いつものように市場へ。市場のおっちゃんとマニアックな車談義を軽く交わした後、恵んでもらえる食券で9階の市場食堂でメシを喰らう。毎週食べさせてもらっているから、これこそ食券乱用だろう。
さすがに市場。社員食堂に相当する場所なのだが、ほかの社員食堂よりは良いものが食べられる。それでも市場の人々は「こんなものしか出ないのか!」といつも怒っている。が、150円のラーメンや得体の知れない野菜いためなどを仕事場で食べている僕にとっては、感動の連続だ。何てったって、刺し身やいくら丼が食べられる。
期待で胸を躍らせつつ、今日は何があるのくぁ! と9階にたどり着くと、おお、この季節らしく牡蠣フライがあるではないですか。フライに決定。
タルタルソース付きの牡蠣フライ。普通社員食堂のようなところで揚げ物を食べても、数時間前に揚げてそのまま置いてあったりするので、衣はぐちゃぐちゃ、冷たく、風味もへったくれもない代物で、仕方がないからソースをぐちゃぐちゃにかけて飲み込む、ということになりがちだが、ここのフライは揚げてから20分ぐらいの感じ。衣はまだパリパリで、温かくてうまかった。
で、何を食べてきたのか、市場のおっちゃんに報告するわけだが、僕がうれしそうに「今日は牡蠣フライでしたヨ!」と言うと、おっちゃん曰く「食堂にあるようなものは、春あたりに冷凍した奴だわさ!」と冷たくあしらわれた。「パン粉付けて、揚げるだけの状態でカッチンカッチン」。がーん。市場特選の牡蠣を使っていると思いきや、やっぱり加工品だったのね。このおっちゃんが市場に入ってくる牡蠣を扱っているのだから、間違いない。
「今はそんなもんばっかだわ」とおっちゃんは嘆く。「10人いて、そのうち何人が卵付けてパン粉付けて揚げられる? できせんって」
何が言いたいか、と言えば、ここ数年は魚介類はだんだんと売り上げが減っている、ということだ。加工品などで便利にはなったけれど、自分で手間を掛けて料理する、ということをしなくなった。食はすなわち文化だから、その衰退を憂いているわけだ。おっちゃんの場合は、昔から食材を扱ってきたから、肌で感じるんだろう。
牡蠣フライからとんでもない方向に話が飛んでしまった。