夜から朝にかけて雪、という予報だった。勢力を増した寒気が流れ込んでくるこの時期の正しい降り方である。このようなときは、北アルプスに阻まれて、それほどの量は降らないけれど、よく冷えた粉雪が数センチ積もる。湿った雪よりも滑りにくく、ロードスターで遊ぶにはちょうどよい塩梅なのだ。
午後11時ぐらいから、ちらりちらりと降り始めた。この分だと、少し積もるかなと思う。しかし、遊べるほどまで積もるかどうかは分からない。
午前1時。外を見たら、1センチぐらい積もっていた。きっと山の上ならもう少し積もっていて、ちょうど遊べるぐらいになっているだろうな、と思う。しかし、午前1時。よい子は寝る時間である。少しうるさい車のエンジンをかけて外出する、なんて言語道断である。翌日はもちろん、出勤。よい子は外で遊んじゃあ、いけない。
しかし、僕は庭でエンジンを積み替えるような、立派な悪い子であるから、よい子の決まりを守っても、いまさら仕方がないのである。フロントガラスや幌に薄く積もった雪を払い、エンジンをスタート。暖機するわけにも行かないので、2速1200回転ぐらいで、のろのろと走っていく。
果たして、量は少ないものの、極上の雪質であった。くたびれたスタッドレスタイヤなのに、少しきつい坂でもぐんぐん上っていく。路面には1台上っていった跡があるから、だれか1台、上にいるんだろう。
遊びやすい場所で、セフィーロとすれ違った。のろのろ走って相手の様子をうかがっていたら、後ろでアクセルターンをして、どうやら付いてくる様子。別に大したことするわけでもないのに、と思うがそれでも少し張り切って、少々きついヘアピンを豪快に回ろうとしたら、あっけなくスピン。格好悪い。仕方なく、戻ってセフィーロと離れる。遠吠えしながら情けなくその場を離れていく負け犬のごとく。
路面のわきと中央には除雪車が押しのけた雪が積もっているから、使える道幅は狭い。その狭いコースに沿って、リアを流す練習をする。
再びセフィーロと合流。また付いてきた。今度はスピンしないように、慎重にリアを流す。なぜかセフィーロがバックミラーから消えた。
Uターンして戻ってきたら、いない。どうやら、帰ったらしい。1台きりの貸し切り状態で遊んでいたら、銀S14シルビアが上がってきた。ばりばりの走り屋仕様で、音が少々うるさい。すれ違ったとき、「ぶおんぶおんぶおん」と、ものすごい爆音を出しながらストレートでリアを流していた。タイヤは空転しっぱなしに違いない。何を練習しているんだろう。
リアを流していると、ステアリングが自動的にカウンターを当てる方向に回っていることに気が付いた。パワステを外したし、アライメントで車の進んでいる方向にステアリングは切れていくようになっているから当たり前だが、改めて気が付くと感動する。路面抵抗の少ない雪道でしかリアを流さないからあまり、意識していなかったのだ。こんな初歩的なことに驚いているぐらいレベルが低いのである。
それならハンドルから手を離していれば楽ちんだ、と手を離したら、そのままスピンした。そんな甘いものではなかった。
下り坂で思った以上に速くリアが流れてあせることしばしば。焦ることなくカウンターを当てれば何とかなるものだ。
小一時間堪能して帰宅。燃費極悪。