月: 2003年3月

3月31日

 この世に発生した日であるなら、世間一般ではめでたいことになっているかもしれないのだが、問答無用で仕事である。

 と一年前にも同じことを書いた覚えがある。ということは、一年間、まったく進歩していない、ということか。

 まったく普通の日と変わらず、家を出て地下鉄に乗り、電話番をして、午後は仕事をさぼってネットのあちこちを見て回ったりしていた。

 この日の誕生日はあまり良いことはない。学校は春休みで誰も祝福してくれたことはないし、学年でもっとも遅い生まれ(4月1日が一番遅いのだが)で何となく劣等感を感じるし。

 いつもと変わらずてくてくと藤ヶ丘を歩いていたら、桜が満開だった。

 4年間、松本にいたから気が付かなかったのだが、桜が満開の季節に自分はこの世に生まれたのだな、と思ったら、自分の誕生日もまんざら捨てたものではないかも、と思えた。

3月30日

 葬式であった。血縁関係はないものの、孫に当たる、というちょいと微妙な関係である上、本当に数えるぐらいしか会ったことがないから、おいおいと泣いてしまうようなものではなかったのだが、いくら大往生とはいえ、一人の人が亡くなってしまったのだから、それなりの感慨は僕の胸にも訪れるのである。

 豊橋の国立病院の院長を長年務めて地方の名士と呼ばれるぐらいの人であったのだが、本人の希望で、うちうちの親族だけの密葬という形を取った。そんな席に呼ばれたにもかかわらず、生前のおつきあいがかなり薄いものであったのは反省すべきことなのであるが、それは間に両親をはさんだ関係であるので、僕がいくら思い煩っても仕方がないことである、とあきらめるしかない。

 とっても偉いと思ったのが、葬儀の段取りについていっさいを遺言で残していたことである。まず、近しい人だけの密葬とすること。これは、かなりの功績のある人のことだから、本格的に葬儀を営んでしまったら大事になってしまって親族にいろいろ手間をかけてしまうから、それよりもうちうちの本当に悲しんでくれる人だけを呼ぶようにしたらしい。そして、香典は一切無用。自分のためにご足労わずらわすだけで十分、それ以上の負担をかけたくなかったらしい。近所に知らせず玄関回りに飾る花輪すらなかったから、通りかかった人たちは法事でもやっているんだろうと思ったに違いない。

 戒名も、葬儀の場所も、精進落としの段取りもすべて遺言通り。その人の医者であった生前の功績に似合わぬ質素さであったのだが、本人の希望とあれば、遺された者たちもそれで満足なのである。そうして、遠方から参列した人、縁がある人たちに、その人の希望でお車代や御霊前などとしてお金が手渡された。ここまで来ると、ただただ、平伏するしかない。

 実は今月は、葬式1件、法事2件と3回もお経を聞く機会があったのである。こうして月に3回も死に向き合うのはなかなかヘビーなことであるな、と他人事のように思う、今日この頃である。

 2週間前に諸行無常だなんて書いているが、まさにその通りで、両親、友人、親族、その他もろもろ、ずっと一緒にいられることなんかはないわけで、その日その日を一生懸命暮らすしかないんだよね。そして僕はエンジンを作る。

3月29日

 一日中、アルミの粉にまみれていた。今日は、ヘッドはまったくいじらないポート研磨をしていた。

 次期エンジンは4連スロットル化を企んでいる。Freedomを使えばちょちょいのちょいで動く(はず)。というか、4連を付けるためにFreedomを買ったのだが、面倒くさくなって放置してあったのである。

 取り付けるのはトヨタAE101の4連スロットルだ。車種が違うので、このスロットルはロードスターのシリンダーヘッドに直接付けることはできない。間にアダプターを挟むのである。僕が持っているのは、Freedomの4連スロットル化キットに付いていたアダプターである。

 とりあえず、ヘッド側のポートはインマニのガスケットの大きさまで拡大してある。ノーマルと比べると、けっこう大きく拡大してしまった。

 今朝、アダプターをヘッドにあてがってみると、予想どおり、アダプターのポート径の方が小さい。これでは、ヘッドのポート拡大をした意味がないどころか、段差ができてしまってより吸入効率が下がることは明白であるから、アダプターをポートと同じ大きさに削ることにする。

 アストロで買ってきたフラップホイールがちょうど良い大きさで、がしがしと拡大していくことができた。1つのフラップホイールで何とか3気筒分の拡大ができたが、残るもう1気筒については、フラップホイールを使い切ってしまったので、仕方がないからアストロへ買いに行く。

 アストロは最近、フラップホイールを仕入れてくれない。果たして、前に来たときと在庫状況は変わらず、使えるサイズのフラップホイールが1つしかかなかった。困った。あちこちのホームセンターを回るが、フラップホイールを置いてあるところの方が少数派である。

 あちこち回るが空振りに終わり、仕方ないから家に戻って加工を再開する。アダプターをがしがし削っていき、どうにか、ヘッドとアダプターの段差がなくなるぐらいまでに加工ができた。

 次はアダプターと4連スロットルとの段付きを調べる。4連スロットル側のポートが若干小さくてアダプターと段差ができていたので、がりがり削り落として段差を解消し、フラップホイールで壁面を整える。

 それぞれ削った場所は手作業によるペーパーがけで仕上げる。今日は、4連スロットルとインマニアダプターまでを仕上げて終わった。

3月28日

 なぜか元タカラジェンヌとお話をした。いや、ただの元ではなくて、男役のトップだったらしいので、どうやら、すごい人らしいのである。僕にとっては良く知らない世界であるのでそのありがたみもぴんと来ないが、一部に熱狂的なファンがいる世界らしい。

 やはり、その生活も現実離れしていて、よれよれのスーツに、ジーンズをはこうがスーツを着ようがまったく同じの靴を履き、ぼさぼさの頭の僕と、180度違う世界に住んでいるんだな、ということを思い知らされた。浮き世を離れているからこそ価値があるのだろうけれど。

 たまには世界の違う人とお話しするのも、ためになる。

3月27日

 深夜までの仕事の後、すぐに早朝の仕事があったので、さすがにこれは仕事をしすぎだ、良くないな、と思い立った。だから、早朝の仕事をちゃちゃっと片づけてから、仕事をさぼって運転免許の更新に行ってきた。さぼるときには大胆にさぼることが重要なのである。最初から派手にさぼるつもりであったので、スーツなど着ずに、ジーパンをはいた、休日の格好で出かけた。

 名古屋の平針という地に運転免許試験場がある。桜がちらほら咲き出したようきなのであるから、当然、ロードスターで開幌状態で出かけたいところであるが、まだエンジンを作っていないので、仕方なく家のジムニーを奪ってやった。

 住所をまだ変更していなくて松本の住所のままだったから少し面倒かなと思ったが、まったく関係がなかった。書類を買って記入して、視力検査。眼鏡を掛けているから余裕でパスするかと思っていたら、まったく見えなくて焦った。目を酷使する仕事であるので、やはり視力低下が著しい。「見えません」などと言って自己申告したところで、眼鏡を買ってくる羽目になってしまうのだから、目を凝らしてじっとにらみつけ、なんとなく「左」「下」「上」と答えていたら、「視力0.7以上」という判を押されてパスした。いい加減なものである。

 「次、4番の窓口へ行って」と言われるがままに4番の数字を目指して部屋に入っていくと、なんとそこは顔写真の撮影部屋であった。あと2つぐらいは窓口を経るものだと思いこんでいたので、不意を付かれた感じ。髪の毛や服をきちんとする暇もなく座らされて、はいパチリ。頭がぼさぼさのままで撮影されてしまった。ま、いつもぼさぼさなのだから、こっちの方が正しいのかもしれない。

 妙に丁寧な言葉遣いの人に講習を受けてビデオを見て、免許証をもらう。寝不足と頭のぼさぼさで、まるで精気のない顔に写っていた。いや、いつもこんな感じなのかしら。

 午後3時すぎ、ラフな服装でぼさぼさ頭のまま、出社した。「何をしていた」とすら聞かれない、いい加減な職場なのである。

3月25日

 「すみません」

と言いながら一人の男が僕の左側に座ろうと体をねじ込んできた。朝の地下鉄。僕は始発の藤ヶ丘から乗るので例外なく、席に座ることができる。本郷、上社と進むうち、両隣の席に人が座っていく。いつものことである。

 ただ、見かけよりもこの人は横幅があった。おしりを少し右へずらすも、さらに右に体が押しのけられる。右側の席はまだ空いているのだから1人座れるだけのスペースは確保しなくてはならない。結果、この男と体が密着する羽目になった。ま、よくあることである。

 右に押しのけられつつあるのを左に戻す苦しい姿勢で、それでも平然と涼しい顔で手にしていた本の続きを読む。すると、密着している左側の男から、一定リズムの震動が体に伝わってきた。

 なんだろう、と思って男を見ると、開いた股を閉じたり開いたり、ゆさっゆさっゆさっゆさ、と一定の運動を続けていた。こういうのを貧乏ゆすりと言うのだろう。開いて閉じて、膝小僧が近づいたり遠のいたり。けっこう大きなストロークであるので、当然体が密着してしまっている僕に、微妙なバイブレーションが伝わってくる。とっても気になる。

 鬱陶しいな、と顔をにらみつけると、寝ている様子。まったく無意識の運動らしい。だんだんと首が下に傾くにつれ、ゆさゆさゆさゆさ、っと足の貧乏ゆすりのスピードが速くなる。へへぇー、面白いものだねえ、と一人、ほくそ笑んでいるが、いかんせん、男と僕は密着しているのであり、とっても気になる、鬱陶しい。

 そのうち、男が左足を右足に載せた。すなわち、足を組んだ。これなら閉じたり開いたりの貧乏ゆすりはできない。靴の裏が、立っている乗客に触れてしまう可能性があるのは、まゆをひそめざるをえないが、とりあえず、貧乏ゆすりが収まることに、喜びを感じた。

 ところが甘かった。10秒もしないうちに右足の運動が始まった。文字で表現してみると、

 ゆささささささ

ゆささささささゆささささささ

っと震動が倍の速さになった。貧乏ゆすりが片足だけになった分、その動きの周波数が倍になった感じである。なかなか面白い。不愉快なバイブレーションが伝わってくるのは勘弁してほしいが、ここまで来ると笑うしかない。

 すぐに男は組んでいた足を元に戻して、再びゆさっゆさっゆさっという運動に戻った。結局、隣に座っていた約20分の間、貧乏ゆすりをしていたことになる。 

 目的駅に着いて、席を立つと、男はうつむいて寝ているようであった。その足は相変わらず、ゆさっゆさっゆさっゆさっと貧乏ゆすりを続けていた。あんまり、人に不快感を与えないようにね、と心の中で思いつつ、その場を立ち去った。

3月24日

 今日の名古屋はとても暖かく、昼間に出かけるときも、コートを羽織る必要がなかった。予想どおり、桜が開花したらしい。

 ロードスターでドライブするのに一番良い季節は今から1カ月ぐらいの間だ。春の息吹を感じられる風を切ってロードスターで走る時間は、何物にも代え難い。信州だと5月上旬までは走る標高を高くしていけば桜も咲いていて、ツーリングを楽しむことができる。信州が懐かしい。

 と、のどかなことを書いているのだが、所詮僕のロードスターはエンジンを作って載せない限り動かないのであり、春のツーリングはお預け状態なのである。風の中に春のにおいが感じられるのに、オープンで走れないなんて、ひどい仕打ちである。

 とりあえず走りたい。壊れたついでにあれこれいじろうと考えていたのだが、どうでも良くなってきた。いまある部品で最大限努力したエンジンで十分だ。もともと、ノーマルエンジンでも、馬力の不足を感じたことがないのだから。

 頭の中は、いかに早くエンジンを復活させるか、という問題と、いかに車ヲタク的に納得のいくエンジンを作るか、という問題でせめぎ合いが続いている。1722ccで、カムはこれまでのまま、4連スロットル、という仕様が落としどころのような気がする。

3月23日

 所用で奥三河などあちこち車で行かねばならなかったのだが、我が愛車は現在富山で心臓を抜かれて眠っている状態。家のジムニーに乗ってあちこち走りまくる。

 ジムニーといっても新しい型であるから、松本で使っていたジムニーとは、エンジンも足回りも剛性感もまるで別の車である。良くなっているとはいえ、オートマチックだから、操作に対するレスポンスの面で不満は積もっていく。マニュアルの前のジムニーの方が遅いが走っていて楽しい。オートマチックだと、さまざまな操作にラグがあることを前提に運転をしないと、どうしてももたついてしまう。それでもエンジンブレーキを使うのに、かかとでアクセルをあおったりしているのだけれど。シフトレバーを操作した後、2秒ぐらい待ってからあおらないと、スムーズにつながらない。

 ワインディングを駆け抜ける爽快さはどの車でも同じである。加速力やレスポンス、コーナースピードすべてがロードスターよりも劣っているが、その車の能力の最大限を生かして駆け抜けるのが楽しい。速度で言えば、5割ぐらい遅いのだが、速度の問題じゃない。ロードスターと違い、ジムニーはコーナーで横転する恐怖があるのもスリルを加える。

 が、しかし所詮、箱の中に入っているのであって、何にも代え難いオープンの爽快さはないのである。早く復活せねば。

3月21日

 昨日の17時間労働のせいで朝目が覚めると全身けん怠感&激肩こりで起き出したくなかったのだが、ヘッドを加工せねばならないので仕方なくのろのろと起き出した。

 加工が大変な排気ポートである。バルブガイドを取り囲む肉盛りをがしがし削っていくが、これがなかなか削れていかない。10000回転以上のリューターであれば、問答無用にがりがりと削れていくのであろうが、たかだか3000回転にも満たない電気ドリルでかりかり削っているのだから、とっても時間がかかる。

 7時間ぐらい作業をして、排気ポートの荒削りは終わった。とにかくやらないと車は復活しないので、とっても集中力が発揮される。あっという間に夜になってしまった感じ。春の青空の下、本当ならロードスターで走りに行っているはずなのだが、ひたすらアルミを削っていた。

 ポートはフラップホイールで壁面を整えた状態なので、あとは紙ヤスリでごしごし磨いてやって、満足行けばポート研磨は終了である。今回は磨き込むのはやめようかと思っている。理由は、また今度。時間がないだけ、といえばそれまでなのだが。改めて吸気ポートを見てみたら、どう考えても拡大しすぎのような気がしてきた。

 夕方、フラップホイールを仕入れに行ったのだがどこにもなかった。アストロに行っても良いものがなかった。排気側の肉盛りを削る一番のコツは、荒削りした後、なるべく新品のフラップホイールで削ることである。

 同じ姿勢でずっと作業していたら、夜になって首が動かなくなった。朝からのひどい肩こりがさらに悪化した感じ。