午前5時半はまだ暗い。しかし、市場は活動の最盛期を迎えて、暴走軽トラやフォークリフトが忙しく走り回る。暗いから、下手をすると本当にひかれてしまいそうである。明るかったときには「大丈夫だろう」と割と平気で歩いていたのだが、暗い時分になると、命の危険を感じる。前に止めてある軽トラにおっさんが乗り込んだと思ったら、疾風のようなエンジン始動と、稲妻のようなギアさばきで、突然こっちに向かってバックしてくることもあるから、気が抜けない。
どうやら、海がしけているらしい。お魚の入荷が少なく、いつもと風景が違う。うずたかく積み上げられた発泡スチロールの箱の高さが、低いのだ。自然相手だから天候に左右されるのは当たり前なのだが、目に見えた形にんなると、実感を伴う。今は満月に近い暦だ。満月の夜はやはり月明かりがあるので、漁り火にお魚が寄ってこないらしい。満月前後の1週間はやはり漁獲が明らかに減るのだという。
しばらくすると朝日が差し込んでくる。先ほどまで降っていた雨はすっかりやんで青い空が広がる。手やカメラに付いたワカサギの鱗がきらりと光る。なかなか落ちないんだ、これが。