異動した上、移動しまくっているので、そろそろ財布の中がガス欠しかかっているのに、ロードスターの任意保険の支払いが11月にあることをコロッと忘れていたのを思い出した途端、声にならぬ叫び声を上げて、もんどりを打つぐらいの勢いでそこら辺を飛び回って「大変だ!」と叫んで騒いで走ったものの、やはり保険は車に乗る上での最低限の責任であるからして、仕方なく払うしかないのだが、やはり少しぐらいは抵抗を試みようと思った。
去年はなんと12万円もの保険料を払っていたのだ。これは車両保険もセットになっていたから。ロードスターを買って5年、ついぞ盗まれることも当て逃げされることも幌を破られることもなかったから、結局、車両保険が活躍することはなかったのである。
保険のことは、家に出入りしている保険屋さんにすべて任せっきりであったので、車両保険をかけたまま放置状態、掛け金払い放題になっていた。どうせ、10年落ちのポンコツなんか、査定がほとんどゼロに近いだろうから、掛けていても意味がないだろうと、外そうと考えた。
保険は、損害を補償するだけなので、いくら数百万をつぎ込んで「ふるチューン」した車が盗まれようが燃えようが、保険の世界では世間一般の普通に走る車だけの価値しか認めてもらえない。新車からだんだんと価値は落ち続け、10年もすればほとんどその車に価値は認めてもらえない。いくら谷から落ちて廃車になろうとも、雀の涙ほどしかお金がもらえないのである。これは一般的な車両保険の話で、別の種類の保険なら思い通りのお金が下りるかもしれないが、掛け金も高くなるだろう。
で、平成4年式の我が愛車の価値はどれくらいあるのか、保険屋さんに聞いてみた。20万ぐらいだろうと高をくくっていたら、60万!という回答が寄せられた。10年落ちの車で60万の価値が認められるのはさすがロードスターである。
しかし、全損したとして、NA6CEをもう一台買うことを考えると、60万円よりも、もっと安く買えるになってきている。程度の良いノーマルを買うならばもう少し高いかもしれないが、ぶつけてつぶしてしまったとして、最低、ボディーと書類だけついてこれば、自分でこつこつ部品を移植して直してしまうだろうから、ちゃんとしたボディーであればエンジンや駆動系の程度は問わないのだ。今の車が盗まれてなくなるか、燃えるかしなければ大丈夫である。いや、60万がもらえないよりも、車がなくなる方が怖い。補強に、フリーダムに、空燃比計に、MDデッキに、NA8C用部品の数々に…と考えていくと、恐ろしい金額に上ることが分かる。
60万の補償をいくらで買っているのかを聞いてみたところ、保険金の約半分の5万円ほどだという。車両保険を外してしまえば、5万円保険代が浮くことになる。5万と言えば、下手をすればオーバーヒートした廃車ロードスターが買える金額である。即、車両保険を切ってもらった。
悪気があって言った言葉ではないのだが、保険屋さん曰く「保険を切った途端に事故に巻き込まれることが良くあるんですよ!」。僕は妄想する。ぶつけられてしまった愛するロードスターから泣く泣く部品を取り出して、交換すべき部品を新品にして、新しいロードスターに組み込んでいく自分の姿を。まるでレストア。一から作ったロードスターに乗れるなんて、とっても素敵じゃないか!
妄想はついでに激しくチューンしたエンジンを積むところまで発展していったのだが、ふとわれに返ると、こんな考えが思考の片隅からわき起こった。
「やっぱり僕って普通じゃないのかしら」