2月20日

 車の燃料ホースに磁石をくっつけただけで燃費大幅改善! なんていうただの強力磁石が大手を振ってチューニング雑誌をにぎわせている。「マイナスイオン」だの「分子配列を整える」だの「逆電流」だの、そういった売り文句は、素人の僕にだってどう考えても嘘くさく聞こえる。トルマリンだとかについても、「効果を実感した」という声は聞くれど、実際どういう現象によって効果があるのかはよく分からん。

 「とっても速い」と思っていた僕の車の前の仕様のエンジンも、タイムを測ってみたら遅かった(それはお前の腕が悪い、という議論はここでは置いておく)。噴射した燃料の量で最大限出せるパワーはかっちり計算できるのだから、もし今の科学ではまだ説明できない現象でも起こっていない限り、それを超えるような大幅パワーアップは望めない。大幅に譲って、数馬力上がったところで、素人にはそれを体感できない。人間の感覚ってとってもいい加減にできている。そのいい加減さが生きていく上でとっても大切だったりするのだけれど。

 何が言いたいのか、というと、チューニング業界に限らず、社会にはこうした科学的根拠がちょいと曖昧なものが満ちあふれている、ということ。シート状のものを張るだけで「足回りの動きが良くなった!」と書いてあったのにはさすがに笑ってしまったけれど。トルマリンのように、自分で百円ショップで買ってきて試すぐらいのことなら、本当に効果があるかは別にして面白い実験だと思うのだけれど、そういったたぐいの商品は最低でも9800円ぐらい。高いものだと5、6万する。がんばれば何とか出せちゃうところが罪作り。

 シート状のものをインテークやマフラーや燃料系統や足回りやタイヤやブレーキに張って「フルチューン」したらいったいいくらかかるんだろう。20万から30万はかかるんじゃないか?

 吸排気系やヘッドや燃料パイプやインジェクターになにやらを張って10数万を払うぐらいなら、ヘッドを面研した方がよっぽどパワーが出ると思うのだが。ヘッドオーバーホールをするとして、面研1mm、ポート段付き修正、おまけにHLAオーバーホール、バルブすりあわせなんかをしても、工賃込み10万ちょっとぐらいだと思うんだけれど。こちらは間違いなく速くなる。

 前置きが長くなったが、チューニング業界以外でもこうした科学的にちょっと信じられないようなグッズが存在することを、今日知ってしまった。マンションの水道管に2カ所、外側からつけるだけ! 水道管の腐食を防ぎ、赤水が出なくなる、という。水分子中の水素の核を回転させるだの、放電を起こす水を配管中に発生させてそれが赤錆を黒錆へ還元するだの、何がどう良いのか分からないいうのが僕の感想。メンテナンスフリーであり、電気の供給もいらないところを見ると、これもただの磁石かもしれない。驚くなかれ、あるマンションに取り付けてもろもろの諸費用込み588万円なんだって。シートがとってもかわいく思える。

 まだ、科学的に解明されていないだけかもしれない。けれども、やっぱりインチキ商品というのは存在する。例え、効果がある、と仮定しても、同じコストで正統派チューンをした方がよっぽどコストパフォーマンスに優れている。

 「だまされた!」と悔しい思いをしないためにも、本物を見分ける目を養うことが大切だ。それにはやっぱり一歩一歩、経験と知識を積み重ねるしかない。