リンゴが嫌い、という人は珍しいかもしれない。少なくとも、これまで聞いた事がなかった。その人曰く、「あのしゃりしゃりいう食感がたまらなくいや」とのこと。しゃりっと食べて、蜜がじゅるっと出てくるリンゴっておいしいじゃない、と思うのだが、その人に取っては論外の食べ物。地球上から消えてなくなってほしい、というぐらい嫌いなんだそうだ。やっぱり変わっている。
アダムとイブが食べたり、ニュートンの目の前で落下したりしているのだから、有史以来、とても親しんでいる果物なんだろう。それを「この世からなくなってほしい」というのだから、やっぱり笑える。
で、このリンゴ嫌いの人が、市場の果実担当なのだから、そのおかしさは10倍にもなる。これまでリンゴ担当はやったことがない。「担当になったら、会社辞めるもの」というぐらい、嫌いなんだそうだ。じゃあ、試しに来週僕がリンゴを目の前でしゃりしゃり食べてみたら、どう思いますか、といったら「だめ、吐いちゃう」。昔、歯磨き粉の宣伝でリンゴをかじって歯茎から血が出ない、というやつやっていたじゃない、という話題を振ると「そのつどチャンネル変えていた」。徹底している。
そんな馬鹿話をしながら、仕事は終わり、早めに切り上げて8時ごろ家に戻った。晩飯食べて、おもむろにロードスターの洗車を始める。ここ数カ月、洗車した覚えがない。さすがに水垢でどろどろになってきた。
洗車場で高圧放水を浴びせかけて、ボディーの細かいほこりをぶっ飛ばしてから家に運び、ホースで水をかけながら、カーシャンプーで洗う。もちろん、真っ暗な中やっているから、犬の散歩とかで通りかかった人は、なるべくこちらを見ないようにして前を通ったに違いない。
それから親父の車を車庫から追い出して、水垢クリーナー兼ワックスでパネル一枚一枚丁寧に磨いてゆく。こんな作業をしたのは何年ぶりだろう。ミーティングに行くときはさすがにきれいにしないと、周りの車はぴかぴかなのに、一台だけどろどろだとあまりにも我が愛車が不憫だ。
ボディーをきれいにして、次はワイパーを取り替える。もうゴムが固くなって、雨の日の特に夜は、対向車のヘッドライトでぎらぎら光って危険な状態だった。取り替えるついでに、ワイパーアームのつや消し黒の塗装がはげて錆びてきていたので、ペーパーで磨いてからつや消し黒で塗装する。黒い場所をきちんと黒く見せるのが、ポンコツ車を普通の車に見せる秘訣である。
点火プラグもIRIWAYの8番に。明日は6時には市場に行かねばならないのだが、夜の12時ごろまで作業は続いた。