止まって、午前5時には起きて朝ご飯をちゃんと食べ、万全の体調で鈴鹿に向かう。

 シートの位置を合わせて、いよいよコースイン。西コースのピットからコースに出て130R。ショートカットを抜けてデグナー2つを抜け、ヘアピンへ。200Rを走ってスプーンで、1周。もうね、走り出した瞬間に滅茶苦茶怖いの。首から上がむきだしで細い4本のタイヤだけに頼って時速200キロの世界。本当に冗談抜きで「僕には無理、帰ろう」とピットインしようと思ったぐらい。

 けれども、メンテしてくれているのはスパルタレース屋さん、怖じ気づいてピットインしたら、スパナとかで殴られそう(最近は人が変わったように丸くなったけれど、僕の中のイメージでは5年前のスパルタのままなのだ)なので、とりあえず、できる範囲でコースを走る。ストレートなんか、前を見ているよりミラーを見ている方が長いぐらいで、130Rなんて「一時停止するんじゃねぇ!」と怒られそうなぐらいのスピード。だってできないんだから仕方がない。「なんで、こんな怖いこと好き好んでやりに来ているんだろうと」疑問にすら思う。

 例えると、ロードスターNゼロ車両で1周1分20秒ぐらいで走っているぐらいの情けなさ。で、終わり10分前ぐらいに130Rのライン取りをミスってふくらんでしまい、アスファルトからタイヤが外れた途端にリアが滑って、驚いてアクセルを抜いたものだからイン側に巻いてしまってスピン。とりあえずフルブレーキをするも、時速150キロぐらいでぐるぐる回りながらコースを右から左へ滑っていって、コースアウト。だんだん壁が迫ってきてやばい!と思ったら、敷いてある砂利でブレーキがかかって1メートル手前で止まって助かった。

 1枠目で車を壊して走れなくなるところだった。たぶん、コースに平行する形で回ったので、慣れた人ならブレーキを解除して何とかアスファルトにとどまれたと思う、そんな回り方。

 エンジンを掛けようとしたけれど、かぶっているようで、マフラーから大きな火炎を吹いていたのでどうせ砂利に埋まっていて抜けられないとあきらめて、シートベルトを外して安全なところに逃げる。チェッカーが出て、トラックにクレーンで引き上げてもらってピットに帰った。コースアウトするとFJがちりとり状態になって、砂利をたくさん載せてしまう。苦労して掃除をするレース屋さん。ご迷惑を掛けました。

 2枠目。はっきり言って、スピードが速くて怖いし、怖じ気づいて走るモチベーションは低いけれど、せっかく来たのだからちゃんと走る。とりあえずスピードを上げていかなければならない。ブレーキバランスがフロント寄りになっているということで、コースイン1周だけしてピットイン。ローター温度を測ってOKだ、ということで再び走りだす。

 こちらがのろのろ走っているのに、F4とかS-FJとかが容赦なく後ろから追い上げてくる。本当に、ミラーを見ている時間が半分ぐらい。速ければ勝手に抜いていくんだろうから気にしなければ良いのだけれど、後ろばかり気にして調子が出ない。

 それでも、ちょっとずつスピードを上げていったら、ショートカットのブレーキングで突然リアがぐらついて、エンジン回転がすとんと落ちる。2回目に同じ現象が起こったときは思わずスピン。デグナーとかヘアピンの挙動を見ても、これはブレーキバランスが後ろ過ぎるんでしょう、とピットイン。ブレーキバランサーの調整をして、再びコースイン。1枠目から3秒ぐらいは上がったか。

 3枠目。怖いばかりでもなくなり、スピードにも慣れてきて、ちょこっと楽しさも出てきた。相変わらず、攻めることはできないけれど、ショートカットとかヘアピンでリアステアがどう出るかを試してみる。あちこちでミスをしたけれど、5年ぶりのFV/2Kは以前より「乗りやすい」と思った。以前は「あっ」と思ったら即スピン、コースアウトしていたぐらい速い挙動が出ていたけれど、今回の車はカウンターを当てればコース内にとどまることはできる。リアの横流れがきちんと伝わってくる。

 が、たぶん、そんな乗りやすさは、かなり低いレベルで乗っているからだろう。「そんなタイムで走っていると、タイヤが温まらないからかえって危ない。ブレーキやコーナーを詰めるのはまだ怖いんだから、とりあえずアクセルを全開にしろ」とレース屋さん。

 スプーンの立ち上がりから西コースストレートを130Rまで全開にするのはまあ、何とかできる。が、デグナー立ち上がりからヘアピンにかけてとか、さらには、200R、通称マッチャンコーナー全開は、正直、しゃれにならない。気を抜いたらそのまま高速でアウトに膨らんでクラッシュし、死んでしまいそう。

 それでもタイヤが温まってくると、「無理」と思っていた全開も、できてしまうのだ。ヘアピン前の右コーナーも、ちょこっと勇気を出して、ぐいっとステアリングを切ると、きれいにラインをトレースすることができた。200Rも、「どこか飛んでいってしまう」という感じではなくなって、全開でも理想のラインを描くことができる。たぶん、こういう車で快感なのはこういう200Rとか130Rを攻めることなんだろうと思うけれど、ここら辺で異変を感じ始める。首だ。

 1、2本目で面食らって、疲れがどっと出ているところにFJ本来のグリップが出だしたら、首が横Gで持って行かれてしまう。特に200R後半は歯を食いしばって相当気合いを入れないと前を向けない。そんな状態だからスプーンを攻めるどころではなくて、結果、ストレートのスピードも伸びない。130Rは元々遅いと、全体的に遅くなってしまう。

 1度疲れ出すと、デグナー2個目とかでも首に来るようになってしまい、コースを攻めるどころの話ではなくなってしまう。

 5年前、「ガラスの首」だったことを忘れていたわけではないけれど、甘く考えていた。FJに最初に乗るとき、南コースで車に慣れるのだけれど、2速の立ち上がりで首が前に向けられなかった。やばいと思ったので、素人ながらも首を鍛えて本コースに臨んだら、南コースよりは首への負担が小さい気がしていたのだ。今から思えば、何回か南コースで首を鍛えて本コースに臨み、遅いスピードから何回か走って徐々にスピードが上がっていったので、首も自動的に慣れていただけだったのだ。まったくトレーニングもせずに臨んだ自分の考えの甘さを反省する。

 午前中、3本終わって、タイムは「こんなものか」という程度で、午後3本で何とか1秒ずつぐらいは上げていこうと思うも、首を始め、握力とか腕の力とかもかなり使っているので、すでに体はぼろぼろ。午後の走行までの1時間半、デミオ(こうなることを予想してロードスターではなくデミオで鈴鹿入りしたのだ)の中で横になって特に首の回復を待つことにする。

 4本目。横になっていたので疲れは大丈夫で、気合いを入れて乗り込む。スピードに慣れたとはいえ、130Rとか200Rとかは本当に怖い。それでも何とか気持ちを保って、タイヤを温めたのだけれど、その先がやっぱり一緒。グリップが上がってくると首を持っていかれてしまい、「その先」の世界を体験することができない。Nゼロロードスターで間瀬1分17秒にようやく入ったぐらいのレベルなのに、攻めようにも体がすでに付いてこない。

 結局、3本目のタイムと同じような感じで淡々と続いてしまい「これは、今日は無理そうだ」と思う。5本目は、すでに首がブロー状態で、集中力も欠いてミスも連発するわ、何よりもスピードを上げていけない。途中、ピットインして気持ちを入れ替えて見るも、すでに攻めるモチベーションがないので危ないから戻った。

 6本目は、このまま走ってもタイムを上げるのは無理だと判断。キャンセルする。夕方で路面温度が下がってくるし、タイヤも温まらない中、散漫な集中力で走ったら、車を壊したり、けがをしかねないと真剣に思った。

 タイヤを温めてグリップの限界で走って、その車本来の挙動とか、その先のドライビングが見えてくるのに、スタートラインですでに首がブロー。「FJに乗った」というよりは「体験した」というレベルで終了。5年のブランク、というよりも5年分、おっさんになったことも敗因の一つか。5年前、若気の至りながらも若い走りをしていたんだと、当時の自分に感心する。

 レース屋さん曰く「ラインは合っていた」とのこと。5年前はラインで滅茶苦茶だめだしされた覚えがあるから、事前の学習が一応は役だったみたい。ただ、スピードが足りない。

 最低限、首をしっかりしてから乗らないと、これ以上、攻めることはできないなと思う。何回か走れば徐々に慣れていくことだとは思うけれど、とりあえず、ロードスターのレースもあるから何回も乗ることは考えていないので、ここで終了。不思議と悔しさはなくて、特に対策もせずに乗ればこんなものかとあっさりと受け入れている。