3月28日

 鈴鹿で開かれたフォーミュラ・ニッポン開幕戦に出かけてきた。市場の魚屋さんがチーム「COSMO OIL CERUMO」のトライバー・松田次生のスポンサーを知っている関係で、パドックパスで中に入れてもらえるとのこと。これは行くしかあるまい、と待ち合わせの午後1時半に着くようにロードスターで出発する。

 高速が込んでいたので桑名で降りて、国道1号に乗り換えたがこちらも込んでいた。素直に行った方が早かったに違いない。わんだぁあぐり君の横をすり抜けて、鈴鹿の住宅街を抜け、勘で走っていったらピットクルーレーシングの横を通ってサーキットに到着した。

 が、駐車場に入る車で渋滞。車列に並んでいたら間に合わないかもしれないので、裏道を走って回り込み、西コース入り口の手前の駐車場に割り込む。サーキットの入り口では、先日届いたばかりのSMSC会員証を見せれば中に入ることができる。ちょっと優越感。

 普段の練習やクラブマンレースのときとは打って変わってサーキット内はなかなかの人混みだ。それでも、3年前にF1に出かけたときとは比べものにならないが。ちょうど2輪のレースをやっており、ホームストレートを弾丸のように走り抜けるバイクが見える。だいたい200m看板のところでブレーキをかけていた。4輪ではもっと奥でブレーキのはずだから、やはり違う乗り物だと実感する。F3なんかは、コーナーの直前までアクセル全開だった気がする。

 魚屋さんに出会い、ワールドクサリヤという会社の専務さんと待ち合わせてパスをもらう。グランドスタンドからトンネルをくぐってパドックに入る。見慣れたパドックも、フォーミュラニッポンの開催日となると様相がまったく変わる。なにより、人が多い。レースクイーンなお姉さま方がたくさん歩いている。

ワールドクサリヤ

 「COSMO OIL CERUMO」のピットにたどり着き、専務さんはずかずかと中に入っていく。躊躇していると、「入っても良いよ」とのこと。おお、さすがスポンサーさん! と尻尾振って付いていき、フォーミュラニッポンのマシンに対面する。

 レース30分前。ピットの中ではピットクルーがあわただしく動き回る。カウルを外されたマシンがジャッキアップされていて、ちょうどエンジンに火を入れるところだった。エア・スターターで無限MF308・V8エンジンが一発始動。ぶばん、と爆音が響き、ずばばっばと意外に普通のアイドリングをしている。メカニックが樹脂でできたファンネル一つ一つにライトを照らして確認。別のメカニックは車体につながれたパソコンをにらめっこしている。

 メカニックがスロットルを開く。ふぉん、ふぉん、ふぉんと素晴らしいレスポンス。鼓膜がしびれるほどの爆音が響くかと予想したのだが、思ったより大人しかった。コックピットにもメカが乗り込み、ステアリングについたデジタルパネルの表示とにらめっこしている。クラッチがつながれて、駆動輪がぐるぐると回っていた。

 5分ほどで外に出て、松田選手のお父さんと挨拶する。最近は、漢洋堂という健康食品のお店のプーアルティーカプセルが売れているという。フォーミュラニッポンの松田が3カ月で12キロの減量に成功! と宣伝したらばかすか注文が入ったのだとか。そして、そのお売り上げがまたスポンサー料に還元されるという世界。数千万単位で毎年出せるスポンサーがいないと、走れない世界でもある。資金力も実力のうちなのだ。

漢洋堂

 1・2コーナーのスタンドでストップウオッチを片手に観戦する。予選5位の松田はスタートで1つ順位を上げて順調な滑り出し。1分50秒後半から51秒前半の安定したラップを刻む。ピット作業でちょっと手こずったものの、他の車と絡むこともなく独自の戦いであった。

 小暮卓史(PIAA NAKAJIMA)とPPの井出有治(mobilecast IMPUL)のデッドヒートは見物だった。テールトゥノーズ、サイドバイサイドのやり合いだ。自分も走ったスプーンや130R、シケインで駆け引きをしているのが、なんだか別世界のようである。結局、井出がヘアピンで追突して自爆してしまった。小暮が優勝。松田も4位で惜しかった。バトルを見たかったけれど、終始淡々と危なげないレースであった。自分の今の実力と、世界が違うことだけは思い知った。