10月3日

 夕方に県庁を抜け出しておおとろ亭ガレージにてごそごそ作業をしていたら、ちゅうとろ君(4つ)が帰ってきた。帰ってくるなり一言、

 「犯人、まさでしょ」

「犯人、まさでしょ」

 子どもってすっごく無邪気な笑顔をしながら、どきっとすることを言う。 

 富山に来てまず第一にやったのが、場所を借りていろいろ作業をやることになるこのガレージの片づけ。いろいろなパーツが増えてスペースがなくなっていたので、棚を導入して、車をちゃんと入れることができるぐらいのスペースを確保した。が、耐久用のVスペシャルを買ってきて、幌と内装を外し、それがけっこう程度が良いものだから、とりあえずおおとろ亭ガレージに放り込んであった。せっかく片づいたのに、再びがちゃがちゃに汚したのは、まさ、お前が犯人だろう、というのがちゅうとろ君の主張。ごめん、その通りだ。

 去年当たりから、月に1、2度のペースで太平洋側から遊びに来ていたのだが、富山に引っ越してからというもの、ほぼ毎日のペースになって、ちゅうとろ君にとっては家族でもないのに、いつも顔を見る不思議な人間に映っているに違いない。たぶん、彼にとっては幼稚園で友だちと遊んで、家ではまさと遊ぶ、ってな感じの便利な存在といった認識か。

 夜、ちゅうとろ君が最近めきめきと腕を上げているグランツーリスモを披露してくれた。シャモニーの雪道をD1ドライバーばりにドリフトしながらミッドシップ4駆を操って駆け抜けていく4歳児。トラコンとかのドライバーアシストを一切オフにして、フォースフィードバックが子どもにとってはかなり重いはずなのに、適切なカウンターでスライドをコントロールする4歳児。その上達ぶりにびっくり。

 彼が本格的に練習を始めたのは、長岡のおもちゃ屋さんから達成度100%のデータをもらってきてからだったはず。いろんな車を自由に選ぶことができるようになったから「羽付きかっこいー」などと喜びながらばりばりのレーシングカーばかりを選んで運転していた。

羽付きかっこいー

 最初はオーバルコースを壁を使いながら走るのが精いっぱいだった。「お前のラインはおかしい」「アクセル踏まなきゃ車は前に進まんだろ」などと、両親からの本気指導を受けながらめきめき上達。この2週間ほどで異常なほどまでに腕を上げた。大人のプレイを見てテクニックを盗み、本当に1日1日上達していくのが分かる。子どもってすごい。

お前のラインはおかしいアクセル踏まなきゃ車は前に進まんだろ両親

 変にステアリングを操作することなく(子どもだから力的に無理)、素直な操作でコーナーの進入から車を横に向けて、適切な量と速さのカウンターステアを当てながらフルスロットルで雪道を曲がっていく。コーナーが見えてきてから対処するのではなくて、とりあえず車を横に向けてから対処するドリフト走り。画面では雪の壁が横に流れていく。

 車をどんな風にコントールしたいかのイメージがないとこんな走りはできないと思うのだが、彼にはもうそのイメージがあるらしい。すでに父親の走りを超えていて、必死こいて車を横に向けようとする父親に対し「それ違うよ」「ブレーキをもっと踏むんだよ」などと突っ込みを入れるまでになった。

それ違うよブレーキをもっと踏むんだよ

 ま、赤ちゃんのころから、車好きが入れ替わり立ち替わりやってきて、ベスモやらホットバージョン、F1、WRCなんかを見ながら、車談義をしているのを横で見ていたのだから、彼なりに学習を進めていたということだろう。

 彼のマシンはわっぱ付きのチャリンコ。昼間は、ヒマがあるとチャリンコにまたがって、敷地内を全力疾走している。普通の車好きの子どもならば「ぶー、ぶーーぅぅ」と排気音をまねて走るのだろうが、彼は違う。

 「ふぁーん、ふぁふぁーん、あーーーーーん

ふぁーん、ふぁふぁーん、あーーーーーん

 と、F1ばりのかん高い排気音をとどろかせて走っている。カーブではきちんとシフトダウンする芸の細かさ。うるさいったらありゃしない。そうかと思ったらときどき止まって、

 「ぶわん、ぶぉ、ぶぉ、ぶわわん

ぶわん、ぶぉ、ぶぉ、ぶわわん

 と、4ローターペリフェラルポートのアイドリングをしている。一番好きな車がマツダ787Bだから。

 マニアックさではそこら辺の大人には負けていない。父親も「絶対負けねー」などと意地で練習を積み重ねる。親子で同じ土俵で争っている姿は、とっても微笑ましくて理想的な関係。うらやましい。なにげにレベル高いし。

 本物のマシンに乗る日が来るのが楽しみだ。