僕にしては珍しく、夜になってもがちゃがちゃと仕事をしていたら、上司が右斜め後方に立っている気配がした。だいたい、何が言いたいのかが分かる。飲みにさそいたいのだ。
行きつけという栄のとあるお店へ。以前も行ったことがある店だと気が付いて、ちょっと暗い気分に。
コンセプトとしては、素材を生かした小料理と、おいしいワインをはじめとしたお酒をそろえて出す店なのだろう。切り盛りしている夫婦は、食材やお酒についてさまざまな知識があることはある。が、そういう知識は客が「これはうまい」と言ったときに「それは、どこどこで取れたこんな食材です」とさりげなく伝えてほしい。
ここお店は違う。夫婦そろって、がんがんべらべらと、いかに良い食材かを不必要なほどにひけらかす。それを聞いているだけで、うんざりするのだが、さらに、自分たちのそろえた食材がいかに良いかを伝えるのが目的なのか、性格なのかは知らないが、人のことを辛辣にけなすのである。
僕はお酒を飲むに行くときには、差しで語らいながら静かにがぶがぶ飲みたい。そのお店に行くと、ほかの客がいないこともあって二人で話す、ということができない。非常に鬱陶しい。
それでも、素晴らしく適切な調理で、リーゾナブルなら、食事に行ったと思えば我慢はできる。が、救いがたいのは、素人目に見て疑問符が付く料理で、しかも高いのだ。