3月16日

 金曜日に「どうなることやら」と、書いてあるが、とんでもないことになろうとは予測すらしていなかった。

 富山のホームコースに8時半集合であったので、朝5時すぎに出発する。この時期、富山に行くのに問題になるのが、飛騨地方の天候だ。雪が降っちゃったら、北陸道経由になってしまう。とんでもない大回りだ。

 前日までの天候をきちんとチェックして、路面に雪はないだろうと判断して行くと、果たして大丈夫であった。順調に走り、8時半前には到着。

 昨年10月以来の、ひさびさのホームコースである。前回はさんざんなタイムだったから、今回は気合いが入っていた。5000円を支払って、準備する。

 9時になって走行できる時刻となると同時に、数台の車が勢いよく、飛び出してゆく。僕もタイム計測器をちゃちゃっと取り付けて、まず試しに走ってみようとヘルメットをかぶり、ピットロードを進む。

 エンジンはとっても調子がよい。車高を下げた足回りも、前よりは良いはず。まず1周目はタイヤやブレーキを暖める。ちんたら走っていても暖まらないので、それなりのスピードで。4コーナーを抜けて一番きつい5コーナーに至り、1速にたたき込んでフル加速。6コーナーに進入する直前で、トラブル発生

トラブル発生トラブル発生

 フルブレーキしたものの、コースアウト。「きゃあ〜」と悲鳴を上げながら、車は土の上を突き進む。4コーナーに飛び出ることはなかったのは幸いした。飛び出てしまったら他車と正面衝突してしまう。コース上にいた富山の車屋さん曰く、「雅くんが変なとこから突っ込んで来る〜」と焦ったらしい。そりゃあ、普通に走っていればぜったい突っ切ることがない場所だから、焦るよねえ。

正面衝突雅くんが変なとこから突っ込んで来る〜

 当然、赤ランプ点灯。自走できない我が愛車は、サーキットの車にドナドナされた。申し訳ない。気合いを入れて臨んだホームコースであるが、1周もすることなく終了。せっかくタイム計測器を付けたのに、一度も計測地点を通過することがなかった。

1周もすることなく終了

 とりあえず動くようにしないと帰ることができないので、仲間のロードスターを借りて、片道30分弱の車屋さんまで部品を取りに行く。戻ってきて、エンジンルームとにらめっこ。前にもこんなことをやったなあ。デジャブということにしておこう。

 素人が作ったエンジンだから、壊れてしまったという壊れ方ではないことは確か。

 とりあえず、エンジンがかかるようにする。キーをひねってぎゅぎゅぎゅん、とセルが回り、ぶぉ〜ん、とエンジンがかかると、聞こえてはならない音が…。

 

 カン、カ、カン、カン

カン、カ、カン、カンカン、カ、カン、カン

 

 慌てて切る。異物を吸い込んだらしい。プラグを外してみると、果たして3番気筒のプラグに傷が付いていた。異物がプラグホールから発射されないかしら、との期待を込めて、プラグを取った状態でクランキングしてみると、バヒュンと部品が飛び出さないのは当たり前だが、異音がしない。排気バルブをすり抜けて触媒前まで飛んでいったカモ、と思い、もう一度エンジンを掛ける。ぎゅぎゅん、ぶぉ〜ん…。

 

 カ、カン、カン

カ、カン、カンカ、カン、カン

 

 慌てて切る。異物は相変わらず3番気筒に居座っているらしい。あれこれ努力してプラグホールから取り出そうとチャレンジしてみるも、出てこない。あきらめるしかないか…。「あきらめる=ヘッドを外して異物を取り出す」ことだということは考えないことにしておいた。

 富山の車屋さんの積載車でドナドナ。この日はもう1台が原因不明の不動車になってしまったので、車屋さんのマシンも含めて計3往復させてしまったことになる。申し訳ない。

 車屋さんの工場に入れてとりあえずヘッドを外すことに。とりあえず、とはいえタイミングベルト回りをばらしてエキマニを外して、配線類を外してと、とっても手間。たった75日前にも同じ作業をしていたことは、考えないことにしておこう。でも人数がいるからインマニを外さなくてすんで楽であった。仲間って素敵。

たった75日前にも同じ作業をしていた

 手伝ってもらって、よいしょっとヘッドをはがすと、果たして異物がシリンダーの中で暴れ狂ってピストンに数百回はたたきのめされて、別の物体になったものがスキッシュのところにへばりついていた。(ioi)がーん

(ioi)がーん

 あわよくば、ぼろぼろになった燃焼室は見なかったことにしておき、ヘッドガスケットだけ交換して、また組んでしまおうかとも思ったのだが、バルブを見てみると、端っこが何カ所かゆがんでいた。(ioi)どーん

(ioi)どーん

 ちょいとこれをこのまま取り付けるわけには行かない。困った。だって、名古屋まで帰る足がないじゃない。

 普通の人がこんなことになっちゃったら、

 「エンジンが壊れちゃってどうしよう」普通ならスクラップだよね

普通ならスクラップだよね

 「積み替えっていくらかかるの?」中古エンジンセットで10万くらい?

中古エンジンセットで10万くらい?

 「乗り換えようか」もっと速い車たくさんあるしね

もっと速い車たくさんあるしね

と慌てふためいて、ショックのあまり2、3日ふさぎ込んでしまうかもしれないが、僕はあきれた変態車野郎なのであって、エンジンは壊れるモノであって、諸行無常であって、財布は空っぽなものである、というのが普通になっている。だから、エンジンなんて作って載せればよいモノであって、いや、実は心の奥ではいやおうなしに作らなければいけない状況に追い込まれたのがちょっと快感だったりして、すでに次期エンジンの構想がぐるぐると回っているのだから、さしあたっての問題はどうやって帰るか、なのである。ま、悩むまでもなく電車で帰るしかないのだが。

 今日は朝から腰下の降ろし&ばらしに取りかかる。とりあえず、シリンダーをボーリングできる状態にまでエンジンをばらさないといけない。昨晩のやけ酒のため思考能力が著しく低下し、工具を前に呆然としていることが多く、大変な作業の多くを車屋さんまかせてしまった。申し訳ない。

 腰下をぶら下げてインパクトレンチを使ってばらばらにしていくのは快感でさえある。けれども、ばきばき外していくだけでボルト類は床に散乱させたまま。「普通は仮組みしながらばらすものだぞ」と怒られた。素人だから、そこら辺がいい加減である。いや、素人がエンジンをいじるには、いい加減でないとなかなか踏み出せない。

 夕方、雨の中を高山まで車で乗せていってもらい、マニアックな話に興じる。エンジン仕様についていろいろ考えた。高山駅に着いたら、たった今、最終の特急が出発する時間だと知った。乗れないや、とあきらめかけたら、2分ほど遅れているとのこと。まさしくその2分の遅れで乗ることができた。

 悪いこともあれば、良いこともあるさ。