月: 2003年5月

5月19日

 軽井沢ミーティングの申し込み期限が明後日に近づいていたので、慌てて申し込みした。もちろん、会社のファクスを無断で私的使用して申込書を提出したのは言うまでもない。当日申し込みでも1000円多く支払えば入場可能だが、いちおう仕事がたまっていたとしてもそれをなげうって行くことに決めているのだから、あらかじめ申し込んでおくのがマナーというものだろう。封筒で届けられるミーティングの詳細とステッカーを眺めてにこにこするのも、楽しみの一つである。

 ミーティングは一人ひとりが楽しむものである。軽井沢みたいに大きなミーティングとなれば、あれこれ参加者を楽しませてくれる仕掛けがいっぱい用意されているので、なんとなくフラリと参加しても、そこそこ楽しめてしまう。このあたりの盛り上がりを、裏から支えているボランティアのスタッフの方々に頭が下がる思いである。僕らはたった3000円を支払ってわーいと遊んでいればよいのである。

 が、あれこれ仕掛けが用意されていても一人ひとりが楽しもうとがんばらなければ、「なーんだ、こんなものか」と独り、投げやりなせりふを吐いて、寂しい思いを抱きつつ、帰宅する羽目になってしまう。ミーティングなんてつまらない、なんて勝手に決めつけ、薄ら笑いを浮かべつつ、昼過ぎにはもう会場を後にして、寂しくハンドルにぎって軽井沢銀座を流しているのでは、あまりにも不幸である。

 ミーティングという名の通り、人と人が出会うイベントである。クラブごとに参加している人は、クラブ仲間との親睦を深めるであろうし、ロードスターの知り合いと年に1度会えるチャンスとなるかもしれない。人づきあいが疎遠になりがちな現代であってもやっぱり顔と顔をつきあわせて実際に相手の表情を見ながらお話しすることは、ネット上でのつきあいの何倍も有意義であって、日ごろのルーチンワークで疲れがちな気分も、一気に晴れるのである。

 誰かと会う、という目的がないと、やっぱりミーティングのおもしろさは半減してしまうものであって、そうなると、なかなか足が向かない気持ちもよく分かる。もし、このくだらない文章を読んでいて、軽井沢に行きたいけれど、何となく気が引ける、会う人もいない、という人がいるのなら、「変態」と呼ばれている僕のクルマを見て、一言でも良いから会話をする、という目的を作っても良いかもしれない。素人がいい加減に作ったエンジンの、どろどろと調子の悪いアイドリングの音を聞いただけで、軽井沢に行く立派な目的になると思う。

 えいっとがんばって足を運んで、いろいろ見聞したら、もっとロードスターというクルマのありがたさを実感するはず。

5月18日

 風邪で体調が悪い状態が続いていた。これがウイークデーならば問題がない。体調が悪い、と仕事をさぼっていればよいのだから。

 が、日曜日はなんとしても我が新エンジンの慣らしの旅に出なければならぬ。母にリクエストして、土曜の夜は、炭火焼き肉&ニンニクたっぷりのメニューにしてもらった。喰う物をきちっと摂取して、いつまでもぐずぐず続く風邪をぶっ飛ばそうと思ったから。

 肉を喰らい、ニンニクを喰らい、酒を喰らい、午後10時には寝床で意識を失っていた。で、起きたのが午前2時半である。起きたらニンニクの効き目なのか、体のだるさが消えていたので、夜中なのに慣らしの旅に出発することにした。

 今日の目的は、とりあえず新エンジン走行1000キロを達成してオイル交換することだ。真夜中の静寂を破って、僕の作ったノーマルに毛の生えたエンジンが、どろっどろっどろっとアイドリングを始める。

 暗い中を走り出す。とりあえず、1000キロ走行時にオイル交換ができる場所に移動したい。多治見、木曽路、松本平、聖峠、善光寺平、妙高、野尻湖と通って上越に至り、柿崎に至ったら、ロードスターのミーティングがやっていたので寄ることにした。いや、このミーティングに顔を出すために、慣らしついでに出かけたのか。どちらでも良いことだ。

 ジムカーナとサーキットを足して2で割ったような感じのコース。僕はまだ慣らしが終わっていないし、なによりもエントリーしていないので走ることができない。人の走りを見ていると自分だったら、ああするだのこうやるだのともんもんと考え、走りたくなるのだが、我慢するしかない。この欲求不満。

 エンジンの載せ替えを手伝ってもらった富山チームも出走し、1位と3位をかっさらっていった。1位は言うまでもなく車屋さんであり、格が違うのだが、3位に入ったのは偉かった。僕がエンジンをいじっている間に、大きく水を開けられてしまったようである。新エンジンでまずは走り込む必要あり。

 楽しいミーティングが終わり、そういえば本来の目的であるオイル交換をしなければならないことに気づいた。サーキットのほど近くにちょうど良いスペースを見つけておもむろにジャッキアップし、潜り込んでオイルを抜く。

 時間は午後6時前。新聞を敷いたから、地面には一滴もこぼさなかったぜ。

 帰りはオール高速。往復700キロぐらい。

5月17日

 おやじとジムニーに乗って美濃市へ。仕事なのか遊びなのかよくわからない用事で出かけた。アユ釣り師であるおやじは、郡上八幡漁協にアユ釣り入漁券の1年券を買いに行ったのだが土曜日だったためか、休みであった。

 大和町の道の駅で麦とろろメシを食べて温泉に入り、戻ってきたら夕方であった。おやじとあちこち行くのも久しぶり。たまにはつるんで遊ばないとね。

5月16日

 毎週金曜日は市場の日。難しいこと考えずにおっちゃんたちと軽口をたたいていられる僕にとっての癒やしタイムだったりする。車好きのおっちゃんに「早く乗ってきてヨ」とお願いされてしまった。

 市場から仕事場に戻る前に鶴舞の南海部品に寄る。僕の車はまだファンネル剥き出しでエアクリーナーが付いていない。なくても普通に走るんだろうし、やはり若干抵抗になるんだろうから、付けなくても良いのだが、さすがに前のエンジンが壊れた理由が異物吸い込みによるものだから、そこら辺はやや神経質になるのである。そんじょそこらの車屋では絶対置いていないのだから、バイク屋ならばあるかもしれない、と寄ってみることにした。

 店内にはさまざまなパーツやらグッズが並び、バイクに乗らなくてもなかなか楽しめる空間になっている。ガラスのショーケースの中に、普通にピストンやらシリンダーやらが並んでいるところはさすがである。車の場合は、チューニング専門店でない限り、なかなかピストンやコンロッドは展示していない。

 が、捜し物はなかった。K&Nの高級なエアフィルターはあるのだが、ファンネルにかぶせるだけのお手軽ソックスは見あたらなかった。エアクリーナーの大きさに切って使うスポンジは売っていたのだが、そんなもの買って手間をかけるぐらいなら、7、8000円で通販で買った方がよさそう。

 しばらく、エアクリレスで走ることになりそうである。

5月15日

 風邪気味で少々喉が痛かったのだが、午前5時に家を出て、市場へ。最近新しくした靴がどうも足に合わなくて、靴ずれ気味。よちよち歩く。

 市場のおっちゃんと朝飯(彼らにとっては昼メシだ)を喰らった後、名古屋駅に行って午前8時8分のひかりに乗る。新大阪で降りて、向かったのは西宮。そして名古屋に帰ってきたのが、午後2時すぎだった。普段ならどうってことない日程だけれど、ちょいと体調不良でしんどい。

 だから早く帰って寝るべきなのだが、新大阪駅のキヨスク本屋でCARBOYの新刊を発見してしまう。なんとDVDがおまけについていたので、午後9時半ごろ帰宅後、メシを喰らって我慢できずに見てしまった。

 が、やはり体力が電池切れしたらしく、寝床に寝っ転がって、ドリフトのスキール音を聞きながら、意識を失った。

5月14日

 いつもよりちょっと早く起き出して、ロードスターに乗り込む。クランキング1発でエンジンは始動するが、アクセルをちょっと踏んでやった方がベター。ぎゅんぎゅぎゅんぎゅ、がろん、が、がろっ、ぼろっぼろっぼろろ、ぼっぼっぼっぼろっと怪しげな音が朝の住宅地にこだまする。仕事で松本に行くので、慣らしをかねてロードスターで行くことにしたのだ。午後から1時間ほどの仕事の予定だから、ちょっと早めに出て下道で行くことにする。

 4連スロットルとポン付けではないちょいと作用角の大きなハイカムのエンジンの感想は? と聞かれたら、こう答える。「フツー」

 強がりではない。本当に普通なのだ。異常なのは音ぐらいか。うるさい車は嫌いなのだが、勢いでこうなってしまったのだから甘んじるしかない。とはいっても、巷で言う「爆音」ではない。高回転で踏んだら、どうも爆音になりそうだけれど。

 4スロで世間一般で言われている評価は、「高回転全開は良いのだけれど…」、「低速トルクすかすか」「アクセルワークがシビア」「低回転で気難しい」などなど、ちょっと普通の人では近寄りがたいものばかりだ。が、全然そんなことはなかった。きわめて普通に走ることができる。街中もまったく問題なし。5速2000回転で国道を走れるし、3速1500回転ぐらいでゆっくり走ることも可能だった。

 僕も「4スロ難しい神話」を信じていた1人であったので、正直言って、今回付けてしまってどうしてもセッティングが取れなかったり、ツーリングで面白くないエンジンになってしまったら、シングルスロットルに戻そうと思っていた。が、そんな不安は一気に解消し、これなら乗っていても良さそう、と思えるぐらいである。我慢するのは音ぐらい。

 まだ5000回転弱までしか回していないし、アクセルもほとんど踏んでいないからまだ評価が変わるかもしれないが、それでもアクセルに対してリニアにトルクが出てくるし、あまりぎくしゃくもしない。セッティングが煮詰まってこればかなりスムーズになりそうな予感である。

 今まで回した4000回転までの話なのだが、確かにアクセルを踏み込むと、口径が大きすぎて吸気の流速が一気に落ちるのか「がぼぼぼぼ」と盛大な音だけしてあまり前に進んでいかない、という状態になるのだが、その状態になる前はちゃんとぎゅっとトルクが出てくる。

 行きは高速と下道で、帰りはオール高速で走った。あまり踏まない回さない慣らしの運転で、セッティングが合っていなくて濃い空燃比という条件で燃費は正確には計算していないが、リッター11キロちょっといった感じ。極端に悪い、ということはなさそうである。サーキットで高回転を常用したらかなり悪くなると思うけど、それはノーマルエンジンでも同じこと。

 とりあえず、月曜日に走り出してから、今日まで750キロ乗った。今回は慣らしをじっくりしようと思っている。

5月13日

 ホントに、車いじっていて良かった。今回、エンジンを積み替えて仲間のありがたさを身に染みて感じたのである。仲間。普段の仕事では絶対に得られないものである。

 土曜日にも書いたとおり、今回はかなりアクロバチックに富山入りするつもりだった。ぎりぎりまで名古屋で飲んで、米原まで普通列車を乗り継ぎ、夜行の急行で寝台に寝っ転がって富山入り。午前4時半に到着して、待つのがいやだったらタクシーに乗って行ったかもしれない。車屋さんまで4、5000円はかかるだろう。午前6時の始発を待ち、近くの駅までいっても30分ぐらいは歩くのだろうか。とにかく近くに行けばなんとかなるだろう、といい加減に考えて、切符まで取っていた。

 2次会で飲んでいたら、富山の仲間から携帯に電話が入った。「ちょっと早い時間に新幹線に乗って、特急加越に乗ったら金沢まで迎えに行くよ〜。うちに泊まっていき」とのこと。この上もないくらいありがたい言葉であった。遠慮なく泊まらせてもらうことに。寝台の切符を交換してもらい、しかも払い戻しまで受けた。

 特急の乗り継ぎなのだから安心して寝ていられる。列車の中ではなるべく寝て体力を温存する。富山ではじけるために。

 そうして、仲間の家におじゃまし、ビールを飲んで宴会した。翌朝はふらふらで、これなら体力を温存した意味がなさそうなのだが、そんな問題じゃないのである。

 車屋さんのガレージでは多くの人がやってきて見守ってくれたし、しまいには脱着まで手伝ってもらった。僕が富山に何度も足を運ぶのは、ロードスターが好きだから、という理由だけではない。

 そんな仲間と一気に会えるのがミーティングなのである。軽井沢に行くことにこだわったのは、そういう理由だ。とにかく、車が動くようになって一安心なのである。

5月12日

 きゅいぃぃぃ〜と、辺りにむなしくセルモーターの音がこだました。時間で1分ほどだが、これほど長く感じる1分というのも、ほかではなかなか味わえないであろう。

 日曜日、富山の車屋さん宅に到着したのは午前9時ごろだったか。いよいよできあがったエンジンを積む日がやってきたのである。異物を吸って壊れてから2カ月弱。エスコートの81mmピストンで1722ccにボアアップ、面研1mmとシートカットのヘッドで圧縮比は11.7ぐらい、カムは戸田のin・272度、ex・288度。タペットはHLAから同じく戸田のインナーシムキットを組み込み、AE101の4連スロットルwith
Freedomコンピューターで回す、ノーマルにちと毛が生えた程度のエンジンである。吸気ポートはインレットのガスケットをちょっと拡大する程度。400番程度で鏡面にはしていない。そんなエンジンをしこしこと作ってきた。

 4連スロットル回りの取り付けや配線も含めてやることがなくなったのは午後7時半ぐらいだった気がする。まったくの素人が、ときどき手伝ってもらいながらぼちぼちと作業を進めているので大変進行がのろい。2日酔いだったこともあり、夕方におにぎり2個を食べた程度。ほとんど飲み食いせずにずっと作業を続け、しかも重要で大変なところは車屋さんにやってもらっているのに、これだけ時間がかかってしまう。

 バッテリーをつないだり、オイルや水を入れたりし、いよいよ、点火プラグを抜いたクランキングでオイルをエンジン内に回す作業である。

 ヘッド載せ替え2回、エンジン載せ替え2回の計4回は同じ作業をしているのだから別にどうってことはない作業なのだが、内心、やはり緊張している。エンジンがようやく回るという期待と、回らなかったらどうしようという不安と。

 点火プラグが抜いてあるからセルだけでもかなりの回転数でエンジンは回る。普通なら20秒ほど。油圧計の針が、ぴくっと動いてじわっと右に振れ始め、だいたい2キロぐらいのところまで動く。それを確認して、プラグを取り付け、点火する。これまでの4回は期待通りだったのだが、5回目の今回、やばいことになってしまった。

 きゅいぃぃぃ〜とセルをいくら回してもいっこうに油圧がかからない。油圧センサーはけっこう壊れることがあるので、まずそれを疑うのが第一だ。配線を確かめると、きちんとつながれてある。ここで、油圧センサーを外してオイルが出てくるかを確かめる。ウエスを当ててセルを回すが、オイルが出てこない…。エンジン内部にオイルが巡っていない、ということである。

 原因がまったく想像できない。オイルストレーナーか? 液体ガスケットを塗ってオイルパンのバッフルプレートを取り付け、オイルの吸い口であるストレーナを取り付けるとき、最後、ボルトをきちっと締めようとするとバッフルが浮き上がったり、ボルトでストレーナ全体が回されて、横にずれてしまう。ガスケットで張り合わせてあるので、ずれてしまうとあまりよろしくない。ずれるのを押さえつつ締め付けた覚えがあるし、ガスケットもちゃんと新品を使ったので、ストレーナーの取り付け不良とは思えない。が、油圧がかからないのだから、ストレーナー回りからエアでも噛んでいるんだろうと思うのがいちばんありそうなトラブルである。

 あれこれ、頭の中で考えるのだが、重大なことが一つだけある。オイルポンプやオイルストレーナーを点検するにはオイルパンを外さねばならない。エンジンが車載のままでも点検できないことはないのだが、馬鹿みたいに大変な作業になってしまう。わざと回りくどく書いているのだが、要するにせっかく積んだエンジンをもう一度降ろさなければならないのである。一日の作業のかなりの部分をやり直さなければならない。

 やばいな、と思った。もう一度脱着すること、ではなくて、迷惑をかけちゃうから。

 が、そこに居合わせた3人は好き者揃いであったので、車屋さんの「よし、降ろすぞ」の声を号令に、ぱっと作業に取りかかる。目標は1時間半ぐらいでエンジンを降ろすこと。僕は下回りに入って、ミッションのボルトなどを外す。

 死にものぐるいにボルトを外していく。車屋さんが一番複雑な吸気配線、配管側を、もう1人が排気側を。3人が物も言わずに、ばっと作業した。「よし吊るぞ」とエンジンを外して時計を見たら30分しかたっていなかった。でたらめに早い。

 エンジンを宙ぶらりんにしたまま、タイミングベルト回りが外されていく。再びエンジンスタンドに固定し、ひっくり返してフライホイールも着いたまま、オイルパンを外してみると、オイルストレーナーはきちんと着いている。問題なさそう。次に疑われるのがオイルポンプ。ぱっと外すと、まず第一の不具合が、オイルシールが壊れていた。これもオイルを塗って丁寧にはめ込み、オイルポンプとツライチになるようにはめ込んだ覚えがある。組み込みが悪かったのか、ほかの原因があって壊れてしまったのかは定かではないが、オイルポンプに不具合があった可能性が高くなってきた。が、なぜオイルポンプに不具合が出たのかがいまいち納得できずに、ほかの原因もないか確かめてみる。

 オイルポンプからはまず第一にオイルフィルターに向けてオイルが流れていく。ポンプからフィルターの場所までのオイルの通路をチェック。バッシュゥーとエアーで吹いてみて、異物が飛び出してこなかったのは良かったのだが、肝心のオイルも飛び出してこない。オイルクーラーも同じように詰まっていないかエアを吹いて確認すると、ドベっと黒い使い古したオイルが飛び出してきて顔にかかった。すると、オイルポンプがオイルを吸っていなかったということになる。

 このオイルポンプは先のエンジンオーバーホールのとき、僕がばらして油圧のコントロールをするリリーフバルブ回りを交換して使った物。今回は、前回ばらしてビニール袋に真空パックのようにして入れてあったのを取り出して、そのまま取り付けた。ばらしてみると、ぱっと見では問題ないのだが、まずはトロコイドがべとべとしているはずなのに、オイルが回った形跡がない。リリーフバルブのプランジャーもバネを外して振れば出てくるはずなのだが、固くて上から押さないと出てこなかった。固着気味になっている。

 とりあえず、原因はオイルポンプらしい、ということが分かったので、差し入れの吉野家の牛丼特盛りをオイルまみれの手ではしをにぎり食べる。自分のミスで2人に大変な作業をさせてしまったあまりの申し訳なさに、朝からおにぎり2個しか食べていなかったのに、食欲が出ない。それでも電池切れになると作業ができないから詰め込んで胃に収める。

 午後10時前には再び作業を再開し、オイルパンやバッフルプレート、ブロックにこびりついた液体ガスケットをはがす。トヨタのシールブラックはなかなか落ちていかず、いらいらする作業だが、黙々とこなす。といっても2人に手伝ってもらっているからあっという間の作業である。オイルポンプはいつの間にか車屋さんが組み付けていた。

 脱脂してシールブラックを塗ってオイルパンを張り合わせ、タイミングベルトを張る。タイミングベルトが外れたままクランクを回すとバルブとピストンががつんと当たってしまうので、注意が必要である。

 その状態でオイルを入れ、クランクを回してみると、オイルフィルターの場所から豪快にオイルが飛び出してきた。さきほどは、ここまでもオイルが回っていなかったのだから、不具合はなくなったらしい。

 再び積み込む。物も言わずに黙々と作業。僕は再び下回りではいずり回る。すべてが組み上がったのが、午前1時半ぐらい。エンジン脱着とオイルポンプの点検整備が5時間で終了したことになる。それも、馬鹿げたトラブルの処理も含んでいるから、スムーズに終わればもうちょっと早かったとみられる。空恐ろしいぐらい早い。

 今度こそ、とクランキングすると10数秒で油圧がかかった。プラグを装着し、今度は火を入れる。ぎゅんぎゅんぎゅぎゅんと高い圧縮になった音がして、ばばん、ばんばんと初爆があったのだが、あえなくエンスト。今度はスロットルを開いてやって回してやるとぶぶーんと回った。アクセルに足を載せて小刻みにあおってやって止まらないようにする。回すこと10分ほどでアイドリングするようになった。4連スロットルにすると、第一課題はアイドリングさせることなのだが、オークションで手に入れたISCVのおかげで、かなり素早くアイドリングするようになった。工場内はオイルが燃えたにおいと、オーバーラップが広いエンジンに特有の生ガスのにおいでかなりやばめの空気である。

 結局、オイルポンプの中にオイルが入っていなかったから吸えなかったのではないか、というのがいまのところの結論。エンジンから外してそのまま袋の中だったのだから、油膜が消えてなくなってしまったというのが良くわからない。手押しのポンプで水をくみ出す井戸も「呼び水」が必要なように、オイルフィルターの場所からオイルを強制的に送り込んでやったら、ポンプがオイルを吸い出せるようになって油圧がかかったかもしれない。とはいえ、開けてみて初めて原因が特定できたのだがら、何を言っても始まらないのである。

 疲労困憊で2時すぎに家の中に入り、宴会をして4時前就寝。前日もほとんど寝ていないから、さすがに疲れた。

5月10日

 軽井沢ミーティングに我が愛車で行くためにはもうそろそろ車が動くようにしないといけない。だから、根性で仕事のスケジュールを調整した。本当は今日から富山入りして車を作りたかったのだが、さすがに義理は欠かせない。何とか月曜日が休めることになり、日、月と富山入りが可能に。今度こそは、ロードスターに乗って帰ってくることが目標だ。

 前回はエンジンパーツなどさまざまな部品を持っていくためにジムニーで出かけたが、今回は乗って帰ってくるのが目標なのだから、どう考えても列車で行かねばならぬ。一番近いのは高山経由でワイドビュー飛騨に乗るルートだ。

 しかし、一番早いワイドビューに乗っても富山に着くのは昼過ぎ。これでは半日が無駄になってしまい、少ない時間を有効に使うことはできない。新幹線を使って米原や京都に行き、そこからサンダーバード、しらさぎに乗るコースでも10時20分が最速である。これでもちょっと遅い。

 夜行バスがないかしら、と探したが、さすがに九州方面や東京と結ぶものはたくさんあるのだが名古屋−富山間はなかった。そうだ、レンタカーを借りて富山で乗り捨てれば車内で寝ることも可能だな…と考えたが、乗り捨て料金がよく分からない。あるサイトで見積もりを出したら、軽自動車が24時間6000円程度なのに対し、乗り捨て料金が23000円…。10キロにつき1000円ぐらい取っているらしい。問題外。

 いろいろ探して見つけたのが、急行きたぐにである。名古屋を午後11時前に出れば米原で乗り換えて、富山に4時30分。地元の列車の始発が午前6時だからちょいと待つ時間が多いが、このルートで入れば午前7時すぎには到着できる。二次会最中ぐらいに抜け出さなければならないのがちょっと引っかかるが、車と義理とを天秤にかけてもっともバランスさせられるのがこの行き方だろう。寝台車で寝ることもできそう。

 ということで今から結婚式2次会なのである。 

5月9日

 毎週恒例の市場に顔を出し、クルマ好きなおっちゃんにエンジンの進ちょく状況を報告する。今度乗ってきて、100メートル道路をぶっ飛ばそうと約束する。

 この土日に再び富山に乗り込んで、エンジンを積んじゃおうと思っていたのだが、土曜日に友人の結婚式の2次会があるという、どう考えても外せない予定が入ったので、あきらめる。翌週は車屋さんが新潟遠征に出てしまうし、すると、軽井沢まで間に合わないのではないか、と焦る今日この頃である。

 夜は仕事場の人と久しぶりにのみに出る。ふらふらになって帰宅。