10月16日

F1決勝当日。友人と、夜の宿代を賭け、勝者予想である。実はこれまであまりF1に興味がなかったので、公式ガイドブックを見ながら学習。友人の話を聞いたり、直前情報を読んだりしながら考えた。

僕が選んだのは、ウイリアムズのモントーヤ。予選で2位。新人で予選がとても速かったし、態度もでかい。アウトローで暴れん坊なところに惹かれたのだ。爆速ミハエルは総合2位を狙う同僚バリチェロを1位にさせるため、道を譲ると予想した。スタート直後でミハエルの土手っ腹にぶつけてともにフェードアウトする可能性など、モントーヤはいつどこで派手にクラッシュするか分からないリスクはあったものの、とっても速そうで気に入った。

友人は最初、譲られるであろうバリチェロをチョイスしたものの、考え直してハッキネンを選んだ。これは彼自身の思いもあったとみられる。スタート直後にモントーヤがミハエルを狩ってしまえば、十分にあり得る。結局、神速を見せたミハエルが1位。モントーヤが2位でハッキネンは実質3位だったから、なかなかいい予想をしたことになる。順当にいっただけか。

座った指定席は「D」という区域。この区域は1コーナーの突っ込みを見ることができる、良い場所だった。席料は32000円と高いが、スタート直後にごたごたがあれば一番に見える場所だし、ホームストレートで一番スピードが乗るし、抜くポイントでもある。さらにS字が見える。素晴らしい。

緊張のスタート。カーンと飛び出したのはミハエル。まったく危なげもなく、刺客モントーヤも寄せ付けない完璧なスタートだった。動けない車が1台あったものの、スムーズな開幕。テレビ観戦と違うのは、すべての車が通りすぎてしまうと、静寂が訪れること。実際は、遠のく爆音や周りの歓声でうるさいはずなのだが、鼓膜が振動するほどの爆音を聞いた直後なので、シンと静かになった感じがする。

1番で戻ってきたのは、ミハエル。すでにモントーヤとの差が開き始めている。速過ぎ。少しぐらいトラブルがあればレースが面白くなるのに、危なげなく貫禄勝ちしてしまった。

観戦で一番興奮したのは、暴れん坊モントーヤ。スタート直後、バリチェロとバトルを繰り広げていた時、シケインで抜かれた直後の1コーナーで再び抜き返したときである。バリチェロは3回ピット入りしたので、序盤に燃料をあまり入れずに車体を軽くし、モントーヤをぶち抜いた後、ミハエルが1位を譲って、モントーヤをブロック。そのまま抑える作戦だったのかも知れない。

身軽だったと思われるバリチェロは、シケインにて稲妻のような動きでモントーヤをパス(リプレイの映像で見た)。2位に躍り出たように思われた。

1コーナーで観戦いるときには、ミハエルの後、モントーヤの姿が現れると思っていた。しかし、立ち上がってきたのは赤いバリチェロ。「どこで抜いたんだ?」と不思議に思う間もなく、モントーヤ、イン側にノーズを差し込み、1コーナーへ2台がからまって激しく突っ込む。負けじとブレーキを遅らすバリチェロ。2台のブレーキローターがひときわ明るく輝く。タイヤはロックしなかったから、絶妙なブレーキングである。

ぶつかる、と一瞬、思ったが、モントーヤが競り勝った。バリチェロはイン側を締めることができなかった。暴れん坊が迫ってきたからラインをふさいだら「ぶつけられる」と思ったのかも知れない。体に震えが来るほどの鮮やかな抜き方だった。なにせ、ぶち抜きスペシャルの戦略を立ててきて(予想だけれど)、実際に抜き去った車を、直後に抜き返したのだから。この一瞬だけでも、この席に座った価値があった。

しかし、テレビ放映ではこの場面が出てこなかった(見落としただけ?)。アレジや2位争いに焦点があったから、仕方がないか。でも僕は、この人間味あふれるドライバーを応援したくなってきた。あまりにも優等生じゃつまらない。ある屋台に売っていたモントーヤTシャツ(6000円!)を買い損ねたのを悔やむ次第である。このTシャツを着て街を歩いていたら、かなりファンキー。F1に詳しい人が見たら、吹き出すかも知れない。ステキ。

写真は、午前中のフリー走行のとき撮影した。さすがに自分の席からでは無理だった。時速300キロ以上の物体は、望遠レンズを通すと、一瞬で過ぎ去ってしまう。色のついた陰が横切ったようにしか見えない。選んだ場所は130R。シャッタースピードは125分の1で流し撮りをした。物足りない数値に見えるかも知れないが、何しろF1マシンを追っかけているのだから、レンズを振るスピードも半端じゃない。十分背景が流れていた。

2枚を紹介。

 激速M・シューマッハ。少々ピントが甘い。やはりフェラーリは人気が高かった。グッズに身を包んだ人の何と多かったことか。

 やはりホンダのエンジンを積んだ車に、自然と目と耳が向いた。F1を去るにもかかわらず、クラッシュしてしまったジョーダンのジャン・アレジ。

 あの音を1度聞くと、クセになるかも。来年は開幕から毎戦テレビ観戦することになるのかしら。