午後9時半に仕事を終え、会社でお誘いを受けたビートルズバンドの練習へ顔を出す。行くとちょうど最後の曲が始まるところであった。「A Little
Help From My Friends」のウッドストックバージョンというマニアックな曲を練習していた。12月8日に開かれるライブで披露する曲。ジョンレノンの命日であること、ジョージハリソンの1周忌に近いこともあって、ジョンとジョージ特集をやるのだそう。ビートルズバンドばかり集ったライブだから、「Happiness
is a Warm Gun」「Yer Blues」「Savoy Truffle」などなど、かなりマニアックな曲ばかりを演奏するらしい。
反省会と称した飲み会に突入するのは当たり前のことで、2時間ほど飲み屋で騒いでいた。富山に行かねばならないから、アルコールは飲めない。ウーロン茶だけで我慢するのは至難の業である。
解放されたのが午前0時すぎ。ロードスターに乗り込み、目指すは富山の福光町だ。スキー場の駐車場がジムカーナ会場なのである。
国道22号から国道156号へ。午前8時に集合だから、まだ時間はたっぷりある。下道をゆっくり走って午前5時ぐらいに到着し、ロードスターの中でまどろんでいればいいかな、と思っていた。天気予報通り、北陸に近づくほど天気が悪い。美濃あたりでポツポツと降り始めた雨は、郡上八幡あたりで本格的になっていた。
ゆっくり走って時間をつぶす必要があろうが、雨が降っていようが、前に誰も走っていないワインディングロードがある限り、可能な限りスピードを出してしまうのは、僕のいけないところである。ノンストップで福光まで走り抜き、時計を見てみると午前3時半。目を疑った。
早すぎる。あと4時間半も何をしていればいいんだ? 走り回っていても仕方がないので腹を決めて、寝ることにした。外は土砂降りだ。幌が雨粒の猛撃を喰らって、ものすごい音を立てる。風も強くて、駐車している車が揺れるほど。騒々しいったらありゃしない。努力して何とかまどろむことに成功したと思ったら、あまりの大雨に雨漏りしてきやがった。腕がひやっとして起きたら、ボタボタと景気よく雨水が浸入してきていた。
車内にあったスポンジを窓に挟んで雨漏りをふさぐ。まどろんでいるうちに、なんとか7時になった。途中寒くて何度かエンジンをかけてヒーターを効かしていたので、ガソリンが少ない。午前7時すぎにとりあえず福光の町中に出て、給油した。
ジムカーナ大会は大雨であった。いや、嵐であった。パイロンを並べるのを手伝っただけで、体がぐしょぬれ。体温が冷え切って、血が頭まで届かず、意識が飛びそうである。
よく考えてみるとジムカーナは2回目だ。山道ばかり走ってきたものにとって、ジムカーナはある意味、別世界の走りである。目で見てつっこめるかを判断する山道とは違い、パイロンとパイロンを結んでいかに速く走れるか、ラインを考えながら走るのがジムカーナである。僕はまだパイロンめがけて走ってしまうから、慣れが必要だ。もう一つは、360度ターンのように、サイドブレーキを駆使した方がうまくできるテクニックが、山道野郎にとっては未知の領域である。地道な練習をしないと、本番だけでうまくターンは決められない。
とにかく、あいにくの雨が残念であった。アラレが降るぐらいの気温と、ものすごい風だったのがつらかった。いや、雨だったからこそ、1、2本はうまく360度ターンが出来たのかもしれない。みんなイコールコンディションで争うのだから、天候のことは言うまい。
夜は二上山の料理人さんにうまいメシを食わしてもらう。くつろげる場所でノンビリと食事をしながら談笑して過ごすのは、なかなか贅沢な時間だ。
朝起きると、雨模様であった。今日も休みにしたのは、乗鞍スカイラインを走ろうと思ったから。しかし、富山で雨模様では、乗鞍はこの季節、雪が降っているかもしれない。
どうしようかな、と悩んでいたら、僕のホームコースであるおわらの里スポーツランド上空が晴れているようである。迷わず、偵察に行く。遠くの乗鞍より、近くのおわらである。
路面が乾きかけているようだったので、迷わず走った。走らなければ良かったのだ。さんざん攻めたのに、初めてこのサーキットを走ったタイムより悪かったのである。車を散々いじって練習しまくって、準備万全で臨んで「攻めきった」と思ったら、1年前よりタイムが悪いの。サーキットのおじさんは「路面の表面が乾いているように見えても微妙に濡れているんだヨ!」と慰めてくれたのだが、いいのさ。僕は一生へたくそのまま終わるのかもしれない。
富山の車屋さんの家に寄って、夕方、家路に就く。山間部に入った途端にバケツをひっくり返したような雨。どんなに悪かろうが突っ込むのだ、と狭い道を調子に乗って飛ばしていたら、路面を覆う大きな水たまりに突入してしまい、時速60キロぐらいで走っているときに跳ね上がった水によって5秒くらい視界を失った。大変危険。
古川から清見に抜ける峠で、なんとなく雨に白いものが混ざっている気がした。気のせいだろう、と清見インターから東海北陸道に乗る。
トンネルを抜けると雪国であった。列車に乗っていれば優雅なせりふなのだが、ロードスターに乗っているとシャレにならない。高速道路路肩の気温表示が0度を示していても、まだ雪が降るわけないだろうと高をくくっていた。まだ10月なのに、路面まで覆う雪に遭遇するとは想像すらしなかった。フリーダムの吸気温度を見ると、3度ぐらいを示している。つい1カ月前は平気で60度を超えていたのに。
いくら溝があるといってもはいているタイヤはネオバである。上り坂で止まってしまわないかしら、と冷や冷やしながら走った。乗鞍に行くどころの騒ぎではない。標高1000mですでに雪が降っているのだから。
こんなときに限って車も不調になるもので、スロットルポジションセンサーがおかしくなって、ぎくしゃくとした走りになってしまう。ぎくしゃくしているスピンするかと震えおののきながらの走行であった。燃費が極悪になって予想よりガソリンを消費してしまい、途中で高速を降りざるを得なくなった。途中、コンビニへ寄ってあれこれいじるものの、なかなか直らない。
何とか無事帰宅。さすがに、疲れた。