旅行から帰ってきた翌日から出勤を命ぜられる。いや、日付が変わってから帰ったから当日か。しかも、深夜1時すぎまで拘束される夜勤をさせるところが、この家業の非人道的なところだろう。
やっていられないから、昼過ぎまで寝てやった。のろのろと起き出して、おもむろに仕事に出かける。
午後3時ぐらいから雪がこんこん、どころかどかどかと降り出し、ただごとでないことを察知する。夜に大切な仕事で移動しなくてはならないから、一度、家に戻ってスタッドレスタイヤに履き替えることにする。デミオだから、ロードスターのスタッドレスタイヤを取り付けることができる。んが、75000円で買ったデミオには、ちゃんとおまけでスタッドレスタイヤまで付いていたのだ。さすが雪国仕様。
大雪の中、3トンのジャッキで片側2輪を持ち上げて、おもちゃみたいな電動インパクトレンチでナットをばきばき外して付け替える。道具があるから、両側で20分ぐらいかしら。
そのころにはこの地域では尋常ではない積雪で、道路もまっ白である。雪国の人ならばたいした積雪ではないのだが、こちらは雪の備えがまったくない地域。まっ白な路面だろうが、ノーマルタイヤで走っちゃう人も多いから、かなり危ない。
そういえばデミオのスタッドレスは初めて。軽いFF車のスタッドレスはどんなもんだろうと走り出して、笑いが止まらなくなった。とにかく、アクセルさえ踏んでいれば、車は思った方向に走っていく。常に緊張しながらアクセル操作をしていたロードスターとは雲泥の差である。アクセル操作で積極的に向きを変えるロードスターに対し、デミオの場合はサイドブレーキと左足ブレーキを駆使するといろいろ試すことができる。
ほかの車が20〜30キロでのろのろ走っている中、僕のデミオだけ、雪がないかのようなスピードの走り。とにかく、雪がどれだけともっていようとも、アクセルから足を離さない限りは怖くない。交差点ごとにタックインみたいに曲がると、とても気持ちがよい。
ABSだけはじゃまな気がする。ABSさえなければ、タイヤをロックさせるのが一番早く止まると思う。ABSがあると、ブレーキを早めにかけてロックするかどうか様子を見なければちょっと怖い。ヒューズを抜いてやろうかしら。
夜、春日町に用事があったので、一宮の仕事場からデミオで出動。この地方にしたらとんでもない雪が積もっていたのだが、余裕の走りである。走っている車が少なかったから、もしかすると、晴天の時と同じぐらいの時間で目的地まで着いたかもしれない。
その仕事の帰り道、前には高そうなBMWが走っていた。タイヤをみるに、スタッドレスではないのだが、意外に普通に走る。車重が重いこともあるかもしれないが、スリップ防止のデバイスのおかげかもしれない。とにかく、FR車ではないかのような発進をしてすごいな、と思って後ろを走っていた。
んが、さしかかった交差点の信号が黄色に変わったとき、BMWの運転手、何を思ったのかアクセルを踏んだ。けっこう踏み込んだようで、BMW、きゅっとおしりを左側に振った。あわててカウンターを当てて立て直す運転手。が、アクセルがまだ踏みっぱなしである。立て直ったかに見えたBMWのリアが、今度は右側に向いた。リアが空転しているから、まだ踏みっぱなしだろう。ハンドル操作で、再びまっすぐを向いたかに見えたが、ここで運転手、アクセルを抜いちゃったらしい。リアがすっと右側に向き、駆動力を失った後輪は横滑りの状態のまま、ハーフスピンに陥る。あ、やっちゃった、と思ってみていると、今度はブレーキ。そのままくるりと一回転しておけば良かったのに。車体は横を向いたまま反対車線のガードレールに吸い込まれていった。
そんなたいした事故ではないけれど、高そうなBMWのこと。うん十万円コースかもしれない。雪道をなめてはいけない。
尾張北部は30センチぐらいの積雪がある。明日の朝、どんな混乱が起こるかしら。