月: 2003年6月

6月18日

 顔も名前も素性も知れない人と会いに行く。最近、はやりすぎて規制されちゃった出会い系サイトなんかのめり込んでいる人は良くあるシチュエーションなのかも知れない。期待以上のべっぴんさんが会えるのか、それともオヤジ狩りに遭うのか。どきどきしちゃう状況であることには間違いはない。

 が、会いに行く人が紛れもないおっさんであり、電話の声の様子からしてちょっと強面の人であると、どきどきするが、わくわくはせず、ぞくぞくは少しするが、憂うつなのである。しかも、会う場所は岐阜市近郊らしい、ということは分かっているのだが、行くまでどこかは教えてもらえない。こちらからは連絡は取れず、相手からの電話を待つ、という誘拐事件の身代金受け渡しにも似た状況だったので、なんだか訳の分からないことに巻き込まれてしまいそうで、いっそう憂うつは募るのである。

 名鉄で新岐阜駅へ。見張られていたわけではないが、タイミング良く、着いた直後に携帯に電話がかかる。交通の便が悪い場所だから、タクシーを拾ってこい、20分ぐらいだ、と場所を指定された。ショッピングセンターのようなところらしい。

 向こうの言うとおり、20分ちょっとで到着し、ショッピングセンター内でぶらぶらして電話を待つ。相変わらず、向こうのことは何も知らないのであり、到着したとの連絡の取りようもないのである。到着して少し待っても連絡はないので、担がれたということで終わりにして帰っちゃおう、とほっと胸をなで下ろしかけたら携帯に着信。

 思ったよりもまともそうな人だったから良かった。ちょいと車に同乗してあちらとこちらを回り、帰ってきておしまい。

6月17日

 富山で日曜日に開かれたジムカーナ大会。タイムを計測しての走行は1月のモーターランド鈴鹿以来であったし、名古屋に来てからは片道1時間の通勤のせいで夜な夜な走りに出るといったこともできなくなったので、まったく走り込み不足であった。有効な練習の場にしたいのだが、今の自分はどんなことを練習したらよいかも分からないぐらい勘が鈍っていた。

 例のごとく、前日夜は富山の車屋さんの家で宴会だ。宴会に行っているのだか、ジムカーナに行っているのだか分からない自分がいたりする。どちらもそれぞれ楽しい。土曜日は頭の中は完全に宴会モードになっていたので、ヘルメットやもしもの雨の場合の雨合羽などなど、ささっと準備して出発したら、シートがノーマルVスペシートのままだったことは、日曜日に書いたとおりである。

 美濃市のわさび屋さんに寄って夜のおつまみを買い込み、郡上八幡、明宝、高山と走って富山へ。標高1000m近い場所も通るのだが、まったく快調に走ることができた。ちょいと燃調が濃い気味であったが、外気圧補正の値が少しずれていただけで修正したら、良い具合。

 ひたすらビールを飲んでマニアックな話に興ずる飲み会が終わった時間は覚えていないが、ルマンはスタートしていた気がする。朝、のろのろ起き出して準備する。

 ういっと朝から臨んだジムカーナ。だるくて仕方がない中、パイロン立てをお手伝いする。タイムを競うのではなく、あくまで練習会であり、初心者から上級者まで、どんな仕様の車でも楽しめて、しかも何本も走ることができるという工夫されたコースであった。

 新エンジン初めてのタイム計測走行である。トラウマな瞬間。前回のサーキット走行では1周する前にエンジンがブローしてしまった。勢いよくマフラーからコンロッドやバルブの傘が飛び出すブローの光景が頭をよぎる。

 スタートの瞬間。普通にクラッチをつないでスタートしたら、ものすごくもたついた。低速トルクが薄いのは分かっているのだが、気持ちが焦ってアクセルを全開にしてしまったから。低回転でアクセルを開けすぎると途端にエンジンの吹けが悪くなる。スロットル径が大きいということもあるが、ちょいとセッティング不足なところもある。

 高回転型のエンジンにファイナル4.1の組み合わせだから、ジムカーナとなると少々キツイ。ターンをするときだとか、低回転から立ち上がるとき、今までの癖でアクセルをベタ踏みにしてしまうのだが、そうすればかえってエンジンは吹けない。少しもたついた後、猛烈に加速するような形になって、少々リズムが悪い。

 慣れて来れば、立ち上がりで回転数を意識しながらアクセルの加減ができるようになり、それほど不便もなくなったが、さすがにサイドを引くような場面になると、クラッチを切っているわけで、回転は落ち込んでいる。次にクラッチをつないだ瞬間、一瞬エンジンが止まったような状態になってしまうので、半クラ状態であおってやるという必要も出てくる。ジムカーナには少々慣れが必要である。

 Vスペシートについては、これまで13万キロ以上激しく走ってきた相棒であり、いくらホールドしていなくても慣れているのだからいいのだが、ウッドのステアリングについては慣れではカバーできない部分もあるかもしれない。パワステは取っ払ってあるから、操作にそれなりの握力が必要であり、もし滑った場合、親指にけがをする可能性がある。特にターン中には細心の注意が必要だから、なかなか左手をサイドブレーキまで伸ばす余裕がないのが現状。momoかNARDYの皮のステアリングに変えようかと思案中。

 それでも、久しぶりに車を振り回すような乗り方ができたのは大変な収穫。ジムカーナを企画、運営してくれた人、タイムを記録してくれた人、多くの人に感謝しなくてはならない。

6月16日

 なぜか伊豆で仕事ができちゃったので、朝から新幹線に乗る。昨日は富山で今日は伊豆。神出鬼没。ロードスターで行っちゃおうかとも本気で考えた。マルハにも寄れるし。が、さすがに疲れているのとジムカーナ後のオイルで長距離を走るのも気持ち悪いのでやめた。

 こだまに乗る。三島に停車するひかり自由席が立ち客が出るほどの混雑ぶりだったので、20分ほど後のこだまにした。余裕をみて出発したからOKなのだ。名古屋発のこだまはがら空きで、快適に移動することができた。

 伊豆箱根鉄道に乗り換え、修善寺へ。タクシーで中伊豆。お茶畑とお茶の葉を加工する工場があって、土地柄を感じさせた。仕事を終えて、バス停まで乗せていってもらい、バスで再び修善寺。おばちゃんと僕と2人だけの乗客だった。

 そのまま列車に乗って帰るのでは寂しいので、修善寺の街を歩く。川に出るとアユ釣り人が何人かいた。川岸をしばらく歩いて、坂を上り、住宅街を抜けたらもう駅だ。駅前の商店街を歩いてみたら、本当に「猫の額」という言葉がぴったりなほどの場所であった。駅側はおみやげ屋やらが並んで何となくにぎやかに見えるのだが、ささやかで小ぢんまりとしたなかなか味のある街だった。修善寺の駅前はあくまで交通の中継点で、人を集めたのは各地の温泉街なのだろう。

 帰りもひかりはやはり込んでいたのでこだまを選ぶ。仕事場に向かうといつものようにだらだらと無駄な時間をすごしてしまいそうだったので、三省堂にだけ寄ってそのまま帰宅してやった。

6月13日

 とっても面白い人に出会った。

 57ぐらいのおっちゃんである。東名高速名古屋インターの近くの長久手町にある社会福祉法人の理事長である。15年ほど商社でサラリーマンをしていた。昭和30年代の、時は高度経済成長期。このおっちゃんは、「最短の距離を最高の効率」で突っ走るのが「善」だと信じた正しいサラリーマンだったのである。

 それが、25年ほど前、消防団の活動に目覚めてしまった。地域のために働くことの気持ちよさに目覚めてしまったのだとか。消防団長に選ばれたのを期に、なんとなく違和感を覚えていたサラリーマン生活に終止符を打ってしまったのだと言うから筋金が入っている。

 長久手で生まれ、長久手で育った。四半世紀前の長久手はまだまだ開発が進んでおらず、雑木林に覆われていた。今では名古屋のベッドタウンとしてあちこち森が伐採されて住宅地となっているが、このおっちゃんのふるさとの原風景は雑木林なのである。

 消防団に入って地域を巡回するうち、あちこちで土地区画整理が進み、雑木林が死んでゆく現場を目撃してしまった。ばっさばっさと森が切り開かれていく。なくなってみて初めて自然豊かな雑木林のありがたさが身に染みた。

 自分の原風景である雑木林がなくなっていく。危機感を覚えた。これじゃあいけない。子どもの頃から身近にあった自然をどうしても守りたい。できたらそこで、子どもたちをゆっくり遊ばせたい。

 そして、素人なのに幼稚園をつくってしまった。お勉強は一切無し。幼稚園の周りの豊富な自然で遊ばせていくだけという画期的な場所であった。

 数年前、「老人ホームをつくらないか」という話が持ち上がった。あちこちの老人ホームを視察する。コンクリートに覆われて、時間通り、きちっきちっとスケジュールをこなすだけの運営に疑問を持った。「これではぼけ製造工場だ」と。

 そうして老人ホームづくりにも取り組む。素人であり、「何も知らないこと」が強みであった。施設のどこでもビールが飲めて、しかも露天風呂付き。雑木林の丘の中腹に立っている建物なのだが、その地形に合わせた建物で、バリアフリーを大前提に平らな場所につくるほかの老人ホームとは、外観からして違う。

 建物を案内してもらってびっくりした。雑木林の木をなるべく切らないよう設計した建物。なんと、木が生えているのを建物がよけているのである。普通、建物を造るときに、木が生えていて邪魔であれば木を切ってしまう。この施設は違うのだ。木が生えているのを邪魔しないよう、建物の壁や屋根に穴を開けたり、廊下を曲げているのである。文章にすれば簡単であるが、実際に木が生えているのを邪魔しないように壁に穴があいて、廊下が曲がっている姿を見ると、う〜むとうなってしまう。経済的なことを考えれば、木や枝をすっぱり切ってしまった方がお値打ちに決まっているからである。何の価値もない木を守るために、コストをかけて建物が避けるように現物あわせでつくってある。うなるしかない。おっちゃん曰く「お金じゃない」そうだ。

 こんな素晴らしい場所も区画整理の波が押し寄せて、入り口近くまで森が伐採されてしまった。ものすごく悲しいことである。が、このおっちゃん負けていない。もとあった雑木林を植林で復活して、古来の日本の木造の家を建てて新しいコミュニティーをつくるのだ、と豪語する。お金はないけれど、賛同者はいる。とりあえず、植林をしてみて、お金のことは後で考える、のだという。

 お金じゃない人生。理想なのだが、実践は難しい。この矛盾。

6月12日

 ロードスターに乗ったら、全然吹けない。空燃比計にはRICHの文字が躍る。

 どこかの設定がおかしくなったみたい。別に慌てることはない。パソコン画面上でおかしなところがないかチェック。ちょちょいと直せばまた普通に走るようになる。

 が、各種補正値を見ても異常なところが見あたらない。Freedom導入直後ならパニックになって、燃料マップをがしがし削っていたところであろう。が、いろいろ経験した今なら原因はだいたい想像できる。全域にわたって調子が悪くなるのは外気圧補正が異常な数字のときだろう。

 そう思って、チェックしてみると、果たして750mmHgの設定値におかしな数字が入っていた。Freedomは外気圧補正についても学習するのだが、勝手に学習させるとわけがわからなくなるので殺してある。なのに、勝手にでたらめな数字が入ってしまうのはなぜだろう。一年前も同じようにおかしくなって原因が分からず、わざわざFreedomからノーマルECUに差し替えて走るようにした。

 元に戻したら再び快調に。スロットル開度補正を入れてかなり空燃比が狙ったところに行くようになってきた。まだ少し濃い領域もあるが、気にするほど大きなずれではない。もうちょっと詰めれば、燃調のセッティングは終わりそう。

 日曜日は富山でジムカーナ。走る前にもうちょっとセッティングを詰めようと、いつものように名古屋高速へ。ひたすらぐるぐる回ってセッティング。2速7000回転キープで数キロ走ったりと、無茶な運転をする。

 今やっているセッティングは噴射量マップとスロットル開度補正マップの両方が関係してくるから、いろいろいじっているうちに訳が分からなくなってくる。ある程度学習させ、その結果を検証して手打ちで修正する。名古屋高速にはサービスエリアがないものだから、脇見運転しながらの作業である。一般道では不可能。

 雨が本格的に降ってきて、危なくなってきたので、セッティング終了。あまりうまく燃調が合わなかった。ま、少々燃費が悪い程度の不具合しかでないけれど。今の燃費は高速飛ばし気味9km/L、高速エコ走行&国道ゆっくり走行12km/l、下道走行9km/l、山道攻め走行7km/lあたり。サーキットでは5km/lぐらいか。

6月11日

 まっすぐ歩いているつもりだったのだが、じぐざくの千鳥足だったに違いない。完璧に飲み過ぎたのを後悔しつつ、夜の大津通りを北に向かって歩いていた。

 DyDoの自販機が目に入り、かれこれ15本目になるデミダスコーヒーを買った。フェラーリが当たる、ということならば、買わねばなるまいと、缶コーヒーを飲むたびになるべくデミダスを買うようになって、どれくらいたつのだろう。iモードでシリアルナンバーを入力し、スロットとは名ばかりのゲームに挑戦するのだが、当たった試しはない。これまで14本買って全部外れた。いや、うち1本は市場の自販機のそばに転がっていた空き缶のシールを奪ってチャレンジしたから、13本だった。酔っぱらっていることもあり、無性に当ててやりたくなったのである。

 それにしても飲み過ぎた。金山の木曽屋で市場の人と。濁り酒に手を出したのがまずかったか。ビール数本開けた後、コップに3杯飲んで、もう2杯、今度は透明なお酒を飲んだ。さすがにちと限界量を超えたらしい。

 フェラーリの話をしていたのだった。とにかく、携帯でゲームにチャレンジしても、ひどいのだ。スロットゲームのはずなのに、画面上のスロットは動かない。静止画のままなのだから、タイミングを取りようがない。闇雲にストップさせてもいつも青い飛行機が出てきて、赤い車で止まらない。15回目のチャレンジ。今度も例のごとく青だった。

 あきらめて歩いていたらいつしか上前津にさしかかっていた。やっぱり酔っぱらいだったらしく、だんだん腹が立ってきたので巨大駐車場1階にあるDyDoの自販機の前に立ち止まり、再びデミダスコーヒーを買う。5百円玉を入れておつりもばんばんつぎ込み、計4本。むきになっているのである。

 むくんでしまった手では、ちまちまとシールをはがしたり、携帯でシリアルナンバーを入力したりするだけのことでもおぼつかない。今日こそ当たる、と信じて1回、2回、3回、4回。4機目の青い飛行機をぼんやりと眺めていたら、僕の心を表すかのように、小雨が降り出した。

6月10日

 新エンジンもすでに走行距離が3500kmぐらいになっている。まだ動き出して一カ月もたっていないのだが、すでにこの走行距離。オイルが減る傾向がある。信州を南北に縦断したら、0.5Lぐらい減ったか。軽井沢に行ったときも目立って減っていた。高地でセッティングが滅茶苦茶になり、異常に濃い空燃比で走ったから減ったのだと勝手に理解しているが、ま、圧縮比11.7にハイカムを入れて高回転ぶん回し仕様なのだから、少しぐらい減るのは仕方ないだろう。オイル臭かったり、プラグがかぶったりしない限り問題ない。

 ちなみに車自体の走行距離は165000キロを超えている。立派なポンコツである。音もうるさいし。ボディも内装もだんだん薄汚れてきた。

 新車を買っちゃった方が速いし快適だしピカピカだし、いいことづくめである。おお、その手があったか。S2000やRX-8、ターボ4駆などなど、勝手に速く走ってくれる車が目白押し。何より静かだろう。

 が、家にはNA8Cのミッションが転がっていたり、B6シリンダーブロック、クランクが置いてあったり。エンジンが壊れても2カ月でつくって載せてちゃうぐらいだから、しばらくはロードスター三昧の日々が続きそうである。

6月9日

 家の近くで午後3時から仕事が入っていた。名古屋の仕事場までドアツードアで1時間。そしてまた戻ってきて45分。1時間45分移動に使うぐらいなら、そのまま家に引きこもって午後2時半ごろ出勤した方が時間が効率的に使える! と、自分を言い聞かせて、昨日のロングツーリングの疲れを癒していた。ま、どうせ家にいても仕事はできるからわざわざ名古屋の中心の方まで行くことはないのだけれど。

 昨日は、久しぶりにロードスターでロングアンドワインディングロードを走ることができたからか、完全にサル状態であった。家に帰ってから気が付いたのだが、朝から飯を喰らっていなかった。メシも喰わずにひたすら走っていたのだからその馬鹿ぶりがよく分かる。

 自宅から歩いて仕事先に向かう。小一時間ほど仕事して、再び自宅へ。途中、本屋に寄ってホットバージョンと「RX-8甦ったロータリー」を購入。ホットバージョン見ながら、ちょこっと仕事して、ロードスターに乗って午後7時すぎに仕事場へ。

 仕事場でもちょこっと仕事をして、そそくさと退社し、名古屋高速へ。スロットル開度補正マップをつくるのだ。

 まず、噴射量マップの全開部分を完成させる。一人ではやはり学習を使わなければ怖い。3速で8000近くまで回すと、ちょっと言えないスピードになってしまうから道がすいているときを見計らって。なから良い加減の空燃比となったら、スロットル補正の学習を入れる。今日走って、なんとなく傾向がつかめた。

 環状線を10数周走って、かなりセッティングが進んだ。1回乗るだけで650円もこうやって使えばお得な気持ちになれる。

6月8日

 土曜日に友人の結婚式に呼ばれたので長野市に向かう。この友人、同じ会社でいまは同じフロアが本拠地なのだが、なぜか名古屋でなく、長野の善光寺で結婚式を挙げやがった。行くだけで大変なのだが、友だちの一生に一回の日であるので、ロードスターで向かうことにした。

 ここで得意技の仕事づくりが炸裂する。途中、高速を松本で降りて小一時間ほど仕事をしてまた向かう。これで松本までの電車賃を請求してやるのだ。

 二次会はアットホームでなかなか良かった。三次会、四次会となだれ込み、気が付いたら午前4時。よちよちと千鳥足でホテルまで歩いて、ベッドに倒れ込んだ。9時半に起きてシャワーを浴びる。

 頭が痛かったのだが、せっかく長野に来ているのだから高原ツーリングをしない手はない。下道を走って野沢温泉村に行き、スキー場の斜面を登って奥志賀林道へ。ここは若干幅が細いのだが、50キロぐらいの道のりを延々と走り続けることができるお気に入りのコースなのだ。

 Freedomの外気圧補正の方向性を打ち出したかった。とりあえず、4連スロットルで外気圧補正がない状態では、まったく乗れたものじゃない。地上760mmHgある気圧も、標高1500m前後の奥志賀林道では640mmHgぐらいしかない。スロットルを全開にしても640mmHgのマップ(地上ではアクセルを開き始めたぐらいの吸気圧)しか読まないわけで、燃調が激薄でエンジンが回らないのである。これを補正でなんとかしなくてはならぬ。

 あれこれいじりながら走り回るが、フィードバック補正をいれないことにはまともに走れない。フィードバック制御を入れるとどうしてもギクシャク感が出てしまうので走っていても気持ちよくないのだ。アクセルを踏んだのにトルクが立ち上がるのが1秒ぐらい遅れてしまう。とても耐えられないのである。

 白根山のあたりまで行き、すでに標高は2000m。外気圧も590mmHgにまで下がり、地上でのアイドリングの吸気圧とそれほど変わらない状態。負圧も出ない。まあ、地上でも260mmHgあたりを指しているんだけれど。

 燃調はぐっちゃぐちゃで、フィードバックを外すと空燃比が17とか18になったりして、とても走れたモノじゃない。外気圧補正マップをいじって燃料を2倍増量してやってようやく走るぐらい。

 これはなんともならないと思い、路肩に止めて外気圧補正を考え直す。最後の手段を試す。外気圧補正のマップ方式から吸気圧変換方式に変更するのだ。

 吸気圧変換方式では、昨年9月に痛い目にあっている。富山へ行ったとき、途中の飛騨清美で燃調が濃くなりすぎてエンジンが動かない、という状態になったことがある。最初はまったく原因が分からず、標高が上がると不調になるのだから外気圧補正のいたずらだろうと思い、マップ方式に切り替えたら、普通に走り出した。だから、この方式は「使えない」と勝手にレッテルを貼っちゃったのである。

 一か八かでやったはずなのだが、ものすごく調子よくエンジンが回り出したので拍子抜けした。空燃比こそ高回転で10台を指すものの、まだ何とか吹ける範囲で収まり、地上に近いレスポンスが帰ってきた。もしかして、ほかのFreedom使いの人たちは外気圧補正で悩んだことがないのかもしれない。半年以上、悩んできたのは何だったんだろう。

 フィードバックを外しても濃いめの燃調だが普通に走る。素晴らしい。外気圧補正がうまく設定できなかったら、スロットル制御を試していたところだが、こんなにきちんと動くなら、もうDジェトロを捨てることはない。エンジンに問題がなくなり、ようやくツーリングを楽しめるようになった。

 山から下って気圧が上がっていくときに問題が出ないかをチェックしながら走っていく。白根山方面から軽井沢へ抜ける浅間白根火山ルートを転がり落ちるように下る。快調に走っていたら、万座ハイウエイの料金所前で突然、燃調が異常に濃くなり、エンストした。昨年9月と同じ症状である。外気圧補正の数値が異常であることは間違いない。

 調べてみると、外気圧補正ゲイン670mmHgの数値が1.6332というあり得ない数字が入っていた。ちなみに、610mmHgの補正値は1.1900である。どんなにおかしな数値か分かってもらえると思う。

 ほかにもおかしなところがないか調べてみると、690mmHgでは2.4100なんていう数値になっている。気圧が690mmHgに近づいたら燃料を吹きっぱなしにするような設定になっていたわけで、これじゃあエンストするに決まっている。なぜ、こんな異常な数値が入ったのかよく分からない。バグか? 昨年9月にこの異常に気が付いていれば、外気圧補正で悩むことなんかなかったのに。それでも、外気圧補正がまったくない状態で走った経験は、Freedomについての理解をより深める結果となったのだからよしとしよう。実際、トラブルが出たらすみやかに対処できたのだから。

 まともな数値を入れたら再び快調になった。松本に住んでいたときは、有料なので敬遠していた万座ハイウエイだが、次にいつ来られるか分からないから走ることにする。新緑の中を突っ走るとっても気持ちよい道。集団でのツーリングにはもってこいだが、料金は高め。

 浅間山を右手に眺めながら軽井沢へ。そういえば、先週がミーティングだったんだっけ。2週間連続。

 千曲ビューラインを走り、諏訪に向かう。和田峠を越えてそのまま諏訪の街に入ると込んでしまうので、扉峠からビーナスラインに乗る。ぜったい遠回りなのだが、エンジンが快調に回っているので浮かれていた。

 再び標高1500mの世界になったが、調子よく走る我がエンジン。ますますFreedomが好きになってしまった。すごい。

 諏訪に下り、高速代を少しでも浮かそうと国道152号へ。高遠に至り、長谷村から駒ヶ根方面に下って、天竜川沿いの細い県道を南下。飯田に至る。ここら辺で日没。

 さすがに、奥志賀林道から志賀高原、火山ルート、ビーナスラインなどなど、狂ったように走った疲れが出てきたので高速に乗ることにした。多治見まで高速代2500円。恵那山トンネルを通るとどうしても高い。

 今日一日で500キロぐらい。昨日と合わせて770キロぐらい走った。満腹。