顔も名前も素性も知れない人と会いに行く。最近、はやりすぎて規制されちゃった出会い系サイトなんかのめり込んでいる人は良くあるシチュエーションなのかも知れない。期待以上のべっぴんさんが会えるのか、それともオヤジ狩りに遭うのか。どきどきしちゃう状況であることには間違いはない。
が、会いに行く人が紛れもないおっさんであり、電話の声の様子からしてちょっと強面の人であると、どきどきするが、わくわくはせず、ぞくぞくは少しするが、憂うつなのである。しかも、会う場所は岐阜市近郊らしい、ということは分かっているのだが、行くまでどこかは教えてもらえない。こちらからは連絡は取れず、相手からの電話を待つ、という誘拐事件の身代金受け渡しにも似た状況だったので、なんだか訳の分からないことに巻き込まれてしまいそうで、いっそう憂うつは募るのである。
名鉄で新岐阜駅へ。見張られていたわけではないが、タイミング良く、着いた直後に携帯に電話がかかる。交通の便が悪い場所だから、タクシーを拾ってこい、20分ぐらいだ、と場所を指定された。ショッピングセンターのようなところらしい。
向こうの言うとおり、20分ちょっとで到着し、ショッピングセンター内でぶらぶらして電話を待つ。相変わらず、向こうのことは何も知らないのであり、到着したとの連絡の取りようもないのである。到着して少し待っても連絡はないので、担がれたということで終わりにして帰っちゃおう、とほっと胸をなで下ろしかけたら携帯に着信。
思ったよりもまともそうな人だったから良かった。ちょいと車に同乗してあちらとこちらを回り、帰ってきておしまい。