12月21日

 外が暗いのでまだ早朝だろうと思って、再び寝直した。次に起きるとまだ暗いので再び寝直した。さらに次に起きてもまだ暗いので寝直そうと思ったが、やっぱりおかしいので腕時計を見てみると、正午を回っている。天気が悪くて外が暗いだけであったのだ。やらねばならない仕事があるのに、思いっきり寝坊をしてしまったぜ。

 起き出すと、ちょうど親父が味噌煮込みうどんを完成させてにこにこしているところだったので、それを奪って朝ご飯とした。地域色豊かな朝食である。

 のろのろと支度をして、出かけたのが2時前ぐらい。「重役出勤」という言葉があるが、夕方近くの出勤には当てはまらないような気がする。フレックスタイムというか、いつからいつまでが仕事なのかよく分からないから、どうでもいいのだ。

 雨が降っているのに歩いてバス停に行くのがおっくうだったのでロードスターに乗り込む。寒くなってから始動が困難になっていたが、いろいろいじっているうちに1発でかかるようになった。水温補正、始動後増量補正、始動時噴射時間などなど、いろいろいじってみたのだけれど、結局燃料噴射マップがおかしかったらしい。

 会社へは、出来町通りと呼ばれる国道363号1本で行くことができる。この道、「バスレーン」というバス優先車線があり、さすがに朝と夕方の専用時間帯には走ることは遠慮しているのだが、それ以外の時間帯はこの車線をいかに有効に使って走るかが、通勤時間短縮のカギを握っている。

 おっかない走りの代名詞である「名古屋走り」が炸裂する道であり、ナゴヤバシリ初心者にはお勧めしない道なのだが、僕はナゴヤバシリマスターであるから、遠慮なく走らせてもらう。名古屋走りとは、信号が青になる前からずるずると発進し出したり、きわどい車線変更を駆使して1台でも前に走ろうという、「こすい」走り方である。(こすい=ずるいの意)。

 今現在、年末の名古屋名物である「名古屋おこし」(年末に予算消化に迫られた行政が実施する道路工事)の最中であるから、必要なのか分からない工事のために、バスレーンがなくなっている区間もある。走るたびに道路の形状が変わっており、いかに工事区間を予測して、車線をジグザクと変えるかが、通勤時間短縮の肝だ。

 車線を強引に変えて、前が開けたらフル加速をしつつ、順調に走っていたら、信号ダッシュをしてきたパワー任せの下品な赤いFD・RX7にぶち抜かれた。何が気に入らないかと言えば、斜め出ししたデュアルマフラーである。こいつは許せない。

 ぶち抜かれて腹が立ったので、追いつこうと思っても、車が多い道路であるからなかなか思うようにはいかない。ところが、この前まで工事していて通れなかったはずのバスレーンが復活していて走れるようになっていた。瞬く間に車線変更し、バッヒューンとバスレーンを駆け抜けると、次の信号待ちでFDと並ぶことができたのである。

 さきほどのFDの走り方を見れば、信号が青になったのと同時にフル加速し、バスレーン、すなわち僕の走っている前に割り込んでくることは明白である。これだけは、阻止しなければならない。理屈ではなく、ただ阻止しなければならんのである。

 4000回転ぐらいをキープし、信号が青になった瞬間に、クラッチミート。フル加速する。実は、スタッドレスタイヤである。一気にクラッチをつなげばホイルスピンするに決まっているから、クラッチさばきに気を遣いつつ、フル加速。予測通りFDはかなり凶暴な加速をしてきたものの、フルスロットルではないらしく、互角の加速である。

 互角の加速が続き、こちらは2速8000回転までぶん回す。さすがに雨の日であるから、そんな無謀な加速に追いつこうとは思わなかったらしく、FDはアクセルをゆるめ、僕の後ろに付いた。一般道での加速勝負はチキンレースのような趣がある。

 こんなことばかり、やっていたら、せっかく新調したスタッドレスもあっという間になくなっちゃいそうである。