12月11日

 昨日は一日中寝ていたので、今朝は早く目が覚めてしまったのだが、それでも体調は悪い。せきが出る。ごほごほ。ごご。

 どんな体調であろうが自分から入れたアポなのだから、きちんと時間通り行く必要がある。東京品川に午後1時。余裕を持って、名古屋駅を10時すぎに出発しなくてはならない。

 重い体を引きずって、会社へ。それから名古屋駅。のぞみに滑り込んで座席で眠りたいところなのだが、昨日一日をつぶしてしまった分をリカバーしなくてはならない。おもむろにパソコンを取り出し、パチパチと仕事を始める。

 JR品川駅から京急線へ。急行なら1駅、普通なら3駅の青物横丁駅と聞いていた。乗り換えするとちょうどホームに「快速」が入ってきた。素晴らしいタイミングだと、滑り込む。

 これが大胆な間違い。車内アナウンスのしゃがれた無情な声が流れる。「次はけいきゅう、かまたぁ〜」。はふ。なんと青物横丁の6つも先の駅までぶっ飛ばしてしまうのだ。「快速」だと思っていたのは「快特」だった。「かいとく」だなんて、初めて聞いたら「かいそく」に聞き間違えるに決まっている。

 だから、東京はだめなのである。世の中のスタンダードが通用しないデンジャラスシチィだ。乗り換えを間違えるやつが悪い、という指摘は、この際わきにおいておく。

 もう何もかも信じられなくなって、大人しく「普通」に乗った。どうせ余裕を見てきたわけだし、時間はあるのだ。でも体力はない。ごほごほ。ごご。

 仕事を終えて、燃え尽きた体を引きずり、東京駅に付くと、5分後にのぞみが出発する時刻だった。迷いなく指定席を取って、車中の人となる。文字通り、とんぼ返りだ。帰りでもパソコンをぱちぱち。

 精も根もつきていたところに、挙動不審な外国人のおばちゃんが隣に座った。指定席を確認せずに腰を下ろしているのだから、ちと怪しい。

 どうも観光客らしい。富士山が横に見えたらしきりに覗いていた。来るときはビューテホーな姿が見えていたが、どうやら雲に覆われているらしい。せっかく日本に来たのに、見られないのは残念なことだ。

 もっともおそれていたことが起こる。おばちゃん僕の顔をのぞき込んで曰く「Do you speak English?」。はう。反射的に「ノー」と答えてしまう。困った顔しながらも、どうやら、京都に着く時間を知りたいらしい。そんなものは切符を見れば分かる。そう思って、手に持っている切符を見ようとしたら、「Wrong
ticket」と来た。確かに出発時刻が午後1時すぎになっていた。乗ったのは2時すぎの列車である。

 役に立たないことが分かったのか、おばちゃんあきらめたらしい。すいません。

 まもなく名古屋に到着し、降りようとすると、おばちゃんがまた何かを話してきたが聞き取れない。ジェスチャーから「ここで降りるの? 私邪魔?」と言っているんだろうと思って「イエス」と適当に答えたら、おばちゃんも降りる準備を始めちゃった。「ノー、ノー、キョウトはネクストですヨ〜」と流ちょうな英語で注意すると通じたらしい。

 病体を引きずっていったのに、疲れることばかりに遭遇する。ごほごほ。ごご。